ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説

ツリーキネティック PiCUS TreeQinetic 静的負荷試験 引張り試験 根返り 幹折れ 樹木医

ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)は、ロープで木を静かに引き、力・幹の伸び縮み・根元の傾きを同時に測る静的負荷試験(引張り試験)の機器です。風の代わりの荷重から根返りと幹折れの安全率を見積もる考え方と、その確かさを検証した研究を、樹木医が解説します。

IML社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載の第7回です。第4回から第6回までは、音や電気で幹の断面を描くピカス、トロニックと、その形を測るキャリパーを取り上げました。断面の画像は「幹の中がどれだけ残っているか」を教えてくれますが、「その木が強い風に耐えられるか」までは直接には答えてくれません。そこに答えようとするのが、今回の静的負荷試験(引張り試験)です。この回は、メーカーの公開資料と研究論文をもとに紹介します。

先に答え

  • ツリーキネティックは、静的負荷試験(引張り試験)の機器です。樹冠の近くに掛けたロープをウインチで静かに引き、引く力、幹の縁の繊維の伸び縮み、根元の傾きの3つを同時に測ります。
  • 引くのは、木が元に戻る範囲までです。根元の傾きは0.25°ほどまでにとどめるのが一般的で、目では分からないほどの小さな傾きです。
  • その小さな反応から、根返りと幹折れに必要な力を計算で見積もり、想定する強風の力と比べて「安全率」を出します。安全率1は耐える力と強風の力がちょうど同じという意味で、ふつうは1.5以上がひとつの目安とされます。
  • 280本を超える木を実際に根返りまで引いた研究では、根返りの力の見積もりは平均で実際より低めに出ました。外れ方は安全側ですが、小さな木ほど大きく外れました。
  • 解析ソフトは機器メーカーとは別の会社のもので、講習を受けたうえで使います。欧州の基準をそのまま当てはめるだけでは課題がありますので状況に応じた判断が求められます。
静的負荷試験 引張り試験 風の代わり ロープで引く 荷重 樹木 根返り 幹折れ 図解
静的負荷試験(引張り試験)の考え方。強い風が木にかける力の代わりに、ロープで静かに引いて木の反応を測る(イラストは当社作成)

 

ツリーキネティックとは──風の代わりにロープで引く静的負荷試験

IML Electronic社の製品ページは、測り方を次のように説明しています。樹冠の近くにロープを掛け、ウインチで引きます。ロープの途中に入れたフォースメーターが引く力を、幹に付けたエラストメーターが幹の縁の繊維の伸び縮みを、根元に付けたインクリノメーターが根鉢の傾きを測ります。測った値はソフトで見ながら記録し、試験の後で、決まった大きさの荷重への木の反応と、想定する嵐の荷重とを比べて、折れと倒れの安全率を出します。

風が吹くのを待たずに、木の強さを確かめられるのが、この方法の考え方です。メーカーの取扱説明書は、引張り試験を「根返りと幹折れの両方について結論を出せる、現在ただ一つの方法」と紹介しています。これはメーカーの主張ですが、断面の画像が主に幹の内部を映すのに対して、引張り試験は根元の傾きを通じて根の支えも測る、という点が大きな違いです。

この方法は、1980年代の終わりにドイツのシュトゥットガルト大学の研究から始まったとされ、Wessolly氏とSinn氏の名前とともに広まりました。ドイツの研究者の報告によると、世界で8,000本を超える木で行われてきました。

静的負荷試験 引張り試験 ツリーキネティック ロープ スリング フォースメーター ウインチ アンカー エラストメーター インクリノメーター 警報 図解
引張り試験の全体。調べる木の幹の上の方にベルトを掛け、フォースメーターを入れたロープを、別の木の根元に固定した手動のウインチで引く。幹には伸び計、根元には傾き計を付ける(イラストは当社作成)

