山形県東根市の東根小学校の校庭に立つ、国の特別天然記念物「東根の大ケヤキ」を、樹木医として2019年4月以来、7年ぶりに訪ねました。推定樹齢1500年以上の樹勢と、樹冠を支える方法がワイヤーからコブラケーブリングに替わっていたこと、学校と地域が守ってきた歴史を、公的な資料と2019年・2026年の写真で書きます。

2026年10月、大ケヤキの樹冠を見上げる
この記事の要点
- 東根の大ケヤキは、山形県東根市本丸南一丁目1番1号、東根市立東根小学校の校庭にあるケヤキの巨木です。東根城(小田島城)の本丸跡と伝わる場所に立っています。
- 1926(大正15)年10月20日に国の天然記念物、1957(昭和32)年9月11日に特別天然記念物に指定されました(文化庁)。
- 東根市は樹高28m、根回り24m、目通りの幹周16m、推定樹齢1500年以上としています。文化庁の解説は「幹周は12m以上、樹齢1000年を越す」です。
- 2019年4月には、幹に板の当て材を巻き、そこから鋼製のワイヤーを張って大枝を支えていました。2026年10月には、黒い樹脂製のロープ(コブラケーブリング)に替わっていました。
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 所在地 | 山形県東根市本丸南一丁目1番1号(東根市立東根小学校) | 山形県・東根小学校 |
| 指定 | 1926年10月20日 天然記念物、1957年9月11日 特別天然記念物 | 文化庁 |
| 樹高 | 28m(特別指定のころは35mあったらしいとされる) | 東根市・農林水産・食品産業技術振興協会 |
| 幹の周り | 根回り24m、目通り16m(測る高さで数字が変わる) | 東根市 |
| 推定樹齢 | 1500年以上(文化庁の解説は1000年を越す) | 東根市・山形県・文化庁 |
| 所有者 | 東根市(東根市教育委員会「東根の大ケヤキ環境整備事業」で管理) | 山形県・東根市教育委員会 |
7年ぶりの東根で、まず樹冠を見上げた
2026年10月、山形県東根市でケヤキ並木の樹木診断がありました。山形の株式会社環meguru(代表・松沢樹木医)との協働です。対象は東根大森工業団地線のケヤキで、9月に環meguruさんが外観診断を行い、機器診断が必要とされた31本を、当社のスタッフがレジ(Resi PD)で診断しました。
その合間に、環meguruの皆さんと当社のメンバーとで、東根の大ケヤキを訪ねました。私にとっては2019年4月以来、7年ぶりです。

2019年4月、芽吹きの頃の大ケヤキ。右が東根小学校の校舎
7年前に訪ねたのは4月で、ちょうど芽吹きの頃でした。今回は10月で、葉が色づき始めていました。
小学校の前に立って、最初に口をついて出たのは「相変わらずだな」でした。三階建ての校舎を覆うほどの樹冠の厚み、白く盛り上がった根元の量感。7年前に受けた迫力が、少しも薄れていない。そして何より、樹勢がいい。推定樹齢1500年以上の樹木が、枝先まで勢いを保っています。各地で古木を見てきましたが、これほどの年数を重ねて、ここまで力強さを感じる樹木はそう多くありません。

環meguruの皆さんと、大ケヤキを見上げる(管理者の了承を得て、柵の内側から見せていただきました)
根元のまわりは柵で囲われ、ふだんは立ち入り禁止です(環境省 巨樹・巨木林データベース コラム)。今回は管理者の了承を得て、柵の内側から見せていただきました。
ただ、見上げているうちに、7年前と違うところに気がつきました。
変わっていたのは「支え方」だった──2019年と2026年の写真で比べる
2019年に訪れたとき、大ケヤキの大枝は鋼製のワイヤーロープで支えられていました。手元の写真を見返すと、幹に板を並べた当て材を巻き、そこから細いワイヤーが張られています。山形新聞の報道(2020年12月18日)によれば、大ケヤキは雪で枝が折れないようワイヤーロープで支持され、ロープは3年ごとに張り替えられていたそうです。

