寿昌院 臥竜の松
経年劣化していた支柱の交換を行いました。
江戸川区松本の寿昌院の境内にある、江戸川区登録天然記念物「臥竜の松」で、池の中に据えられていた支柱を、丸太一本の頬杖支柱から丸太二本の仕様に交換した記録です。名木の枝を支える支柱の考え方と、登録天然記念物・景観重要樹木の制度を、国の研究機関の手引きや区の資料をもとに書き添えます。
池の中の支柱を、丸太二本の仕様に交換

三脚に掛けた吊り具で松の枝を支え、脚立の上で作業するスタッフ

水を抜いた池の底。スコップで支柱の穴を掘る

池の底で新しい支柱を建て込む2人のスタッフ

池の底に立てた、丸太二本の新しい支柱

三脚を立てて作業中の臥竜の松の全景

丸太の支柱の頭に渡した横木で太枝を受け、縄で結束

太枝の下に据えた丸太の支柱と、枝を支える竹

交換を終えた池の中の支柱。丸太二本で横木を支えている
池の水を抜いてからの交換作業
池の中に据えられている支柱は、
1度ポンプを使用して池の水を排水をしてからの
交換作業となりました。
池内の既存の支柱は丸太一本の頬杖支柱でしたが、
スタッフで意見を出し合い丸太二本で
強固な形に仕様を変えて施工しました。

池の中の支柱の交換の前(上: 丸太一本の頬杖支柱)と後(下: 丸太二本の頭に横木を渡し、太い枝を受けて結束)。模式図で、支柱の本数・位置は実際と異なる
| 項目 | 交換前 | 交換後 |
|---|---|---|
| 池の中の支柱の形 | 丸太一本の頬杖支柱 | 丸太二本の強固な形 |
| 補強の材料 | 場所によってはエンビパイプで補強 | 丸太 |
| 丸太の仕上げ | 経年劣化していた | 防腐剤処理を行い、表面を焼いた仕様 |
出典: この記事の本文と写真(当社の施工の記録)
名木の枝を支える支柱の考え方
国土交通省 国土技術政策総合研究所の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、支柱を、強風などによる倒伏や枝折れを防ぐために設けるものとし、樹木の大きさや枝の状態に合った形式があるとしています。支柱の形式には撞木(頬杖)型、ワイヤーロープ型、八ツ掛型、鳥居型などがあり、支柱と幹・枝を固定する所には保護材を添えます。
同じ研究所の「巨樹・老樹の保全対策事例集」には、町の天然記念物の臥竜梅で、二脚鳥居型の支柱で地面を這う枝を頬杖のように支えた事例が載っています。一方で、大枝に付けた支柱が、雪の重みで垂れた枝の支点になって枝が折れた失敗事例も紹介されています。同じ支柱でも、形と付ける位置によって結果が分かれることが、事例から分かります。
場所によってはエンビパイプで
支柱補強されていた部分もあった為、
折角の松の美観を損ねる事になっていました。
同じ手引きは、景観の面から、支柱の本数が多すぎたり、樹木と調和しない色や形になったりしないよう配慮することを求めています。設置した後も定期的に点検し、劣化に応じて補修・取り替え・撤去を行うことが示されています。
丸太は、防腐剤処理を行い
表面を焼いた仕様にしてあり、
臥竜の松の荒々しい幹の風合いとも合い、
一層魅力を引き出していると思います。
支柱の丸太の扱いについては、東京都建設局の「土木材料仕様書」が、杉丸太の防腐処理に木材保存剤を使う場合は JIS K 1570 の木材保存剤で性能基準を満たすものを使うとし、木材保存剤を使わない場合は素材のままか焼き処理を行って使うとしています。
ご依頼頂きありがとうございました。
この松を観にいらしてくださる方が少しでも増えてくれる様、私たちも全力で維持管理だけでなく魅力を伝えられる様に努めてまいります。
お近くにお越しの際はお立ち寄り下さい
江戸川区登録天然記念物・景観重要樹木「臥竜の松」
推定樹齢500年
大正期に大風で幹が折れて現在のような這う松の形になり、その姿から臥竜の松と命名されたようです。
江戸川区登録天然記念物、江戸川区景観重要樹木に指定され、えどがわ百景のひとつに選ばれています。
江戸川区の文化財のページでは、臥竜の松は推定樹齢500年のクロマツで、昭和61年2月12日に区の登録天然記念物として告示されています。えどがわ百景の紹介では、高さ5m、東西16.5m、南北18.4mです。高さに比べて横に大きく広がる松で、その枝を多くの支柱が支えています。
| 指定・選定 | もとになる決まり | 所有者に求められること |
|---|---|---|
| 江戸川区登録天然記念物(昭和61年2月12日告示) | 江戸川区文化財保護条例 | 条例などに従って管理し、現状を変える行為などは前もって教育委員会に届け出る(影響が軽微な場合などを除く、第15条・第18条) |
| 江戸川区景観重要樹木 | 景観法 第28条、江戸川区景観計画 | 良好な景観が損なわれないよう適切に管理する(第33条)、伐採・移植には区長の許可が要る(第31条) |
| えどがわ百景 | 江戸川区の選定 | ― |
出典: 江戸川区「松本弁天臥竜の松」「えどがわ百景 34」「江戸川区景観計画 第5章」、江戸川区文化財保護条例、景観法(e-Gov法令検索)
施工から3年後、松の樹勢は回復しています。
その後、2023年には、松の枝どうしを横につなぐ丸太や竹の横木をなくし、頬杖支柱で補強する改修を行いました。その様子は「寿昌院様 臥竜の松 支柱改修プロジェクト」でご紹介しています。
まとめ
寿昌院の臥竜の松で、経年劣化していた池の中の支柱を、ポンプで池の水を抜いてから交換しました。丸太一本の頬杖支柱を、スタッフで意見を出し合って丸太二本の強固な形に変え、丸太は防腐剤処理を行い表面を焼いた仕様にしました。エンビパイプで補強されていた所も含め、松の美観に合う支柱を目指しています。
株式会社トシ・ランドスケープ
よくある質問
Q1. 頬杖支柱とは何ですか。
枝の下に丸太などを立てて、枝を下から支える支柱です。国の研究機関の手引きでは、支柱の形式として撞木(頬杖)型、ワイヤーロープ型、八ツ掛型、鳥居型などが挙げられています。
Q2. 臥竜の松は、どのように指定されていますか。
江戸川区の登録天然記念物(昭和61年2月12日告示)で、区の景観重要樹木にも指定され、えどがわ百景のひとつに選ばれています。推定樹齢500年のクロマツです。
Q3. 景観重要樹木に指定されると、何が変わりますか。
景観法により、所有者と管理者は良好な景観が損なわれないよう適切に管理し、伐採や移植をするときは区長の許可を受ける必要があります。
出典・参考情報
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料 第565号、平成22年1月)p.229〜230、「巨樹・老樹の保全対策事例集」(同 第566号、2010年1月)
・東京都建設局「土木材料仕様書」(令和7年)604 植栽保護材料
・江戸川区「松本弁天臥竜の松」「えどがわ百景 34 樹齢500年 松本弁天臥竜の松」「江戸川区景観計画 第5章」
・江戸川区文化財保護条例 第15条・第18条(江戸川区例規集)
・景観法 第28条・第31条・第33条(e-Gov法令検索)
臥竜の松のほかの記録
・【江戸川区・寿昌院】200年の時を超える「臥竜の松」 古地図と地名が語る土地の記憶
・生命力を感じる名木「臥竜の松」 その美しさと歴史 江戸川区
・寿昌院様 臥竜の松 支柱改修プロジェクト
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