緑豊かな樹木に囲まれた神社ですが、
電線への接触などの問題もあり支障となる部分の剪定のご相談をいただきました。
東京都内の神社で、電線への接触など近隣の支障になっている枝を剪定した記録です。枝をロープで吊り降ろした段取りと、越境する枝の民法の決まり、電線の近くの作業の注意を、法令や電力会社の案内をもとに書き添えます。
電線と人通りに囲まれた神社の樹木

神社 樹木
敷地の外周は電線が張り巡らされ、
地上は、歩行者、車両がひっきりなしに通行する
剪定作業には大変シビアな環境でした。
電線の近くの枝は、作業を誤ると感電や停電につながります。東京電力は、立木の枝を切るときなど電線の近くで作業をするときは、電線に触れないように気をつけるよう案内しています。台風などで電線に樹木が接触している場合も大変危険だとして、見つけたら近くの東京電力パワーグリッドへ連絡するよう呼びかけています。

電線と枝の干渉(イラスト)。道路沿いの高木の上部の枝が電線に触れている(イラストは当社作成。この現場の絵ではありません)
工事などで架空電線の近くで作業をするときは、労働安全衛生規則 第349条が、電線の移設、囲い、絶縁用防護具の装着、それが著しく難しいときは監視人を置くことのいずれかを事業者に求めています。電線の近くで作業する前には、電力会社と相談しておくことが基本です。
ロープで枝を吊り降ろす──地上の誘導と見張り

ロープワーク 神社 剪定
地上には安全に通行いただくために誘導員の配置を行い、
クライマーと地上のグラウンドが息の合ったチームワークで
枝をロープで吊り降ろしながら安全作業に努めました。
切った枝をそのまま落とさずにロープで吊り降ろすのは、下にある電線や塀、通行する人と車を守るためです。労働安全衛生規則 第536条は、3m以上の高所から物を投げ下ろすときに、投下設備を設けて監視人を置くことなどを求めています。樹上で切る人(クライマー)と、ロープを操作して枝を受け止める地上の作業員(グラウンド)が合図を合わせ、地上では誘導員が歩行者や車を木の下に入れないようにします。

樹上で剪定するあいだ、地上の作業員が歩行者を誘導し、木の下に人が入らないよう見張る(イラストは当社作成。この現場の絵ではありません)
道路の工事で第三者を守る国の基準(国土交通省「建設工事公衆災害防止対策要綱」。土木工事が対象)でも、歩行者の多い所や落下の危険がある所では、交通誘導警備員を置くことが定められています。
| この現場の状況 | 行った対策 | 関係する決まり・案内 |
|---|---|---|
| 敷地の外周に電線が張り巡らされている | 支障となる部分を剪定し、枝を電線に当てないよう吊り降ろす | 労働安全衛生規則 第349条、東京電力の案内 |
| 歩行者と車両がひっきりなしに通行する | 誘導員を配置し、木の下に人を入れない | 建設工事公衆災害防止対策要綱 第27・第31(土木工事が対象) |
| 切った枝を落とせない | クライマーとグラウンドがロープで吊り降ろす | 労働安全衛生規則 第536条 |
出典: 労働安全衛生規則 第349条・第536条(e-Gov 法令検索)、国土交通省「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説(土木工事編)」(令和元年9月)第27・第31、東京電力ホールディングス「電線・電柱にご注意ください」
剪定の前と後
- 神社 越境枝剪定 作業後
- 神社 越境枝剪定 作業前
越境する枝と民法の決まり
敷地の外へ伸びた枝は、電線だけでなく、隣の建物や道路を通る人と車にもかかります。隣の土地に越境した枝について、民法第233条は、土地の所有者は木の所有者に枝を切除させることができる、と定めています。2023年(令和5年)4月1日に施行された改正で、次の3つの場合には、越境された側の土地の所有者が自ら枝を切り取れるようになりました。
| 場合 | 民法第233条第3項 |
|---|---|
| 第1号 | 木の所有者に切除するよう催告したのに、相当の期間内に切除しないとき(相当の期間は、法務省の資料では基本的に2週間程度) |
| 第2号 | 木の所有者を知ることができない、またはその所在を知ることができないとき |
| 第3号 | 急迫の事情があるとき |
出典: 民法 第233条(e-Gov 法令検索)、法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」p.29
越境した根は、改正の前から土地の所有者が自ら切り取れます(同条第4項)。一方で、枝は木の所有者に切除させるという原則は、改正後も変わっていません。木の持ち主が、周りに支障が出る前に枝の状態を確かめ、手入れをしておくことが基本になります。