2019年4月。幹の高い所に、板を並べた当て材が2か所巻かれている
今回見上げた樹冠では、その支えが黒い樹脂製のロープ、コブラケーブリングに替わっていました。

左: 2019年4月。板の当て材とワイヤー。右: 2026年10月。幹に巻いた黒いロープ(コブラ)
2つの写真で見比べると、違いは次のとおりです。
| 項目 | 2019年4月 | 2026年10月 |
|---|---|---|
| 見えたもの | 幹に巻いた板の当て材と、細い鋼製のワイヤー | 幹や大枝に巻いた黒いロープ |
| 方式 | ワイヤーロープによる支持(3年ごとに張り替え、山形新聞 2020年12月18日) | コブラケーブリング(樹脂製のロープ) |
| 出典 | 当社の写真・山形新聞 | 当社の写真 |
いつ、どなたが、どのような判断で交換されたのかは、今回調べた範囲の公開資料では確認できませんでした。分かり次第、追記します。

2026年10月。幹に巻いた黒いロープが、樹冠の中の別の幹へ延びている
特別天然記念物の現状を変えるには、文化庁長官の許可がいります(文化庁「記念物」)。3年ごとにワイヤーを張り替え続けてきたことも、新しい方式に切り替えたことも、この樹木と向き合ってきた方々の判断の積み重ねです。同じ仕事をする者として、まずそこに敬意を表したいと思います。
コブラケーブリングとは
コブラ(cobra®)は、ドイツ・シュトゥットガルトの pbs Baumsicherungsprodukte 社が1993年から販売している、樹冠のケーブリングシステムです。編み込んだポリプロピレン製の中空ロープを使います。メーカーは、工具を使わず、樹木を傷めずに素早く取り付けられること、ドイツの樹木管理の技術基準 ZTV-Baumpflege に沿っていること、動的にも静的にも使えることを特長に挙げています(cobra® 公式サイト)。仕組みはコブラ・ツリーケーブリングとはでも書いています。

2026年10月の樹冠。大枝の何か所かに、黒いロープが巻かれている
メーカーの規格表は次のとおりです。
| 規格 | ロープ径 | 動的(ダイナミック)に使う場合の対象枝径 | 静的に使う場合の対象枝径 | 使用期間(メーカー公表) |
|---|---|---|---|---|
| cobra 2t | 14mm | 40cmまで | 30cmまで | 12年 |
| cobra 4t | 18mm | 40〜60cm | 40cmまで | 12年 |
| cobra 8t | 28mm | 60〜80cm | 40〜60cm | 8年 |
出典: cobra® 公式サイトの規格表。国内の販売元の資料は、規格を分けずに、8年を超える使用年数としています

図 コブラの3つの規格と、対象になる枝の太さ(cobra® 公式サイトの規格表から当社作成)
コブラはロープを枝に巻いて留めるので、枝に穴を開けずに済みます。国内のカタログも、金具類を一切使っていないことを特長にしています。ロープの中に差し込むインサート板で、枝や幹に当たる面を広げて圧力を分散し、耐摩耗ホースでロープを摩耗から守る仕組みです。一方、現場での経験から言えば、鋼製ワイヤーの方式では、枝に穴を開けてボルトを通して留めることもあります。大ケヤキの2019年の写真では、幹に板の当て材を巻いてワイヤーを留めていました。

一般的な例。左: 幹に巻いた金属のワイヤーが、樹木の成長で食い込んだ例。右: 幅の広い帯で巻いて留めるコブラ(当社のイラスト。コブラ・ツリーケーブリングとは から)
国内で手に入るケーブリング資材とワイヤー支柱の違いは、国内で買える樹木のケーブリング資材とワイヤー支柱の比較にまとめています。
「動きを止める」から「動きを受け止める」へ
私がこの交換でいちばん興味を持ったのは、素材よりも考え方の違いです。
ドイツの ZTV-Baumpflege(2006年版)は、樹冠を支える方法を三つに分けています。基準を定める委員会から、樹冠の固定の改訂点を専門誌で伝える役を任された工学博士のヴェッソリー氏(Lothar Wessolly)が、その中身を解説しています(Kletterblatt 2006)。
| 区分 | ドイツ語 | ねらい | 使う場面 |
|---|---|---|---|
| 動的な破断防止 | Dynamische Bruchsicherung | 動きを制限する | 標準の方法(ふだんの風では枝が動ける) |
| 静的な破断防止 | Statische Bruchsicherung | 動きを止めて固定する | 亀裂の入った枝など、それ以上裂けないようにしたいとき |
| 保持 | Tragsicherung | 落下を防ぐ | 折れたときに枝が落ちないようにしたいとき |
出典: Wessolly, L.「Die Kronensicherung in der ZTV」Kletterblatt 2006。当社が要点を訳して表にしました
ヴェッソリー博士は、このうち動的な方法を標準と位置づけています。弱い部分を抱えた樹木でも、そこが揺れるのを樹木が「感じ取れる」ようにしておかないと、樹木は自分で補強のための成長(補償成長)をしないからです。だから、成長期のふだんの弱い風では枝を動かし、強い揺れだけを緩衝材とロープの伸びで受け止める。一方、すでに亀裂の入った枝は、それ以上裂けないよう、動きを完全に止める静的な方法にするのが原則です。

