フラクトメーター(IML Fractometer)は、成長錐で幹から抜き取った直径5mmほどの木材の芯(コア)を折り、その強さと折れるまでの角度を測る機器です。腐朽による強さの低下と壊れ方の読み方、穴を残す侵襲性の研究を、樹木医が解説します。
IML社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載の第11回です。これまで、針で幹の中を1本の線として診るレジ(Resi PD)(第2回)、音で断面を描くピカス(第4回)、ロープで樹木全体を引く静的負荷試験(引張り試験)(第7回)、2点のあいだを衝撃が伝わる時間を測る第10回のマイクロハンマーと、測る範囲の違う機器を見てきました。今回のフラクトメーターが相手にするのは、その中でも小さな範囲、幹から抜き取った鉛筆より細い木材の試料です。この回は、メーカーの公開資料と研究論文をもとに紹介します。
先に答え
- フラクトメーターは、成長錐(インクリメントボーラー)で抜き取った木材の芯(コア)を曲げて折り、折れたときの力と角度を測る機器です。1990年代の初めに、ドイツ・カールスルーエの研究所でマテック(Mattheck)氏らが開発し、IML社がつくっています。
- フラクトメーターIは手のひらに載る大きさで、コアを曲げて折る仕組みです。フラクトメーターIIは、曲げに加えて、繊維の方向に押しつぶす圧縮の強さも測り、MPa(メガパスカル)とN(ニュートン)の目盛りで読みます。
- 折れるときの力と角度の組み合わせから、腐朽の性質を読みます。小さな角度で弱い力のまま折れれば、褐色腐朽のような「脆い」傷み方、大きく曲がってから折れれば、白色腐朽の初期のような「粘る」傷み方とされます。
- 成長錐の穴は、レジの針の穴よりずっと大きく、木材そのものを抜き取ります。傷としてはレジより大きい方法です。ただし、成長錐の穴から腐朽が広がりやすいという結果は、成長錐とレジの穴を比べた2つの研究のどちらでも出ていません。
- 樹種ごとの目安表はありますが、同じ樹種でも強さは場所や個体で大きく違います。研究者もメーカーも、表だけで判断せず、同じ樹木の健全な部分や樹木全体と見比べるよう求めています。

フラクトメーターとは──幹から抜いた小さな試料の強さを測る
フラクトメーターIの取扱説明書には、開発者のマテック氏、ブレロア氏、ベトゲ氏による解説が収められています。そこでは、開発の理由が次のように書かれています。同じ場所に生える健全に見える同じ樹種の樹木でも、折れる強さが2〜4倍違うことがあり、節があるだけで理想の値の20%まで下がることもあります。目の前の樹木は菌類や昆虫に傷められていることも多く、本に載っている木材の強さの平均値は、その1本の判断にはほとんど役に立ちません。そこで、「その樹木の材そのものの強さ」を、樹木を必要以上に傷めずに現場で測る道具として、カールスルーエの研究所でフラクトメーターがつくられました。説明書の表紙には、研究所とマテック氏のライセンスで製造していることが書かれています。
試料を取るのは、成長錐(インクリメントボーラー)という道具です。中が空洞になった細い金属の錐を、T字の取っ手で回しながら幹にねじ込み、中に入った円柱の木材を、細い溝のある抜き取り具で引き出します。IML社の現行のセットに付く成長錐は、深さ400mm、コアの直径5.0mmです。

フラクトメーターI──手のひら大の曲げ試験機
説明書はフラクトメーターIを「ポケットサイズの木材試験機」と呼んでいます。円柱形の本体の上面にコアの端を差し込み、少しずつ曲げていき、折れたときの力と角度を本体の目盛りで読みます。力は「フラクトメーター単位(FU)」という独自の単位で、測定範囲は150FUです(2025年の価格表)。1995年の論文は、100FUがコアの中の最大の曲げ応力26MPaにあたると説明しています。曲げの力の段階は、調整用の輪で変えられます。付属品は本体と革のケース、説明書です。

コアのはさみ方にも決まりがあります。説明書の図では、コアの繊維(年輪の筋)を装置の面と平行に置きます。こうすると、幹の中心から外へ放射状に走る細い組織(放射組織)が、硬さを発揮する向きに曲げられます。風が幹を曲げるときと同じ向きです。コアを90°回して入れると、幹がねじられるときに近い向きになり、折れる力も硬さも小さく出ることが多い、と説明書は書いています。

もうひとつ、説明書は、乾いた材は生の材より2〜4倍強いとしています。コアは乾く前に、抜いてすぐ測るのが前提です。