図: 越境した枝と根の民法の決まり(出典: 民法 第233条、法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」p.29 をもとに当社作成)
なお、この神社の剪定は2022年で、改正の施行より前のことです。この記事の剪定は、木の持ち主である神社からご相談をいただいて行いました。
神社の樹木と、これからの景観
神社の樹木とはいえ近年の生活環境の変化などもあり、
樹木が伸び伸びと生育するのが難しい状況になっていることを多く見かけます。
今後の神社内の景観についてもしっかりとお打ち合わせさせて頂きました。
景観に対する方向性が決まると私たちも適切な手法での管理が可能になります。
都市の社寺林は貴重な都市の緑ですが、その衰退は日本各地で報告されていて、市街地の神社のクスノキの衰退と土壌の性質を調べた研究もあります(伊藤ら、2019年)。景観の方向性を決めるときには、枝の手入れとあわせて、木の足元の状態にも目を向けておきたいと考えています。
まとめ
電線が張り巡らされ、歩行者と車両の通行が多い神社で、電線への接触など支障となる部分を剪定しました。地上には誘導員を配置し、クライマーと地上のグラウンドが枝をロープで吊り降ろして作業しました。越境する枝は、木の持ち主が手入れをするのが民法の原則です。
ご依頼いただきありがとうございました。
今後ともよろしくお願いいたします。
株式会社トシ・ランドスケープ
よくある質問
Q1. 隣の家の木の枝が越境してきたら、自分で切ってよいのですか。
原則は、木の所有者に枝を切除させることになります。2023年4月1日施行の改正民法第233条では、催告しても相当の期間内に切除しないとき、所有者や所在が分からないとき、急迫の事情があるときに限って、土地の所有者が自ら切り取れます。
Q2. 電線にかかった枝は、どうすればよいですか。
自分で触れたり切ったりせず、電力会社に相談します。東京電力は、電線に樹木などが接触している場合は大変危険だとして、近くの東京電力パワーグリッドへ連絡するよう案内しています。
Q3. 人通りの多い場所で高い木を剪定するときは、どんな対策をしますか。
この現場では、地上に誘導員を配置し、切った枝を落とさずにロープで吊り降ろしました。
出典・参考情報
・民法 第233条(e-Gov 法令検索)
・法務省民事局「令和3年民法・不動産登記法改正、相続土地国庫帰属法のポイント」p.29
・労働安全衛生規則 第349条・第536条(e-Gov 法令検索)
・国土交通省「建設工事公衆災害防止対策要綱の解説(土木工事編)」(令和元年9月)第27・第31
・東京電力ホールディングス「電線・電柱にご注意ください」「台風・降雪のときは?」
・伊藤和男・三好洸希・城津卓己「兵庫県西宮市,日野神社社寺林のクスノキの衰退と土壌化学性」大阪府立大学高専研究紀要 第53巻(2019年)
高木の剪定や伐採作業の施工実績 一例
■東京都内 御神木剪定
■聖公会神学院様 世田谷区用賀
■オオシマザクラ 剪定・土壌改良 大田区中央
■保存樹木クスノキ 剪定作業 板橋区
■東京アメリカンクラブ様 エントランス高木剪定 港区麻布台
■銀杏岡八幡神社様 樹木伐採 東京都台東区
■大田区多摩川 マンション・集合住宅 保存樹木伐採
■渋谷区恵比寿 個人邸 高木サクラ剪定
■世田谷区北烏山 マンション・集合住宅 高木樹木伐採
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