動的なケーブリングの考え方。ふだんの風ではロープが少したるみ、枝は動ける(左)。強い風では緩衝材が伸びて揺れを受け止める(右)(当社のイラスト)
静的な方法と保持は、当社のコブラの記事の絵では次のように描いています。静的なケーブリングは、分かれ目に亀裂のある二股などを、伸びの少ないロープで固定します。

静的(スタティック)なケーブリング。分かれ目に亀裂のある二股を、伸びの少ないロープで固定する(当社のイラスト)
保持は、傷みのある大枝が折れたときに、下の人や物の上へ落ちないように吊っておく方法です。

保持のためのケーブリング。傷みのある大枝が折れても、下へ落ちないように吊る(当社のイラスト)
ZTV-Baumpflege は、ケーブリングの最低使用期間を8年と定めています。ヴェッソリー博士は、設置した年を色で示すプレートを付けることも勧めています。付けたら終わりではなく、点検と更新を前提にした技術です。ドイツの基準については、ドイツでアーボリスト視察 ケーブリングと樹木管理の基準でも書いています。

2019年4月。大枝の分かれ目の上に、当て材が見える
大ケヤキでは2020年12月17日の夜、大雪で直径70cm、長さ11.7mの枝が折れました(山形新聞 2020年12月18日)。雪国の巨樹にとって、着雪は避けられない荷重です。今回のケーブルがどの規格で、どういう設計で張られているのかは、下から見ただけでは判断できません。それでも、次の世代へつなぐために選ばれた方法であることは確かだと思います。
2020年の枝折れと、その後の管理
2020年12月の枝折れでは、翌日の調査で枝の内部の空洞化が進んでいたことが分かり、老化と着雪が原因とみられています。調査にあたった樹木医は樹勢に影響はないとの見方を示し、市は断面に防腐処理を施して、山形県と文化庁に報告する方針と報じられました(山形新聞 2020年12月18日)。

雪の重さは、大枝を付け根で曲げる力になる。内部に空洞があると、その力を受け止める材が薄い(仕組みを説明する当社のイラストで、大ケヤキの枝を描いたものではありません)
現場での経験から言えば、外から見て太い枝でも、中の材が薄くなっていることがあります。枝の中の状態は、外から見ただけでは確かめきれません。当社が街路樹の診断でレジ(Resi PD)を使うのも、この「外から見えない中」を確かめるためです。

2026年10月。幹の一部が白く覆われている
東根市教育委員会は「東根の大ケヤキ環境整備事業」として、薬剤や活性剤の散布、枯れ枝の伐採、より適切に管理していくための調査を続けています(東根市教育委員会「令和8年度 東根市の教育」)。

2026年10月。こぶの多い幹から、若い枝が何本も伸びている
天然記念物の樹勢回復に使える国や自治体の制度は、天然記念物の樹勢回復と補助金にまとめています。

2019年4月。根元のそばから幹を見上げる
1500年の時間をたどる──伝承と記録を分けて
大ケヤキの歴史を語るとき、伝承と記録はできるだけ分けておきたいと思います。