強さと角度から、腐朽の性質を読む
フラクトメーターの考え方の中心は、折れる力だけでなく、折れるまでの角度も見ることです。説明書は、植物学者トロル氏のたとえを引いて、木材を鉄筋コンクリートに見立てます。しなやかで引っ張りに強いセルロースが鉄筋、硬いが脆いリグニンがコンクリートです。
- 褐色腐朽の初期: 菌が主にセルロースを壊します。鉄筋がさびるようなもので、重さや硬さはあまり変わらないのに、強さが大きく落ちます。折れ方は脆く、前触れなく割れることがあります。フラクトメーターでは、小さな角度、弱い力で折れます。1995年の論文は、角度を10〜15°(樹種による)としています。
- 白色腐朽の一部(初期): 菌が主にリグニンを壊します。コンクリートだけが削られて鉄筋が残るようなもので、材は柔らかくなっても、粘りは残ったままです。フラクトメーターでは、大きく曲がってから、強さはあまり落ちずに折れます。論文は、角度を25〜35°(樹種による)としています。

力と角度の組み合わせは、論文と説明書の表で、次の4つに整理されています。
| 折れる力 | 折れるまでの角度 | 腐朽の作用 | 材の性質 |
|---|---|---|---|
| 大きい | 小さい | 少ない | 硬く、強い |
| 大きい | 大きい | リグニンの分解 | 柔らかいが、強い |
| 小さい | 小さい | セルロースの分解 | 硬いが、弱い |
| 小さい | 大きい | リグニンとセルロースの分解 | 柔らかく、弱い |
説明書には、ヨーロッパナラの例が2つ載っています。1本目は115FUで37°。リグニンが選んで壊され、セルロースの繊維は多く残っていて、腐朽の近くで樹木が補いの成長をすることが見込まれる、という読みです。2本目は31FUで12°。セルロースが選んで壊され、ビスケットのように脆く折れる危険があり、外から見える症状が出るとは限らない、という読みです。説明書は、症状が出にくく、突然折れる2本目の方が危ないとしています。

ただし、角度は樹種でも変わります。説明書によると、カバノキやシナノキは健全でも20°を超えて曲がってから粘って折れ、繊維の短いブナは健全でも13°ほどで脆く折れることが多いとされます。角度だけで腐朽を決めず、樹種の性質と合わせて読むということです。
1本のコアを外側から少しずつ折っていくと、強さが材の深さによってどう変わるかも分かります。1995年の論文は、健全な材から傷んだ材へ値が急に変わる場合は、樹木が腐朽を食い止める壁(防御層)がよく効いており、樹皮側から内側へだらだらと下がる場合は、その壁が弱いとしています。
なお、フラクトメーターで分かるのは材の傷み方で、腐朽菌の種類までは分かりません。説明書もそう明記しています。
樹種別の目安表と、その使い方
フラクトメーターIの説明書と1995年の論文には、ヨーロッパの主な樹種について、折れる力(FU)を緑・黄・赤の3段階に分けた目安表が載っています。一部を抜き出すと、次のとおりです。
| 樹種(ヨーロッパの樹種) | 緑 | 黄 | 赤 |
|---|---|---|---|
| ナラ類、プラタナス類、カエデ類、ブナ類、ニセアカシア | 120〜89 | 88〜58 | 57〜27 |
| ニレ類 | 110〜82 | 81〜54 | 53〜26 |
| イチイ類 | 90〜67 | 66〜44 | 43〜21 |
| トネリコ類 | 80〜59 | 58〜38 | 37〜18 |
| セイヨウトチノキ | 70〜52 | 51〜34 | 33〜16 |
| シナノキ類 | 60〜46 | 45〜30 | 29〜14 |
| カバノキ類 | 40〜30 | 29〜20 | 19〜10 |
| ポプラ類、ヤナギ類 | 20〜15 | 14〜10 | 9〜5 |
| マツ類、モミ類、カラマツ類 | 15〜12 | 11〜8 | 7〜4 |
単位はFU(100FU=コアの最大の曲げ応力26MPa)。出典は IML「Fractometer I Instructions for Use」(Stand 01/2013)p.10 と Mattheck et al. 1995 の表1。和名は当社が当てた属・種の名前で、表の英名と一対一ではありません。
