ベッコウタケは駆除できるのか──見つけたときの対策と、杉並区のサクラ倒木の伐根作業

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先日サクラの倒木対応に伺った現場の追加対応で根の抜根処理に再度伺いました。

樹木医の髙尾、中村が状況を確認してみますと、根元には「ベッコウタケ」というキノコの発生痕がみられました。人的な被害が無かったことが救いでした。
弊社の樹木診断の投稿の中でも何度かご紹介させていただきましたが、キノコ(腐朽菌)によって根や幹が腐って倒木する可能性があります。
その中でベッコウタケは根を特に腐らせていくキノコになります。今回の倒木した桜をみても、太い根はスポンジ状になってかなり腐れが進行していたことが見受けられました。

先に答え

  • 杉並区でサクラが倒れた現場の追加対応として、根の抜根処理に再度伺いました。人的な被害はありませんでした。
  • 根元にはベッコウタケというキノコの発生痕があり、太い根はスポンジ状になって、腐れがかなり進んでいました。
  • 敷地内の駐車場の出入口の天井高の問題で、ラフタークレーンやトラッククレーンを設置できず、カニクレーンを使って作業しました。
  • ベッコウタケは、生きている木を倒すほどの腐朽力を持つキノコです。東京都のマニュアルでは、根株に見られたら必ず根株診断を行うとされています。

ベッコウタケは駆除できるのか

「ベッコウタケ 駆除」と検索される方が多いので、樹木医の立場でお答えします。

キノコは、木材腐朽菌が胞子を散らすための器官です(東京都建設局『街路樹診断等マニュアル』令和3年度 p.28)。腐朽を進めているのは根株や根の中に広がった菌なので、見えているキノコを取り除いても、中の腐朽が止まるわけではない、というのが私たちの現場での考えです。キノコを取っても、腐朽が進んだ根が元に戻ることはありません。

ベッコウタケとコフキタケの腐朽の広がり方の違い 幹と根株の縦断面の模式図 ベッコウタケは地際の心材と根を腐らせ時間がたつと幹の上へ コフキタケは地際から高い幹や枝まで上下に広げる
図: キノコは外に出た一部で、腐朽は根株や幹の中で広がる(ベッコウタケとコフキタケの縦断面の模式図。出典: 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」Ⅱ別冊 p.1-53・2-27・2-42 をもとに当社作成)

行政のマニュアルも、キノコを取ることではなく、診断と、その結果にもとづく判断を求めています。東京都のマニュアルは、根株にベッコウタケが見られたら必ず根株診断を行い、根元にベッコウタケが出て、梢端(枝先)の枯れも多い場合は、腐朽が著しく進んでいると考えられるため更新(植え替え)とする、としています(p.29)。国土交通省の『街路樹点検マニュアル』も、ベッコウタケ・コフキタケが出て枝葉の枯れや衰退があり、回復の見込みがない場合は伐採を推奨しています。当社が確かめた行政のマニュアルには、ベッコウタケの腐朽を薬剤で止める方法は示されていません。

2つのマニュアルの書き方を並べると、次のとおりです。

項目 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度) 国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所「街路樹点検マニュアル」(令和5年3月)
ベッコウタケの位置づけ 根元や幹下部のキノコで、腐朽による危険は根返り(倒木)、根株に腐朽力の強いベッコウタケが見られる場合は必ず根株診断を行う(p.29) 子実体の項目で、ベッコウタケ・コフキタケの発生は被害「大」(表6)
記録 ベッコウタケが出ている場合は、必ず写真を貼って説明を書く(p.16) 点検の結果から危険度ランクを決め、処置方針を書く(p.10)
伐採・更新の目安 根元にベッコウタケが出て、梢端に枯れが多く発生している場合は、腐朽が著しく進んでいると考えられるため更新(植え替え)(p.29) 子実体(ベッコウタケ・コフキタケ)が出て枝葉の枯れや衰退があり、回復の見込みが無い場合は伐採を推奨(p.10)
判定 ベッコウタケが出て被害が進んでいれば「著しい被害」で根株診断が必要、梢端の枯れや衰退も出ていれば「不健全」で更新(表Ⅲ-2・9、p.30) 推奨する対策は判定会議で確かめて決める(p.10)

出典: 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)p.16・p.29(表Ⅲ-2・8)・p.30(表Ⅲ-2・9)、国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所「街路樹点検マニュアル」(令和5年3月)p.10。国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」も、木材腐朽病は腐朽菌を取り除くことができない病害だとして、病状を的確に判断した対応を求めています(Ⅱ 1-101)

ベッコウタケを見つけたときの流れ

根元 キノコ 掘り下げ 確認 シャベル 腐朽
根元のキノコは、落ち葉や低木に隠れていることもあるため、かき分けて確かめる(当社イラスト)
  1. キノコの写真を撮り、出ている位置(根元のどちら側か)と大きさを記録します。東京都のマニュアルでも、ベッコウタケが出ている場合は必ず写真を付けて説明を記載するとしています(p.16)。
  2. 樹木医が外観診断を行い、根株の腐朽を機器で調べる根株診断(当社ではレジ(Resi PD)など)を行います。
  3. 診断の結果から、残して経過を観察するのか、伐採・植え替えるのかを判断します。人や車が通る場所では、結果が出るまでの安全対策もあわせて考えます。
  4. 伐採する場合は、今回のように根まで抜きます。国総研の『街路樹再生の手引き』には、ベッコウタケが土の中に残る可能性から、伐根後に土を入れ替えた事例があります。