図 東根の大ケヤキの年表。破線の枠は伝承、塗った枠は記録のある出来事(各資料から当社作成)
伝承として語られていること
- 南北朝時代の正平2(1347)年ころ、小田島長義が東根城を築いたとき、城内に植えられた(東根市は「といわれる」と記しています)。
- 幹の根元の空洞を通り抜けると、子宝に恵まれる(山形県「山形の宝検索navi」)。
記録や資料から言えること
- 東根城はその後、坂本氏、里見氏が城主を務め、元和8(1622)年、最上家の改易とともに廃城になりました(東根市)。
- 江戸末期の松前藩東根陣屋絵図には、今の大ケヤキと「雄ケヤキ」のほか、旧本丸・二の丸のまわりに22本のケヤキが描かれています(東根市)。
- 1874(明治7)年11月、旧本丸の松前藩陣屋に、東根小学校の前身の東根学校が開かれました(東根小学校)。1885(明治18)年に雄槻が枯れ、雌槻にあたる今の大ケヤキが残ったといわれます(山形県)。
- 1926(大正15)年に天然記念物、1957(昭和32)年に特別天然記念物に指定。特別指定のころは樹高が35mあったらしいとされています(農林水産・食品産業技術振興協会「日本の特別天然記念物」)。

「東根の大欅」の石碑と大ケヤキ(2026年10月)
樹木医として胸に迫るのは、昭和の後半の出来事です。地元の史誌『羽央文化』によると、昭和46(1971)年7月に東根小学校の旧校舎の解体が始まり、昭和50(1975)年3月に今の校舎ができたとき、大ケヤキのまわりに最大1.2mの盛土がされました。昭和60年ごろから樹勢が落ち、昭和63年には落葉がひどく、消防車で1週間放水を続けて、ようやく持ち直したといいます。

根の上に盛土と舗装があると、雨水が根まで届きにくい(左)。舗装を水の浸み込む網に替えると、雨水が土に入る(右)(仕組みを説明する当社のイラストで、大ケヤキで行われた工事を描いたものではありません)
その後、市の事業で、樹勢を回復させるための環境改善が行われました。東根市によると、県立林木試験場の大津正英農学博士は、樹齢千五百年以上で「今後、数百年は樹勢ますます盛ん」であり、ケヤキ番付の「東の横綱」の座が保障できると太鼓判を押したそうです。
現場での経験から言えば、根の上の盛土は、樹勢を落とす原因としてよく見るものの一つです。伐るのではなく、水を与え、根のまわりの環境を改善することで持ち直させた。この判断がなければ、今日見上げた樹冠はなかったかもしれません。

2019年4月。盛り上がった根元と、太い幹
「日本一」の根拠と、測る高さで変わる幹周
「日本一のケヤキ」と呼ばれるいちばんの根拠は、金沢の植物学者・里見信生氏が大相撲の番付表になぞらえて作った「日本欅見立番附」(1980年発表)で、「東の横綱」に挙げられたことです(環境省 巨樹・巨木林データベース コラム)。ただ、幹周の数値は資料によってかなり違います。

図 東根の大ケヤキの「幹周」の数字は、測った高さで変わる(各資料から当社作成)
大ケヤキは根元が1.5mほど持ち上がった「根上がり」の樹形で、どの高さで測るかによって数字が大きく変わります(山形県)。山形県は、地際の周りを24m、根上がりした所の根周りを16m、そのさらに1.5m上の幹囲を12.6mとしています。

根上がりの樹形では、測る高さで幹の周りの数字が変わる。数字は山形県の資料(当社のイラスト)
大正の指定時の記録には「根元ノ周圍約六丈三尺、幹根境界部ノ周圍約五丈樹高約十五間」とあります(文化庁 国指定文化財等データベース。天然紀念物調査報告(植物之部)第六輯 四頁)。換算すると次のとおりです。
| 大正の記録 | 換算 | 今の資料で測る位置が近いもの |
|---|---|---|
| 根元ノ周圍 約六丈三尺 | 約19m | 地際の周り・根回り 24m |
| 幹根境界部ノ周圍 約五丈 | 約15m | 根周り・目通り 16m |
| 樹高 約十五間 | 約27m | 樹高 28m |
出典: 文化庁 国指定文化財等データベース。1丈=10尺=約3.03m、1間=約1.82mで換算
東根百草会が平成6年9月に地上1.3mで測った値は16.48mでした(『羽央文化』)。どれが正しいかではなく、測った場所が違うと読むのが正確でしょう。

