目黒区自由が丘のマンションで、隣地の建築工事で根が切られた高木のスダジイを、樹勢の確認(樹木診断)とケーブリング支柱の点検で見守っている記録です。根が切られた木で何が起きうるのか、樹勢をどう見るのか、ケーブリングをなぜ点検するのかを、東京都と国の研究機関の資料をもとに書き添えます。
隣地の工事で根が切られたスダジイ
マンション植栽の高木スダジイの樹勢確認(樹木診断)とケーブリング支柱の点検のご依頼を頂きました。
一昨年隣地に建物の建築工事がありました。
工事に伴い隣地の敷地側に伸びた根が切られる事になった為、
このスダジイをそのまま存続できるか診断を行なっていました。
一昨年診断に基づいて、軽減剪定とケーブリング支柱を行いました。

図: このスダジイの経過(この記事の本文をもとに作成)
スダジイと、根が切られることの影響
スダジイは、樹高25mになる高木性の常緑樹で、福島・新潟以南の本州から沖縄にかけて分布し、萌芽力が高い木です(林野庁)。国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、スダジイを根が深く伸びる垂下根型(深根性)の樹種に挙げています。
東京都の街路樹診断等マニュアルは、根の働きを、樹体の支持、水分や養分の吸収と運搬、養分の貯蔵と説明し、工事のときに根を傷めることによる倒木のリスクを避けるための配慮事項を示しています。幹芯から1m以内は工事の範囲に含めないこと、掘削はできるだけ人力で行うこと、支持根が出てきたら切らずに保護すること、やむを得ず切るときは鋭利な刃物で切って防菌癒合材を塗ることなどです。国総研の手引きも、根の切断などから腐朽菌が入る場合が多く、工事で根系が傷むと腐朽が進んで倒伏につながるおそれがあるとしています。

重機で掘る場合と人の手で掘る場合(イラスト)
- 高木樹木 樹木医診断
- 高木樹木 樹木医診断
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軽減剪定とケーブリング支柱
東京都のマニュアルは、風による枝折れや倒木の危険を避けるために樹冠を小さくする剪定を「風圧軽減剪定」と呼び、根の張り具合に対して樹冠が大きい場合などに、切返し剪定による樹冠の縮小や、枝抜き剪定による込み合った枝の間引きを行うとしています。いきなり強剪定で詰めず、数年かけて計画的に縮めることも求めています。
ケーブリング支柱は、樹木の倒木や枝折れ予防やそのリスクの軽減になります。
使用している資材は、コブラケーブリングとダイナミックケーブリングの2種を使用しました。
耐久伸縮性のあるロープと緩衝材の効果で強風時などの瞬間的にかかる強い負荷を低減します。
コブラのケーブリングは、金具を使わず、ポリプロピレン製の中空のロープで幹や枝どうしを結ぶ方法で、ショックアブソーバー(緩衝材)が突風などの瞬間的な負荷をやわらげます。仕組みと使い分けは「コブラ・ツリーケーブリングとは──金具を使わず樹上で幹と枝を結ぶ、樹木のロープ支柱の仕組みと使い分けを樹木医が解説」で説明しています。
- 樹木ケーブリング支柱
- 樹木ケーブリング支柱
- 樹木ケーブリング支柱
根の切断から時間をおいて、樹勢とケーブリングを点検
今回は、その後の根の切断による樹勢の変化が無いかと、ケーブリングの点検を行いました。
幸い樹勢も安定しケーブリングにも問題ありませんでした。
樹勢は7つの視点で見る
東京都の街路樹診断等マニュアルは、樹勢を次の7つの視点で見て、生育の状態を5段階で評価します。

樹勢の7つの視点(イラスト)
| 視点 | 見るところ |
|---|---|
| 枝の伸長量 | その年に伸びた枝の長さ |
| 梢や上枝の先端の枯損 | 木のてっぺんや上の枝の先が枯れていないか |
| 下枝の先端の枯損 | 下の枝の先が枯れていないか |
| 枝や幹の枯損、損傷 | 枯れた枝や、幹・枝の傷 |
| 剪定後の巻き込み | 切り口をふさぐ組織の育ち方 |
| 葉の大きさ | 同じ樹種の健全な木と比べた葉の大きさ |
| 葉の色 | 同じ樹種の健全な木と比べた葉の色 |
出典: 東京都建設局「令和三年度街路樹診断等マニュアル」p.18〜19 表Ⅲ-2・2(見るところの列は当社の言い換え)
ケーブリングは、付けたあとの点検が欠かせない
国総研の手引きは、成長後の樹体に設置した支柱やケーブリングについて、材の欠損や緩み、固定部位への食い込みがないかを定期的に確認して調整するよう求めています。ケーブリングが緩んでいると枝折れによる落枝につながる可能性があり、調節せず放置すると樹体に食い込んで折損する場合があるためです。ケーブリングは弱点を根本的に解消するものではないので、観察を続けることが重要だともしています。
- 樹木医診断
- ロープワーク ツリークライミング
- 樹木医診断
国際樹木学会(ISA)の一般向けの資料も、工事で傷んだ木の衰えが目に見えるまでには年単位でかかることが多いとして、見守りを続けることを勧めています。
今後も継続的に経過観察を実施いたします。
引き続きよろしくお願いいたします。
株式会社トシ・ランドスケープ
まとめ
隣地の建築工事で根が切られることになったスダジイを、一昨年に診断し、軽減剪定とケーブリング支柱を行いました。今回は、根の切断による樹勢の変化とケーブリングを点検し、樹勢は安定、ケーブリングにも問題はありませんでした。今後も継続して経過観察を行います。
よくある質問
Q1. 工事で根が切られた木は、どうなりますか。
根は樹体の支持と水分・養分の吸収を担うため、切られると支える力が落ちたり、切り口から腐朽菌が入ったりするおそれがあります。この記事のスダジイでは、診断のうえ軽減剪定とケーブリング支柱を行い、経過を見ています。
Q2. ケーブリング支柱は、付けたら終わりですか。
終わりではありません。国総研の手引きは、ケーブリングの欠損や緩み、樹体への食い込みを定期的に確認して調整するよう求めています。
出典・参考情報
・東京都建設局「令和三年度街路樹診断等マニュアル」p.18〜19・69・73・96〜102
・国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料 第1059号、2019年2月)p.1-23・1-40・1-87・1-91・1-123
・林野庁「国有林野事業における天然力を活用した施業実行マニュアル」(平成30年3月)p.111
・International Society of Arboriculture「Treatment of Trees Damaged by Construction」(2021年)
高木の剪定や伐採作業の施工実績 一例
■銀杏岡八幡神社様 御神木剪定 東京都台東区浅草橋
■聖公会神学院様 世田谷区用賀
■オオシマザクラ 剪定・土壌改良 大田区中央
■保存樹木クスノキ 剪定作業 板橋区
■東京アメリカンクラブ様 エントランス高木剪定 港区麻布台
■銀杏岡八幡神社様 樹木伐採 東京都台東区
■大田区マンション 特殊伐採
■渋谷区恵比寿の個人邸 高木のサクラをロープワークで剪定──屋根に張り出した枝の吊り下ろしと、樹上と地上をつなぐ Bluetooth
■世田谷区北烏山 マンション・集合住宅 高木樹木伐採
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・区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都
・世田谷区個人邸 老木スダジイの伐採
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