構成と仕様

製品ページ、製品資料(2025年4月版)、公開の取扱説明書(v1.1)によると、ツリーキネティックは次の部品でできています。

  • フォースメーター(力の計): ロープの途中に、両端のシャックルでつなぐ平たい計器です。引く力と、ロープの角度を測ります。
  • エラストメーター(伸び計): 幹に約20cm間隔で打った2本の細い針のあいだの、繊維のごくわずかな伸び縮みを測ります。
  • インクリノメーター(傾き計): 根元に付けて、根鉢の傾きを直交する2方向で測ります。
  • 通信ユニット: センサーからの無線を受け、パソコンやスマートフォン、タブレットに送ります。思わぬ破壊が起きても、安全な距離でデータを受けるための装置です。
  • オーバーロードインジケーター(警報の表示器): 決めた値を超えると、光と音でウインチを操作する人に知らせます。
ツリーキネティック 構成 エラストメーター フォースメーター インクリノメーター 通信ユニット 図解
ツリーキネティックの主な部品。左の4台がエラストメーター(両端の縁の色で見分ける)、下がインクリノメーター、中央がフォースメーター、右が通信ユニット(イラストは当社作成)

エラストメーターとインクリノメーターは5色あり、1つのシステムで最大10台まで使えます。色は、どのセンサーがどの位置の値かを見分けるためのものです。

部品 分解能・精度・範囲
フォースメーター 分解能0.01kN、精度0.3kN、範囲は製品ページで0〜40kN、取扱説明書で0〜60kN
エラストメーター 分解能0.1µm、精度1µm、範囲±2,000µm、針の間隔200mm
インクリノメーター 分解能0.002°、精度0.005°、範囲は製品ページで±15°、取扱説明書で±30°
無線 センサーと通信ユニットは868MHz、通信ユニットとパソコン・スマートフォンは Bluetooth
一式の重さ ケース込みで約11kg(取扱説明書)

インクリノメーターの「0.002°」と「0.005°」は、資料によって片方だけが書かれていることがありますが、0.002°が分解能(読み取れる最小の変化)、0.005°が精度です。エラストメーターの分解能0.1µmは、1万分の1ミリです。木を傷めない小さな荷重の反応を読むために、これだけ細かく測ります。

フォースメーター 力の計 シャックル ロープ スリング 引張り試験 図解
フォースメーターは、ロープの途中に両端のシャックルでつなぐ(イラストは当社作成)

フォースメーターは、付属か承認された鋼製のシャックルでつなぎます。取扱説明書は、カラビナやロープの輪、フックなどでつなぐと測定値が狂い、取り付け部も傷めると注意しています。

エラストメーター 伸び計 針 幹 樹皮 木部 繊維の伸び縮み 取り付け 図解
エラストメーターは、幹に水平に打った2本の針に挟んで付け、樹皮から少し浮かせる(真横から見た図。イラストは当社作成)

エラストメーターは、定規で間隔をそろえた2本の針を、樹皮を通して木部まで打ち込み、その針に本体を挟んで付けます。本体は幹に触れない範囲で、なるべく幹に近づけます。日本の報告(石井・吉岡 2023)では、引く向きの線上(引く向きに対して0°か180°の面)に付けています。

インクリノメーター 傾き計 根元 地際 根鉢の傾き 引張り試験 図解
インクリノメーターは、根元のごく低い所に付けた台に載せて、根鉢の傾きを測る(イラストは当社作成)

インクリノメーターは、根元の低い所に台を留め、そこに本体を載せて水平を合わせます。温度で値が少し動くので、取扱説明書は、引くたびに直前にゼロ合わせをし、直射日光から守るよう求めています。研究や日本の報告では、引く向きに対して横(90°)の面に付けています。

試験の流れ

取扱説明書と研究論文から、試験のおおまかな流れをまとめると次のとおりです。

  1. 木のデータを入れる: 樹種、樹高、高さ1mの2方向の直径、樹皮の厚さを入れ、樹冠の写真を撮ります。取扱説明書は、樹冠の写真を欠かせないものとしています。風を受ける面積を求めるためです。
  2. ロープを張る: 調べる木の樹冠の近く(幹の上の方)にベルトを掛け、フォースメーターを入れたロープを、アンカーにした別の木の根元に固定した手動のウインチにつなぎます。
  3. 計器を付ける: 取扱説明書は、ロープを張ってから計器を付け、片付けるときは計器を先に外すよう書いています。
  4. ゼロ合わせをして、静かに引く: すべてのセンサーを同時にゼロに合わせ、ウインチで少しずつ引きます。予定の最大まで引いたら、約10秒そのまま保ってから緩めます。ソフトが最大の力を自動で読み取るためです。
  5. 向きを変えて繰り返す: 1本の木を、引く方向とセンサーの位置を変えて何回か引きます。