表の使い方として、説明書は、腐朽などの欠陥の近くにある健全な材と、傾いた樹木の材は緑の範囲にあるべきで、強く剪定した樹木なら黄の範囲でもよい、赤の範囲は危うく、樹冠を大きく小さくするか伐採が必要になる、としています。そのすぐ後に、「表を決まりごとのように使うのは危険で、コアだけでなく樹木全体を一つのしくみとして見ることが大切」と続けています。1995年の論文は、目安表の緑の範囲を大きく上回る80FUのクロポプラでも、繊維の座屈という局所の折れの兆候があり、大きく傾いていたために伐られた例を挙げています。
表の値がそのまま他の土地に当てはまらないことは、米国の研究でも確かめられています。Matheny氏らは、カリフォルニア、オレゴン、ペンシルベニア、イリノイの街路樹、公園、樹木園で、高さ1〜1.5mから風上側と風下側のコアを取り、25樹種の値を調べました(1999年)。同じノルウェーカエデでも、折れる力はイリノイで5〜38、オレゴンで9〜48、ペンシルベニアで24〜99と、場所で大きく違いました。ダグラスファーやセコイアなど6樹種は、装置に入れて力をかけ始めた時点でコアが折れ、値が取れませんでした。著者らは、値は樹種の表と比べるのではなく、同じ樹木の腐朽のないコアと比べるべきだと結論しています。
フラクトメーターII──曲げと圧縮を、MPaで読む
フラクトメーターIIは、曲げの強さと、繊維の方向に押しつぶす圧縮の強さを測る機械式の測定器です。説明書によると、本体は、圧縮用のレバー、曲げ用のレバー、最大値で止まる針の付いた力の計、曲げのレバー、コアをはさむ留め具、曲げの角度を読むダイヤルゲージの6つでできています。使うのは直径5mmのコアです。

- 曲げ: コアを繊維の方向に合わせて留め具に入れ、長さ11mmずつに折っていきます。2本のレバーを押し合わせ、折れるまで力をかけます。力の計の外側の黄色い目盛りで材の強さをMPaで、内側の青い目盛りでかけた力をNで読みます。曲げの角度の針は、折れても止まらないので、曲げているあいだ目を離さないよう説明書は注意しています。
- 圧縮: コアを、繊維の方向に押されるように置き、最初に壊れるまで押します。5mmのコアがはみ出していると値が狂うため、はみ出させないのが決まりです。

付属の切断台は、刃の位置が5mmのものと2.5mmのものの2つがあり、強さが60MPaまでの材か、それを超える材かで使い分けます。説明書には、生の材の強さ(Götz 2000 など)をもとにした樹種別のグラフも載っています。グラフから読むと、曲げの強さ(半径方向)はプラタナスの約33MPaからトウヒの約8MPaまで、圧縮の強さはニセアカシアの約44MPaからヤナギの約15MPaまでの幅があります。説明書は、これらの表はあくまで例であり、樹木全体の形と健康から目を離さないよう書き添えています。
1995年の論文では、IIで調べたところ、腐朽した部分の境目で、半径方向の曲げの強さと繊維の方向の圧縮の強さが同じ年輪で大きく下がり、白色腐朽、褐色腐朽、軟腐朽のいずれでも同じだったことから、樹木の診断にはIで足りると結論しています。2010年の総説(Johnstone氏ら)も、開発者は現場の診断にはIだけで足りるとしている、と紹介しています。IIは、強さをMPaという一般の単位で細かく比べたいときの道具と考えてよさそうです。これは私の見方です。
成長錐の穴をどう考えるか──侵襲性の研究
フラクトメーターを語るなら、成長錐の穴の話も欠かせません。レジの針は先端の太さ3.0mm(軸は1.5mm)で、Weber氏とマテック氏の報告によると、5mmのコアを抜く成長錐の外径は11.3mmでした。針で押し分けて進むレジと違い、成長錐は木材そのものをくり抜いて持ち出します。穴は開いたまま残ります。報告の図は、ねじの刃で食い込む成長錐では穴の縁から横に細かな割れが入り、レジでは入らないことも示しています。2010年の総説は、コアを取る方法を、腐朽を調べる方法の中でも木部を大きく傷める部類に挙げています。傷としては、レジより大きい方法です。

一方で、穴が大きいことと、穴から腐朽が広がりやすいことは別の話です。成長錐とレジの穴を比べた次の2つの研究では、成長錐の穴から腐朽が広がりやすいという結果は出ていません。
Kersten氏とSchwarze氏は、腐朽菌(Inonotus hispidus)に自然に感染していたロンドンプラタナスとセイヨウトネリコの幹の下部に、レジと成長錐で穴を開け、8か月後に伐って調べました(Kersten & Schwarze 2005、要旨で確認)。辺材の変色と腐朽の広がり、そこから菌が見つかる頻度は、意外にもレジの穴の方が大きいという結果でした。著者らは、レジの穴には木屑が詰まって残り、成長錐の穴は開いたままで辺材に空気が入ること、菌が成長錐の穴を菌糸の栓でふさいだことを理由に挙げています。汚れた器具で菌が別の樹木へ運ばれることは、実験からは起こりにくいとしています。
