ナラ枯れの全国の被害量は、林野庁が9月30日に公表した令和7年度の値で21.2万m3(前年度比113%)となり、過去最大だった平成22年度に次ぐ水準です。青森県や北海道での急増、都市の公園での倒木への備え、各地の取り組みを、一次情報をもとに樹木医の立場で整理します。
コナラやミズナラ、クヌギ、シイ・カシ類が夏に一斉に赤茶色になって枯れるナラ枯れ。体長5mmほどのカシノナガキクイムシ(以下、カシナガ)が幹に集まって穴をあけ、持ち込んだナラ菌によって水を吸い上げられなくなって枯れる病気です。先月から始めたクビアカツヤカミキリの月次ニュースと並べて、ナラ枯れも月に1回、全国の状況と国・自治体の動きをまとめていくことにしました。初回は、林野庁の最新の数字から見える全国の「いま」です。

今月の要点
- 令和7年度の全国の被害量は21.2万m3(前年度比113%)。令和2年度に再び増えてから高い水準が続き、過去最大の平成22年度(32.5万m3)に次ぐ量になりました。
- 林野庁のまとめでは、令和7年度は44都道府県で被害が発生し、そのうち18道県で前年度より増えました。
- 都道府県別では青森県が59.1千m3(前年度比188%)と突出し、秋田・岡山・福島・岩手・香川・群馬・栃木が続きます。北海道は令和5年に初めて確認されてから、令和7年度には11市町・2,001本に広がりました。
- 令和以降、被害は都市近郊の林や公園にも広がり、公園での伐採や倒木への備えが自治体の課題になっています。
- 2026年3月には、林野庁の補助事業で「新版 ナラ枯れ被害対策マニュアル」がまとめられました。
全国の被害量は21.2万m3。平成22年度に次ぐ水準に
林野庁の統計で、ナラ枯れの被害量は「被害材積」、つまり枯れた木の幹の体積(m3)で数えます。平成22(2010)年度の32.5万m3を頂点にいったん減り、10万m3未満の年が続きました。それが令和2(2020)年度に19.2万m3へ跳ね上がり、令和6年度は18.8万m3、令和7年度は21.2万m3と、2年続けて増えています。

被害が出た都道府県は、林野庁のまとめで44都道府県。このうち前年度より増えたのは18道県です。なお、同じ資料の都道府県別の表を数えると、被害の無いのは大分県と沖縄県だけで、鹿児島県にも50m3未満の被害が記録されています。いずれにしても、九州の一部と沖縄を除くほぼ全国で、ナラ枯れが出ていることになります。
どこで増えているのか──北東北・北海道・北関東

令和7年度で目立つのは北日本です。青森県は59.1千m3で、前年度の31.5千m3から約1.9倍。全国の被害量の4分の1以上を青森県だけで占めています。秋田県(19.1千m3)、岩手県(13.7千m3)も前年度より大きく増えました。
北海道では、令和5年(2023年)10月に道南で初めて被害が確認されました。令和7年度は11市町で2,001本の被害木が確認され、令和8年度の調査でも9市町で464匹のカシナガの生息が確認されています。被害量は林野庁の表で0.1千m3から1.5千m3へ、約10倍です。九州では熊本県が0.2千m3から3.1千m3に増えました。

関東では、群馬県(11.1千m3、前年度比148%)、茨城県(9.1千m3)、埼玉県(9.0千m3)が増え、栃木県は10.0千m3と前年度より減りました。埼玉県では、令和元年9月に新座市で初めて確認されてから、令和7年11月13日現在で県内48市町村に広がっています。一方で、一時は多かった地域で落ち着いてきたところもあります。神奈川県は令和3年度の17.7千m3から令和7年度は0.3千m3に、京都府・大阪府・兵庫県も前年度の2〜3割まで減っています。新版マニュアルによると、ナラ枯れは発生から数年のうちに広がった後、一般に5〜10年程度で被害が収まる傾向があるとされます。増えている地域と、山を越えた地域の両方が、同じ地図の上に並んでいる状況です。
都市の公園・緑地で起きていること
新版マニュアルは、ナラ枯れが「令和以降、関東地方をはじめとする都市近郊林や公園などの市街地にも拡大」していると書いています。森林の統計の数字だけでは見えにくい、身近な緑での動きです。
東京都青梅市は、公園・緑地でナラ枯れの被害木を伐った本数を公表しています。令和5年度266本、令和6年度262本、そして令和7年度は555本と倍増しました。町田市は6月30日の発表で、2026年4月から5月の2か月間に、市内の公園・緑地で約30件の倒木があったと報告しています。原因として、ナラ枯れによる倒木だけでなく、サクラの倒木や斜面地の倒木、外見は健全に見える木の根腐れなど、一見しただけでは判断が難しいケースがあると説明しています。
林野庁が示す対策は、健全な木に粘着剤を塗ったりビニールシートを巻いたりする予防、殺菌剤の樹幹注入、カシナガが出てくる前に被害木を伐ってくん蒸・焼却・破砕する駆除、そして大きくなりすぎた木を伐って林を若返らせることです。都市の緑地では、これに加えて「枯れた木をいつまでに片づけるか」という安全の判断が重なります。
伐る時期にも注意が要ります。新版マニュアルは、カシナガの活動期(おおむね6〜9月)に被害木を伐ると、伐った木から出る匂いの成分(カイロモン)で周りのカシナガを呼び寄せ、かえって被害を広げるおそれがあるとして、この期間の伐倒を避けるよう求めています。今年枯れた木は、成虫が出ていく前の10月から翌年5月頃までに、破砕・焼却・薬剤処理などで確実に処理する必要があります。10月は、ちょうどその処理に取りかかれる時期です。
樹木医から見たこと