大きな力をかける試験なので、安全がいちばん大切です。取扱説明書は、木が突然壊れて人や車、建物に倒れかかるおそれがあるとして、試験中は危険な範囲に人がいないことを必ず確かめるよう求めています。オーバーロードインジケーターはウインチを操作する人から見える位置に置きますが、突然の破壊を防げるわけではない、とも書かれています。

天気にも気を付けます。取扱説明書は、強い霜のあいだと直後は測らないよう求めています。後で紹介するとおり、凍った土は根を強く支えるため、根返りへの安全を大きく見誤ることがあります。また、留め具を別の木に使い回すと病気を運ぶおそれがあるので、交換か消毒をするよう書かれています。

考え方──小さな反応から、壊れる力を見積もる

静的負荷試験(引張り試験)の解析の考え方は、Wessolly氏とErb氏の『Handbuch der Baumstatik und Baumkontrolle』(1998年。英訳『Manual of Tree Statics and Tree Inspection』2016年)にまとめられています。当社はこの原典を読めていないため、ここでは、原典を引いて説明しているドイツの研究者の解説(Detter & Rust 2013)と論文(Detter et al. 2023)、日本の報告(石井・吉岡 2023)にもとづいて紹介します。流れは4段階です。

  1. 決まった静かな荷重への、木の反応を測る(引張り試験)
  2. その反応を、折れや倒れの限界まで計算で伸ばし、耐える力を見積もる
  3. その場所で想定する強風の力を見積もる
  4. 耐える力と強風の力を比べて、安全率を出す

根返り──傾き0.25°から見積もる

根元の傾きは、多くても0.25°ほどで止めます。この範囲なら木は完全に元に戻り、根を傷めないとされています。そして、0.25°の傾きを生んだ力の約2.5倍を、根返りに必要な力とみなします。言い換えると、「0.25°のとき、根返りの力の40%がかかっている」とみなす考え方です。この関係は、多くの木の傾き方をまとめた「一般化された傾き曲線」に由来します。

一般化された傾き曲線 0.25° 2.5倍 根返り 見積もり 引張り試験 模式図
試験は傾き0.25°までにとどめ、そのときの力から根返りの力を見積もる(模式図。曲線の形と目盛りは説明のための例。当社作成)

解説によると、0.25°を超えると傾き方のばらつきが大きくなるため、今は「どの木も同じ曲線どおりに傾く」とは考えず、0.25°の力を決まった係数で伸ばす使い方をしています。0.8〜1°ほどで傾き方の変化が見え始め、根返りの力が最大になるのは多くが2〜5°だとしています。

幹折れ──繊維の伸び縮みから見積もる

風を受けた幹は、風上の側の繊維が伸び、風下の側の繊維が縮みます。エラストメーターでこの伸び縮みを測り、力との関係を直線で表して、樹種ごとの「比例限度」まで伸ばします。比例限度は、そこまでなら繊維が元に戻り、超えると傷み始める境目です。その点の力が、幹が耐える力の見積もりになります。

幹折れ 繊維の伸び縮み 比例限度 外挿 エラストメーター 引張り試験 模式図
測った伸び縮みと力の直線を、樹種ごとの比例限度まで伸ばして、幹が耐える力を見積もる(模式図。当社作成)

解説は、測った点が多く(約50以上)、伸び縮みが比例限度の約10%以上に届き、直線がよくそろっていれば、精度よく伸ばせるとしています。樹種ごとの限界の値は、主に「シュトゥットガルト強度カタログ」から取ります。ただし、若い木は材が柔らかいぶん限界の伸び縮みが大きく、それを考えないと若い木の折れにくさを低く見積もるとも書かれています。