大ケヤキの根元の前で(2026年10月)。人の背丈と比べると、幹の太さが分かる
幹周の数字だけで順位を付けるのは、測る高さが資料ごとに違う以上、簡単ではありません。東根の大ケヤキの「日本一」は、大きさに樹形と樹勢を合わせた評価だと私は受け止めています。

こぶの上から何本も枝が伸びる幹(2026年10月)
幹の根元の空洞と、子宝の言い伝え
山形県によると、大ケヤキの幹の下部は大きく空洞になり、中の広さは畳2枚ほどで、南北に開いています。ここを通り抜けると子宝に恵まれる、という言い伝えがあります(山形県「山形の宝検索navi」)。大正の記録にも「幹ノ下部ハ空洞トナレリ」とあります(文化庁)。

2019年4月。根元の空洞の開口
7年前の写真を見返すと、空洞の口の形が今もよく分かります。

空洞の中から顔を出す同行者(2026年10月。管理者の了承を得て柵の内側に入っています)
今回は、管理者の了承を得て、同行した方が空洞の中に入らせていただきました。

空洞の口に立つ同行者(2026年10月。同上)
文化庁の解説は、大ケヤキの基部が空洞化しているものの、よく管理されており樹勢は旺盛としています。現場での経験から言えば、空洞の大きさだけで危ないと決めることはしません。残っている材の厚さと樹冠の勢いを、合わせて見るようにしています。

2019年4月。空洞の中の、崩れた材
樹木を守ってきたのは、学校と地域の日常
大ケヤキは、昭和13年に制定された東根小学校の校歌で「その名も高き 大けやき」と歌われています(東根小学校)。子どもたちは昔から「けやきっ子」と呼ばれ、祖父の代から孫の代まで、この樹木の下で学んできました(環境省 巨樹・巨木林データベース コラム、2020年9月25日。当時の長瀬広幸校長)。

2019年4月。学校の前の道から見た大ケヤキ
平成7年からは「大けやき横綱」の行事が続いています。5年生が田植えと稲刈りをして育てた稲わらで、地域の方々と一緒に大きな横綱をなう。全長18m・重さ350kgの横綱を2月に作り、6年生になると、その横綱を4月末のパレードで引き、大ケヤキの前の台座に奉納します(東根小学校、環境省 巨樹・巨木林データベース コラム)。2026年も2月21日に横綱作りが行われたと報じられています(山形新聞 2026年2月22日)。

2019年4月、正面から見た大ケヤキ
学校のウェブサイトには、2023年に、地域の実行委員会の方々から「けやきの葉が今年は元気だ」という声があったことが紹介されていました。教職員の方々が日ごろから周りを整え、水かけを丁寧に続けていることも書かれています。私たちが外から持ち込む診断の技術は、こうした毎日の手入れがあって初めて生きるものだと、あらためて思いました。
見学のときに気をつけたいこと
見学のときは、次の点に気をつけていただければと思います。

2019年4月。正面から少し角度を変えて見た大ケヤキ
| 項目 | 内容 | 出典 |
|---|---|---|
| 場所 | 現役の小学校の敷地 | 東根小学校 |
| 見学の心がけ | 授業や行事の妨げにならないよう静かに | 当社からのお願い |
| 根元 | 柵で囲われ、立ち入り禁止 | 環境省 巨樹・巨木林データベース コラム |
| 駐車場 | 龍興寺沼公園の駐車場(10台)、大型車は東根公民館の駐車場 | 山形県「やまがた景観物語」 |

柵の外から見た大ケヤキ(2026年10月)。樹冠の一部が色づき始めていた
根を踏み固めないことが、何よりの保護になります。柵の外からでも、樹冠の厚みと根元の量感は十分に伝わってきます。