ベッコウタケとはどんなキノコか、なぜ元気そうな木が倒れるのかは、前の記事(緊急対応)で詳しくまとめています。

今回の現場の記録

倒木前の樹木の状態については、一般の方目線で見ると葉もしっかりついていて全く危険な兆候は感じない事が多くあります。見た目には普通そうに見えても目には見えない幹や根の部分が腐ってしまい、倒木の危険性が知らず知らずのうちに高まってしまう点が非常に怖い部分でもあります。

今回は敷地内の駐車場の出入口の天井高の問題で、ラフタークレーンやトラッククレーンが設置できる環境では無かった為、カニクレーンを使用しての作業となりました。

都内の樹木も大型化、老朽化しているものが多く見受けられます。適切な管理と点検の重要性がこれからさらに求められる時期になってきているのかもしれません。

 

下記は弊社で何度かご紹介しております樹木医診断の説明となります。樹木診断のご相談をお待ちしています。

▪️外観診断(外観の目視や打診等による診断)

▪️機器診断(精密診断)
使用機材:レジ Resi PD-500
令和3年度 東京都建設局『街路樹診断等マニュアル』に準拠

外観上の見た目では葉も茂り元気そうに見えても、根や幹の内部が悪くなっていることも多くあります。

内部の検査も重要ですが、この結果だけではなく、枝葉や樹皮の状態、キノコの有無、根の状態、周辺環境等の外観診断も重要な判断材料になります。

樹木医が診断を行う事で
・危険がある樹木
・注意が必要で経過観察が必要な樹木
・健全な樹木
を判定し今後の管理方針に活かしていきます。

 

弊社では昨年から街路樹診断協会へ加入いたしました。(協会は2025年10月31日に「街路樹・都市樹木診断協会」へ名称を変更しています)
常に診断に関する最新の知見に触れ、診断業務に活かして、
より安心安全で環境と景観の維持、向上に繋がるご提案を出来ればと思います。

よくある質問

Q1. ベッコウタケとは、どんなキノコですか。

根株と根を腐らせる木材腐朽菌で、国総研の手引きでは、白色腐朽・心材腐朽を起こし、生きている樹木を倒伏させる腐朽力を持つとされています。今回倒れたサクラも、根元に発生痕があり、太い根はスポンジ状になって腐れがかなり進んでいました。

Q2. 葉が茂っている木でも、倒れることがあるのですか。

あります。一般の方の目線では、葉もしっかりついていて、危険な兆候を感じないことが多くあります。国総研の手引きでは、根株と根の腐朽・衰弱は、支持力の不足により倒伏の原因になるとされています。目に見えない根や幹の腐れで、倒木の危険性が知らないうちに高まります。

Q3. ベッコウタケが出た木の根は、残しておいてよいのですか。

国総研の手引きでは、病気にかかった植物体はそのままにすると伝染源になるので、早めに処置するとしています。同じ機関の街路樹再生の事例では、ベッコウタケが土壌中に残る可能性から、伐根後に土壌を入れ替えた例があります。今回は根の抜根処理まで行いました。

Q4. 今回、なぜカニクレーンを使ったのですか。

敷地内の駐車場の出入口に天井高の問題があり、ラフタークレーンやトラッククレーンを設置できる環境ではなかったためです。そこで今回の根の抜根処理は、カニクレーンを使っての作業となりました。先日の倒木対応に続いて、同じ現場に再度伺った作業です。

Q5. ベッコウタケが見つかったら、どんな診断をしますか。

東京都の街路樹診断等マニュアル(令和3年度)では、根株に腐朽力の強いベッコウタケが見られる場合は、必ず根株診断を行うとしています。根元に出ることが多いため、国総研の手引きでは、低木の寄せ植えや積もった落葉をかき分けて確認する必要があるとしています。

Q6. ベッコウタケは駆除できますか。キノコを取れば大丈夫ですか。

キノコは木材腐朽菌が胞子を散らすための器官で、腐朽は根株や根の中で進みます。キノコを取り除いても中の腐朽は止まらない、というのが私たちの現場での考えです。東京都のマニュアルは、根株にベッコウタケが見られたら必ず根株診断を行うとしており、腐朽が進んでいれば伐採や植え替えを判断します。

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

出典・参考情報

ベッコウタケを見つけたときの流れ 記録 外観診断と根株診断 経過観察か伐採植え替えかの判断 伐根と土の入れ替え 図
図: ベッコウタケを見つけたときの流れ(出典: 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」令和3年度 p.16・29、国土交通省 関東地方整備局 東京国道事務所「街路樹点検マニュアル」令和5年3月 p.10、国土技術政策総合研究所「街路樹再生の手引き」2-102 をもとに当社作成)

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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

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