強風の力と、安全率

強風の力は、樹冠と幹の写真から風を受ける面積と形を求め、高さごとの風の強さを掛けて見積もります。ドイツでは、国の基準の風の地図を使うほか、「高さ10mで最大瞬間風速約120km/h」の風を想定することが多いとされています。木の揺れの効果も、建物の風荷重の基準の考え方で入れます。

安全率は、耐える力を強風の力で割った値です。1なら、耐える力と強風の力がちょうど同じです。見積もりには不確かさがあるので、1を上回る余裕が要り、樹木の分野ではふつう1.5が求められます。この比較的小さな余裕で足りるとされるのは、木が毎年太って、耐える力を保ったり増やしたりできるからです。解説は、結果は経験のある診断者が、外観や生理の評価と合わせて判断するものだとしています。

安全率 耐える力 強風の力 1 1.5 目安 引張り試験 根返り 幹折れ 図解
安全率は「木が耐える力 ÷ 想定する強風の力」。1でちょうど同じ、ふつうは1.5が目安(当社作成の図)
根返り 幹折れ 倒木 風 樹木 壊れ方 図解
木の壊れ方は、根元から倒れる「根返り」と、幹が折れる「幹折れ」に分かれる。引張り試験は、それぞれの安全率を出す(イラストは当社作成)

解析ソフト arbostat

この計算をする解析ソフト「arbostat」は、IML社ではなく、ドイツのArboSafe社のソフトです。ツリーキネティックのデータは arbostat の形式に合わせてあり、取扱説明書は「完全に互換」としています。機器を持っているだけでは、安全率までは出せないということです。

研究から見る、確かさと限界

280本超を根返りまで引いた検証(2023年)

Detter氏らは、ドイツ、オーストリア、米国、ラトビアの都市と森で、主に15樹種、280本を超える木を、まず傾き0.25°まで壊さずに引き、続けて根返りまで引きました。0.25°のときの力と、実際の根返りの力には強い直線の関係がありました。ただし、実際の比は平均で約2.95で、2.5より大きくなりました。つまり、2.5倍の見積もりは実際より低めに出ます。論文は、平均で約3分の1、小さな木では最大で半分ほど低く見積もるとしています。外れ方は安全側ですが、必要のない伐採につながるおそれもあります。小さな木は2.5°よりかなり大きな傾きで倒れることが多く、「どの木も同じように傾く」という前提とは合わない、とも書かれています。

なお、この論文の著者の1人は、arbostat の会社ArboSafeの経営者です。論文にもそのことが明記されています。

立場の違う研究者の検証(2025年、一部を確認)

英国の植物園で8樹種21本を試験し、15本を根返りまで引いた研究では、根返りの力が最大になったのは傾き1.59〜2.93°でした。2.5倍の見積もりと比べると、15本中9本は差が20%以内でしたが、6本は35〜107%違いました。過大に見積もったのは15本中4本で、最大でも4%でした。著者らは、土の性質が樹種と同じくらい重要だとして、破壊試験で限界を確かめる必要があるとしています。

根返りした木は、その後どうなるか(2019年)

米国オハイオ州のプラタナス10本を根の一次破壊まで引き、8本を傾いたまま残して、3年後と8年後に壊さずに引き直した研究があります。0.25°の回転の硬さは根返りの力のよい指標でした(決定係数0.91)。8年後、1本は元の強さに戻り、4本は元の71〜82%まで回復しましたが、3本は観察のあいだに倒れました。外観から回復を見分ける基準は見つかりませんでした。

凍った土と季節(2013年の解説)

強い霜で土が凍った日の測定は、根返りへの安全率を平均で2倍、最大で約2.4倍も高く出し、幹折れの安全も約30%高く出ました。フユボダイジュを1年に5回測ると、安全率は幹折れで最大15%、根返りで最大30%ずれましたが、平均では5〜10%でした。土の水分が40〜50%増えても、根返りへの安全率の低下は最大15%でした。

断面の画像とは、代わりにならず補い合う(2024年)