2019年4月。道の先に見える大ケヤキ
よくある質問(Q&A)
Q1. 東根の大ケヤキはどこにありますか?
A. 山形県東根市本丸南一丁目1番1号、東根市立東根小学校の校庭にあります。東根城(小田島城)の本丸跡と伝わる場所で、1874年11月に東根小学校の前身の東根学校が開かれたのも、この旧本丸の松前藩陣屋でした。根元のまわりは柵で囲われ、立ち入り禁止です。
Q2. 東根の大ケヤキの樹齢は何年ですか?
A. 東根市と山形県は推定1500年以上としています。文化庁の解説は1000年を越すと推定しています。どちらも年輪で確かめた数字ではなく、推定値です。東根城を築いた正平2(1347)年ころに城内に植えられたという伝承もありますが、東根市も「といわれる」と書いています。
Q3. 東根の大ケヤキはいつ特別天然記念物になりましたか?
A. 1926(大正15)年10月20日に国の天然記念物に、1957(昭和32)年9月11日に特別天然記念物に指定されました(文化庁)。特別天然記念物は、天然記念物のうち特に重要なものです。指定された樹木の現状を変えるには、文化庁長官の許可がいります(文化庁「記念物」)。
Q4. 東根の大ケヤキの幹周は何mですか?
A. 測る高さで数字が変わります。山形県は地際の周り24m、根上がりした所の根周り16m、そのさらに1.5m上の幹囲12.6mとしています。東根市は根回り24m、目通り16m、文化庁は幹周12m以上としています。
Q5. なぜ「日本一のケヤキ」と呼ばれるのですか?
A. 金沢の植物学者・里見信生氏が大相撲の番付表になぞらえて作った「日本欅見立番附」(1980年発表)で、「東の横綱」に挙げられたことが大きな根拠です。当社の樹木医は、大きさに樹形と樹勢を合わせた評価だと受け止めています。
Q6. コブラケーブリングとは何ですか?
A. ドイツの pbs Baumsicherungsprodukte 社の、樹脂製のロープで枝と枝をつなぐ樹冠のケーブリングシステムです。ロープを枝に巻いて留めるので枝に穴を開けずに済み、動的に使う場合は、ふだんの風では枝を動かし、強い揺れを緩衝材とロープの伸びで受け止めます。
Q7. 東根の大ケヤキは、以前はどのように支えられていましたか?
A. 2019年4月には、幹に板の当て材を巻き、鋼製のワイヤーを張って大枝を支えていました。2020年12月の山形新聞は、ワイヤーロープが3年ごとに張り替えられていたと伝えています。2026年10月には、黒い樹脂製のロープのコブラケーブリングに替わっていました。交換の時期と施工者は、公開資料では確認できていません。
Q8. 東根の大ケヤキを見学するときの注意は?
A. 大ケヤキは現役の小学校の敷地にあるので、授業や行事の妨げにならないよう、静かに見学するのがよいと思います。根元のまわりは柵で囲われ、立ち入り禁止です。車は龍興寺沼公園の駐車場(10台)、大型車は東根公民館の駐車場が案内されています。
締めくくりに
7年ぶりに見上げた大ケヤキは、変わらず力強く、それでいて支え方は確かに新しくなっていました。1500年の時間を次へつないでいるのは、樹木自身の力と、学校や地域の毎日の手入れ、そしてその時々の専門家の判断なのだと思います。ご一緒した環meguruの松沢樹木医と皆さん、ありがとうございました。
巨樹や古木、社寺の御神木は、外からは見えない内部の状態や、根の環境の変化を抱えていることがよくあります。ケーブリングのような支えも、付けたあとの点検と更新が欠かせません。気になる樹木がありましたら、診断から管理の考え方まで、どうぞお気軽にご相談ください。
株式会社トシ・ランドスケープ
代表取締役 樹木医 中村雅俊
出典・参考情報
- 文化庁 国指定文化財等データベース「東根の大ケヤキ」
- 文化庁 文化遺産オンライン「東根の大ケヤキ」
- 文化庁「記念物」
- 東根市「日本一の大ケヤキ」
- 東根市教育委員会「令和8年度 東根市の教育」
- 山形県「山形の宝検索navi」東根の大ケヤキ
- 山形県「やまがた景観物語」
- 環境省 巨樹・巨木林データベース コラム(2020年9月25日)
- 農林水産・食品産業技術振興協会「日本の特別天然記念物」
- 東根市立東根小学校「学校情報」・「本校の歴史」・「特色ある活動」
- 山形新聞(2020年12月18日「『大ケヤキ』の太い枝折れる 東根・17日夜、大雪の影響」、2026年2月22日「力強い横綱できた 東根・東根小、大ケヤキ用」)
- 『羽央文化』No.1(平成27年11月3日)
- cobra® 公式サイト(pbs Baumsicherungsprodukte GmbH)
- Wessolly, L.「Die Kronensicherung in der ZTV」Kletterblatt 2006
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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

