Weber氏とマテック氏は、8〜10年にわたって毎年のように成長錐とレジで穴を開けてきた試験用の樹木(ナラタケ類の腐朽があるクロポプラ、腐朽のあるセイヨウカジカエデとヨーロッパナラ、腐朽のないセイヨウカジカエデ)を伐って調べました(2006年。当社は Trees 誌の論文本体を開けず、同じ著者の研究所の英語の報告で中身を確かめました)。外から穴に腐朽が入って定着した例は、成長錐の穴にもレジの穴にもありませんでした。内側の腐朽が穴に沿って外へ少し進んだ所はありましたが、穴を囲む防御層に止められ、クロポプラでは10年後には、全体に広がる腐朽の方がその分に追いついていました。成長錐の穴は、レジの穴より変色と防御層が大きく出ましたが、著者らは、それで危険が増えたり減ったりはしなかったとし、控えめに使うかぎり、どちらの方法も樹木に害はないと結論しています。なお、マテック氏はフラクトメーターの開発者で、1992年からIML社と協力してきた研究者でもあります。
2つの研究は、樹種も期間も調べ方も違います。それでも、成長錐の穴の方から腐朽が広がりやすいという結果は、どちらにも出ていません。成長錐の穴は傷としては大きい、ただしその穴から腐朽が広がりやすいとは確かめられていない、というのが今の時点で言える正直なところです。
レジ・ピカスとの役割の違い
連載の第1回で、機器が測る範囲を、小さな試料、2点のあいだ、1本の線、断面という面、樹木全体と整理しました。メーカーの整理ではなく、私の見方です。この並びでいうと、ピカスやトロニックは断面という面を、レジは針が通った1本の線を見ます。フラクトメーターは、成長錐が通った線の上から、さらに5mmほどの小さな試料を取り出して、その強さを直接確かめる機器です。面や線で「どこが傷んでいるか」の見当をつけ、その一点で「どれだけ弱っているか」「どう壊れそうか」を確かめる、という順番になります。

1995年の論文にも、この順番に近い使い方が書かれています。根張りを穿孔抵抗の測定器や電動ドリルで調べ、ドリルの木屑の色やにおいがおかしいとき、あるいは穿孔の抵抗が低く出たときには、著者らはその根からコアを取り、脆く折れるのか粘って折れるのかを確かめるとしています。線で場所の見当をつけ、試料で材の性質を確かめる組み合わせです。
一方で、得意でないこともはっきりしています。分かるのはコアを取った1か所の、半径方向の性質だけです。米国の研究のように、樹種によっては値が取れないこともあります。そして、穴は大きく残ります。説明書は締めくくりで、フラクトメーターは、ほかのどの方法とも同じく、樹木の知識や樹木の形が語るものを読む力の代わりにはならないとし、「調べるのは樹木であって、実験室の試料ではない」と書いています。
当社の考え方
当社は、外観診断で樹木の形や症状を診たうえで、レジ、ピカス、トロニックで幹の中を診ています。穴を開ける機器診断は、必要な樹木に、必要な本数だけ、というのが当社の考え方です。フラクトメーターの研究を読んで、この考え方の理由を確かめた気がします。成長錐で材を取り出して強さを確かめる方法は、知りたいことに直接答えてくれる一方で、樹木に残す傷も大きいからです。
研究から学べることは、ほかにもあります。腐朽の量だけでなく「どう壊れるか」に目を向けること。同じ樹種でも強さは個体と場所で大きく違うので、表の数字ではなく、その樹木の健全な部分と比べること。説明書の最後には、健全な樹木でも厳しい条件では折れることがあり、まったく危険のない樹木は存在しない、という一文もあります。数字に頼りすぎず、安全の確保と樹木を残す努力の両方を、外観と機器の結果を合わせて考えていきたいと思います。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。幹の中の傷みが心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回は、ここまでの機器の測定データを読み、まとめるためのソフトウェアとクラウドを取り上げます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(フラクトメーター IML Fractometer について)
Q1. フラクトメーターでは何が分かりますか?