ナラ枯れで枯れた木は、時間とともに確実に弱っていきます。新版マニュアルは、一般に枯れてから1〜2年で小枝が落ち始め、3年ほどで大枝が落ち、5年後には幹が折れたり根元から倒れたりする危険が高まる、とまとめています。そのうえで、人の行き来がある場所やインフラの近くの枯れた木は、落枝が本格化する前、被害から2年以内に取り除くよう求めています。被害の翌年の秋以降に見つかった枯れた木は、カシナガがすでに外へ出ているので、焼却や薬剤の処理は要らず、伐る時期も問わないとしています。
外観は立木の形を保っていても、幹や枝が自立できないほど強さを失った木があることは、当社が枯死したナラ枯れ木の機器診断と引っ張り試験で調べ、枯死木がなぜ突然倒れるのかでも考察してきたテーマです。公園や社寺林、マンションの緑地では、「今年枯れた木」「去年までに枯れた木」を分けて記録しておくことが、伐る順番を決める手がかりになります。

一方で、穴をあけられた木がすべて枯れるわけではありません。穴が少なく、水の通り道が保たれた木は枯れずに残ることがあり、「穿入生存木」と呼ばれます。こうした木は、その後もカシナガが繁殖しにくいことが多いため、原則として伐らないという考え方が、マニュアルでも示されています。根元にフラス(木くずと糞の混ざったもの)が出ているからといって、すぐに伐るとは限りません。葉の状態や穴の数などを見て、1本ずつ判断することが大切だと考えています。

来月は、各地の令和8年度の被害調査の発表や、自治体の新しい取り組みを追っていきます。
よくある質問
Q1. ナラ枯れの被害は、いまどのくらいですか。
林野庁のまとめでは、令和7年度の全国の被害量は21.2万m3(前年度比113%)で、過去最大だった平成22年度の32.5万m3に次ぐ水準です。44都道府県で被害が発生し、青森県が59.1千m3と最も多くなっています。
Q2. ナラ枯れは、どうして木が枯れるのですか。
体長5mmほどのカシノナガキクイムシが幹に集まって穴をあけ、ナラ菌を持ち込みます。菌が広がると水の通り道が詰まり、多くのナラは7月下旬から8月中旬にかけて葉が変色して枯れます。
Q3. ナラ枯れで枯れた木は、いつごろ危なくなりますか。
新版 ナラ枯れ被害対策マニュアルによると、一般に枯れてから1〜2年で小枝が落ち始め、3年ほどで大枝が落ち、5年後には幹が折れたり根元から倒れたりする危険が高まるとされます。人の行き来がある場所では、被害から2年以内の除去が求められています。
Q4. 穴があいた木は、すべて伐る必要がありますか。
すべてではありません。穴が少なく水の通り道が保たれた木は、枯れずに残ることがあり、穿入生存木と呼ばれます。その後もカシナガが繁殖しにくいことが多いため、原則として伐らない考え方が示されています。樹木医が木の状態を見て判断します。
Q5. ナラ枯れの木を伐るのは、いつがよいですか。
今年枯れた木は、カシナガの成虫が出ていく前の10月から翌年5月頃までに伐って、破砕・焼却・薬剤処理などで処理します。活動期のおおむね6〜9月に伐ると、伐った木の匂いでカシナガを呼び寄せるおそれがあるため避けます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
出典・参考情報
・林野庁「ナラ枯れ被害」(令和8年9月30日更新)、「ナラ枯れ被害について」、「全国のナラ枯れ被害量(被害材積)の推移」、「都道府県別ナラ枯れ被害量(被害材積)の推移(総数)」
・一般社団法人日本森林技術協会「新版 ナラ枯れ被害対策マニュアル」(令和8年3月、林野庁補助事業)
・北海道「ナラ枯れ被害について」(2026年8月21日更新)
・東京都青梅市「公園・緑地内でのナラ枯れ被害木にご注意ください」(2026年9月11日更新)、東京都町田市 プレスリリース「公園・緑地における樹木の倒木について」(2026年6月30日)
・図の地図は「地球地図日本」(国土地理院)を加工して作成
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