Rust氏とDetter氏は、主にヨーロッパブナとヨーロッパナラの59本で、引張り試験と、ピカス、トロニック、キャリパーによる断面の画像を同じ高さで比べました。2つの方法が示す「耐える力の低下」の関係はゆるく、ナラではほとんど関係が見られませんでした。著者らは、2つの方法は互いの代わりにはならず、補い合うものだとしています。断面の画像で引く方向を決める、引張り試験で断面からの見積もりを確かめる、といった使い方です。

日本での報告

石井氏と吉岡氏は、東京都道のエンジュ4本(伐採予定の3本と、健全な1本)でツリーキネティックを使い、arbostat で評価しました(2023年)。ロープは隣の木に付けた手動のウインチ(チルホール)で引き、エラストメーターは引く向きの線上、傾き計は引く向きに対して横の地際に付けています。報告によると、arbostat の評価(基準の風速30m/s)は、健全な木を含む4本すべてで安全率1未満となりました。健全な木は、0.25°の力の2.5倍から計算すると風速30m/sを上回る風に耐える見込みなのに、安全率は1未満と出ており、著者らは、欧州の気候と樹木をもとにした値を日本でどう使うかの検討が必要だとしています。

国土交通省の国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引き」(第2版)も、倒すまで引く試験で得られた値を試算に使いながら、街路樹は植栽の基盤が特殊なので、自然の木の試験結果を当てはめるには検討が要り、街路樹での結果の積み重ねが必要だとしています。

当社の考え方

当社は、幹の内部をピカスとトロニック、レジで診て、根元や根張りを外観診断で診ています。ただ、根返りの危うさを数字で示すには、断面の画像だけでは足りない場面があることも、研究が示すとおりです。

静的負荷試験(引張り試験)は、うまく使えば「この木は強風にどれだけ耐えるか」に数字で答えられる、ほかにあまり例のない方法です。一方で、見積もりの係数には幅があり、樹種や木の大きさ、土、季節で結果が変わること、日本の街路樹への当てはめには課題が残ることも、研究から分かってきました。当社では、引張り試験の結果を見る場面があれば、数字だけで判断せず、断面の画像や外観診断と合わせて読むことを大切にしたいと考えています。

株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。倒木が心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。

次回は、自然の風の中で木の揺れを測り、根の支えを見る機器、PiCUS TreeMotion(ツリーモーション)を取り上げます。

 

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

 

よくあるご質問(ツリーキネティック PiCUS TreeQinetic について)

Q1. 静的負荷試験(引張り試験)では何を測りますか?

A. ロープで引く力、幹の縁の繊維の伸び縮み、根元の傾きの3つを同時に測ります。その反応から、根返りと幹折れに必要な力を見積もり、想定する強風の力と比べて安全率を出します。

Q2. 試験で木を傷めませんか?

A. 引くのは木が元に戻る範囲までで、根元の傾きは0.25°ほど、幹の伸び縮みも弾性の範囲にとどめます。ただし、大きな力をかけるので、弱った木が突然壊れるおそれはあり、危険な範囲に人を入れないことが求められています。

Q3. 0.25°の傾きから、なぜ根返りの力が分かるのですか?

A. 多くの木の傾き方をまとめた考え方(一般化された傾き曲線)から、0.25°の力の約2.5倍を根返りの力とみなします。280本超の検証では、この見積もりは平均で実際より低め、つまり安全側に出ました。

Q4. 安全率はいくつあればよいのですか?

A. 1で耐える力と強風の力がちょうど同じです。樹木の分野では、ふつう1.5以上がひとつの目安とされます。最後は、外観や樹勢の診断と合わせて樹木医が判断します。

Q5. 解析ソフトは機器に付いていますか?

A. 安全率を出す解析ソフト arbostat は、IML社ではなくArboSafe社のソフトで、研修とセットで別に入手します。機器のデータはこのソフトの形式に合わせてあります。

Q6. 冬でも測れますか?

A. 取扱説明書は、強い霜のあいだと直後は測らないよう求めています。凍った土は根を強く支えるため、根返りへの安全率を平均で2倍ほども高く見積もった例があります。

Q7. 断面の画像(ピカスやトロニック)の代わりになりますか?