A. 成長錐で抜き取った木材の芯(コア)が折れるときの力と、折れるまでの角度が分かります。その組み合わせから、材の強さと、脆く折れるか粘って折れるかという腐朽の性質を読みます。
Q2. 腐朽菌の種類も分かりますか?
A. 分かりません。メーカーの説明書も、フラクトメーターは菌の種類を決めるものではなく、菌が材をどれだけ傷めたかを現場で見る道具だとしています。
Q3. 成長錐の穴は樹木を傷めませんか?
A. 成長錐の穴はレジの針の穴よりずっと大きく、木材を抜き取るので、傷としては大きい方法です。ただし、穴から腐朽が広がりやすいという結果は、成長錐とレジの穴を比べた2つの研究のどちらでも出ていません。8か月後の辺材の変色と腐朽の広がりはむしろレジの穴の方が大きかったという研究と、外から穴に腐朽が入った例はなく、控えめに使えばどちらも害はないとする研究があります。
Q4. レジ(Resi PD)とは何が違いますか?
A. レジは針が進むときの抵抗を1本の線として記録し、どこが傷んでいるかを見ます。フラクトメーターは、その線の上から取り出した小さな試料の強さと折れ方を直接確かめます。役割が違い、組み合わせて使う道具です。
Q5. 樹種別の目安表と比べれば判断できますか?
A. 目安表はありますが、同じ樹種でも場所や個体で値が大きく違うことが研究で分かっています。研究者は、同じ樹木の腐朽のないコアと比べるよう勧めており、メーカーも表を決まりごとのように使うのは危険だとしています。
Q6. フラクトメーターIとIIの違いは何ですか?
A. Iは手のひら大で、コアを曲げて折る力(独自の単位FU)と角度を測ります。IIは曲げに加えて繊維の方向の圧縮の強さも測り、MPaとNの目盛りで読みます。開発者は、現場の診断にはIで足りるとしています。
Q7. どんな樹木にも使えますか?
A. 米国の研究では、ダグラスファーやセコイアなど6樹種で、力をかけ始めた時点でコアが折れて値が取れませんでした。樹種によっては向かないことがあります。
出典・参考情報
メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)
・IML「Fractometer I Instructions for Use」Stand 01/2013(PDF・英語) 開発の理由とマテック氏らの解説(p.2〜6)、褐色腐朽と白色腐朽(p.1〜4・p.8)、コアの向き(p.4・p.11〜12)、ナラの例とチェックリスト(p.4〜5)、乾いた材の強さと締めくくり(p.6)、樹種別の目安表(p.10)、力と角度の読み方の表(p.12)
・IML「Fractometer II Instruction Manual and Guarantee Policy」Stand 01/2013(PDF・英語) 付属品と切断台(p.1)、成長錐とコアの直径(p.2)、構成(p.3)、曲げと圧縮の測り方と目盛り(p.4〜7)、樹種別のグラフ(p.8〜9)
・IML「2025 Price List」(2025年2月、PDF・英語) フラクトメーターI・IIとコンプリートセット、成長錐の説明(p.26〜28)
・IML 製品ページ「IML Fractometer I」「IML Fractometer II」「IML Fractometer II Complete Set」(英語。2026年10月は閲覧できず、2025年10月と2026年2月の保存版で確認)
研究
・Mattheck, C., Breloer, H., Bethge, K., Albrecht, W. & Zipse, A. (1995) Use of the Fractometer to determine the strength of wood with incipient decay. Journal of Arboriculture 21(3): 105–112
・Matheny, N.P., Clark, J.R., Attewell, D., Hillery, K., Graham, A.W. & Posner, G. (1999) Assessment of fracture moment and fracture angle in 25 tree species in the United States using the Fractometer. Journal of Arboriculture 25(1): 18–23
・Johnstone, D., Moore, G., Tausz, M. & Nicolas, M. (2010) The measurement of wood decay in landscape trees. Arboriculture & Urban Forestry 36(3): 121–127
・Kersten, W. & Schwarze, F.W.M.R. (2005) Development of decay in the sapwood of trees wounded by the use of decay-detecting devices. Arboricultural Journal 28(3)(要旨で確認)
・Weber, K. & Mattheck, C. (2006) The effects of excessive drilling diagnosis on decay propagation in trees. Trees 20: 224–228(本体は未読。中身は同じ著者の研究所の英語の報告「The Effects of Excessive Drilling on Wood Decay in Trees」Forschungszentrum Karlsruhe で確認)
樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事
機器の解説・導入・研修
・マイクロハンマー(IML Micro Hammer)の仕組みと使いどころ──幹の2点間を音が伝わる時間で内部を推し量る予備調査の機器を樹木医が解説
・テンション(PiCUS Tension)の仕組みと使いどころ──土の水の取りにくさをpFで記録し、植栽直後の潅水を判断する方法を樹木医が解説
・ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説
・ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説
・キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説
・トロニック(PiCUS TreeTronic 3)の構成と測り方──電気抵抗で断面を描き、音波の画像と重ねて読む方法を樹木医が解説
・ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)の構成と測り方──測定点の数、キャリパーの扱いを樹木医が解説
・IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説
・IML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)の機種とオプション──レジ(Resi PD)7機種の違いと選び方を、樹木医が解説
・IML社とは──レジ(Resi PD)とピカスをつくるドイツの樹木診断機器メーカーを、樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・アーボソニック3Dの使い方を、道具から断面画像の色の見方まで──取扱説明書と現場の写真で樹木医が解説
・アーボソニック3Dとは何か 音で幹の断面を樹木診断する診断機器を、樹木医が一般の方向けに解説します
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした
・音で、樹木の中を視る 非破壊樹木診断機器「ドクターウッズ」
・樹木診断 無料モニター募集
・PiCUS(ピカス)導入のお知らせ 樹木診断(機器診断) 非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へ
・樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)について
・樹木模擬診断研修会を終えて 人の眼 × 機械の眼が拓く、新しい都市樹木管理のかたち
・東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説
・樹木医がイギリスの樹木診断に学ぶ ― 都市の樹木を守るための対話と発見
機器診断の記録
・山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断 ピカス・ツリートロニック・レジとドローンで診た結果と、残すための3つの対策
・埼玉県内の伝統校 樹木医によるクスノキ2本の機器診断 ピカスで幹の内部を診る
・樹木医が街路樹エンジュの樹木診断と伐採後の腐朽具合の答え合わせ
・山形県での出張樹木診断 樹木医によるピカス、レジでの診断検証
・診断した木を、その日のうちに伐る──ピカス・アーボソニック3D・レジを同一木のサクラで比べた「樹木診断機器比較研修会」千葉県習志野市
・都有施設80万本の樹木一斉点検 約14,000本(速報)の「異状あり」を、樹木医はどう読むか
・港区三田 薬王寺様の境内 樹木診断 地上と樹上、樹木医がふたつの視点で木の内側を読む
・砧公園で4回目の倒木 樹木医として思うこと
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・樹木医による都内の学校施設でのサクラの樹木診断 豊島区
・学校施設 ケヤキなど樹木医診断 東京都
・公園樹木診断 樹木医による機器診断・根株診断(レジ) 東京都
・マンション内のイチョウ(銀杏) 樹木医診断(機器診断) 東京都大田区
・公園のサクラ(桜)を樹木医が樹木診断(機器診断)しました
・樹木医 保存樹木サクラ等 樹木診断 東京都杉並区
・学校施設内 桜(サクラ)樹木医診断 東京都
・銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断
・樹木医 サクラ樹木診断(機器診断・レジ)
・樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました
サービス
・樹木診断(ツリーリスクアセスメント部門)
・GREEN MANAGEMENT
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
※ この記事の製品名(IML Fractometer)は、IML 社(ドイツ)の製品名です。
連載「IML社の樹木診断機器」のすべての回は、連載の一覧からご覧いただけます。




