A. 代わりにはならず、補い合うものだとする研究があります。断面の画像は幹の中の傷みの広がりを、引張り試験は根の支えも含めた木全体の強さを見るもので、組み合わせて使うのがよいとされています。

Q8. 日本でも使えますか?

A. 日本の街路樹で試した報告があります。ただ、欧州の気候と樹木をもとにした解析の値をそのまま使うと、健全な木まで安全率1未満と出た例があり、日本での使い方の検討が課題とされています。

 

出典・参考情報

メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)

・IML Electronic「PiCUS TreeQinetic」製品ページ(英語) 測定の原理、構成、技術データ
・IML Electronic「IML TreeQinetic」ソフトの製品ページ(英語)
・IML Electronic「TreeQinetic Device and Software Manual」v1.1(PDF・英語) 各部の付け方(p.13〜22)、安全(p.21)、環境の条件(p.28)、病気を運ばない(p.31)、試験の設定(p.47〜58)、最大の力の読み取り(p.62)、仕様(p.68〜72)
・IML Electronic「PiCUS TreeQinetic」製品資料(PDF・英語、2025年4月版)
・ArboSafe「arbostat」(ドイツ語) 解析の考え方、研修

解説・研究

・Wessolly, L. & Erb, M. (1998) Handbuch der Baumstatik + Baumkontrolle. Patzer Verlag(英訳 Manual of Tree Statics and Tree Inspection, 2016)(原典。当社は未読)
・Detter, A. & Rust, S. (2013) Aktuelle Untersuchungsergebnisse zu Zugversuchen. Jahrbuch der Baumpflege 2013: 87–100
・Detter, A., Rust, S. & Krišāns, O. (2023) Experimental test of non-destructive methods to assess the anchorage of trees. Forests 14(3): 533
・Detter, A., van Wassenaer, P.J.E. & Rust, S. (2019) Stability recovery in London plane trees eight years after primary anchorage failure. Arboriculture & Urban Forestry 45(6): 279–288
・Rust, S. & Detter, A. (2024) Do sonic tomography and static load tests yield comparable values of load-bearing capacity? Forests 15(5): 768
・Andreozzi, M. et al. (2025) On the uprooting stability of trees: combined loading effect on tree stability assessment. Forests 16(12): 1780(一部を確認)
・石井匡志・吉岡賢人 (2023) 街路樹の引き倒し試験による倒木可能性の評価基準の検討. ランドスケープ技術報告集 2: 34–38
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き」第2版(2019年2月)

 

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サービス

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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。

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    植栽基盤の4つの条件──広がり・深さ・物理性・化学性を、樹木医が1つずつ解説|土壌調査と土壌改良 第1回

  4. 樹形再生 大きくなりすぎた木 ケヤキ 街路樹 数年計画 剪定 図解

    剪定の目的で、仕上がりは変わる──育てる・保つ・縮める・作り直す、植木職人の四つの手入れ|樹木医が図解(Pruning to a Purpose: Growing, Maintaining, Reducing and Restoring a Tree)

  5. 御神木 巨樹 祠 クスノキ 注連縄 樹木の時間 樹木医 随想

    残ったから、神になったのか 樹木の時間 第3回

  6. ツリーキネティック PiCUS TreeQinetic 静的負荷試験 引張り試験 根返り 幹折れ 樹木医

    ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説

  7. キャリパー PiCUS Calliper 3 三角測量 樹木診断 樹木医

    キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説

  8. 御神木 注連縄 巨木 神社 樹木の時間 樹木医 随想

    樹木は、神そのものではなかった 樹木の時間 第2回

  9. 透かし剪定 仕上がり 木漏れ日 影 空が透ける 常緑樹 比較 図解

    透かし剪定をもう一歩深く──植木職人が見ている「切り替え」「上下の加減」「手を止めるとき」|樹木医が図解(Sukashi in Depth: What a Japanese Gardener Watches While Thinning)

  10. 根株診断 俯角40度 俯角30度 根株 浅い 石 土 針の通り道

    レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説

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