銀杏岡八幡神社様 御神木剪定 東京都台東区浅草橋

御神木イチョウ剪定 ツリークライミング

銀杏岡八幡神社様(いちょうがおかはちまんじんじゃ)
台東区の浅草橋駅からほど近い商店街の中に鎮座しています。

この記事は、台東区浅草橋の銀杏岡八幡神社で行った、イチョウなど御神木の高木剪定の記録です。ロープワークを使った理由、社名の由来の銀杏の言い伝えと神社の歴史、イチョウの剪定の時期と考え方を、資料をもとに説明します。

先に答え

  • 銀杏岡八幡神社(台東区浅草橋1丁目)で、イチョウなど御神木の高木剪定を、ロープワークで樹上に入って行いました。建物が近く、高所作業車などの車両を据える場所がないためです。
  • 方針は事前の打ち合わせでまとめ、高さはこれ以上大きくせず、中段から下枝にかけては伸びやかな枝ぶりにしていくことにしました。
  • 東京都神社庁と神社の公式サイトによれば、創祀は康平5年(1062)と伝えられ、源義家公が丘に挿した銀杏の枝が大きく茂ったという言い伝えがあります。公式サイトはこの言い伝えを社名の起こりとしています。
  • 東京都の街路樹維持管理計画書では、イチョウの剪定時期は冬期の12月〜2月頃で、少なくなりがちな下方の枝は意識的に残すとされています。

銀杏岡八幡神社──銀杏などの木々に囲まれた境内と、社名の由来

大きな銀杏(イチョウ)などの樹木に囲まれて駅や大通りに近い環境とは思えないくらい
静かで落ち着いた素敵な雰囲気です。紅葉の時期のイチョウの美しさは圧巻です。

神社の公式サイトのよくある質問では、境内のイチョウの見頃は「例年12月10日前後」と案内されています。交通案内によると、JR総武線・都営浅草線の浅草橋駅から徒歩2分の場所です。

公式サイトの由緒によれば、創建は平安時代中期の康平5年(1062)と伝えられています。陸奥(今の東北地方)の鎮定を朝廷から命じられた源頼義公とその子の義家公が、この地で休んだときのことです。隅田川の川上から流れてきた一枝を拾い上げると、それは銀杏の枝でした。義家公は戦勝を願ってこの枝を丘に挿し、平定を終えた帰りに再び立ち寄ると、枝葉が大きく茂っていたので、銀杏の木の元に祠を建てて八幡大神を勧請したと伝えられています。公式サイトはこれを「当社の創めであり、社名の起こり」としています。

東京都神社庁の紹介も、同じ康平5年(1062)の創祀として、源義家公と銀杏の枝の言い伝えを伝えています。義家公が挿した銀杏はその後大樹となり、隅田川を上り下りする舟や街道を行き来する人の目印になって、この地は「八幡塚」とも「銀杏塚」とも呼ばれたと、公式サイトにあります。

江戸の福井町から、今の浅草橋へ

主な出来事を、公式サイトから年の順に抜き出します。

年 神社の公式サイトにあること
康平5年(1062) 創祀と伝えられる(東京都神社庁の紹介も同じ年)
江戸時代 この地が越前福井藩の下屋敷となり、八幡様は藩の「屋敷の神」として祀られる
享保10年(1725)・11年(1726) 下屋敷が町民に払い下げられ、翌年に町屋が開かれる(のちに福井町と名付けられる)
延享2年(1745)9月14日 義家公お手植えと伝わる大銀杏が台風で折れ、6mほどが残る
文化3年(1806) 文化の大火で、残っていた大銀杏も焼失する
昭和9年(1934) 関東大震災の復興計画により、福井町1・2丁目が浅草橋へ町名を変える
昭和39年(1964) 住居表示の実施で、福井町3丁目も浅草橋1丁目に編入される

(出典: 銀杏岡八幡神社 公式サイト「神社の歴史・由緒」「氏子各町について」)

言い伝えの大銀杏は台風と大火で失われましたが、公式サイトのトップページは、今も「境内の銀杏を象徴に、浅草橋のまちと共に歩み」と記しています。

御祭神と例大祭

御祭神は、誉田別命(ほんだわけのみこと)と武内宿禰命の二柱で、公式サイトの御祭神のページは、誉田別命を第十五代応神天皇の御名と説明しています(表記は資料により異なり、御祭神のページは「竹内宿禰命」、東京都神社庁は「誉田別皇命」「武内宿祢命」と書いています)。

例大祭は、公式サイトの例大祭と本社神輿のページによると、現在は6月第1土・日曜日もしくは5月最終の土・日曜日に行われ、本社神輿が渡御する本祭りと、町神輿の連合渡御の陰祭りが1年ごとに交互に巡ります。今の本社神輿は昭和27年(1952)に造られ、昭和32年(1957)の社殿の戦後復興にあわせて奉納されたものです。

今回のご依頼──御神木の高木剪定と、景観の方針

今回は高木の剪定適期の時期になるため、
イチョウなど神社内の御神木の高木剪定のご依頼いただきました。

今後の神社内の景観についても事前にしっかりとお打ち合わせさせて頂きました。

高さはこれ以上大きくはしないようにしつつも中段から下枝にかけてはイチョウ同士が
折り重なるように伸びやかな枝ぶりとなるように手入れをしていく方針でまとまりました。

御神木イチョウの剪定

御神木イチョウの剪定

しっかりとした景観に対する方向性が決まると私たちも適切な手法での管理が可能になります。

当社はこの神社で、先に境内の樹木の樹木医診断をご相談いただき(「銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断」)、診断で根元の腐れが確認されたキリの伐採を担当させていただきました(「銀杏岡八幡神社様 樹木伐採 東京都台東区」)。今回の御神木の剪定は、その後にご依頼いただいたものです。

 

高所作業車が入らない境内で、ロープワークで樹上へ

境内や近隣の建物に近接している点や、高所作業車などの車両が設置できるスペースがない為、
ツリークライミングロープワーク
の技術で樹木にアクセスし剪定を行いました。
建物や通路に傷をつけないように、コンパネや毛布などを使用し十分な養生を行います。
駅に近いこともあり、参拝に訪れる方も大変多く安全管理も徹底して対応いたしました。

御神木イチョウの剪定

御神木イチョウの剪定

社寺の御神木の剪定で気をつけていること

国総研(国土技術政策総合研究所)の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、景観法の景観重要樹木のための資料で、神社の木にそのまま当てはめるものではありませんが、作業の留意事項として、保全の目標像を十分に確かめること、作業する人と樹木の周辺を利用する住民などの安全を確保することを挙げています(p.200 表5-1)。今回の事前の打ち合わせや、参拝の方の多い境内での養生と安全管理は、この留意事項とも重なります。

御神木イチョウ剪定 ツリークライミング

御神木イチョウ剪定 ツリークライミング

同じ台東区の寛永寺の境内では、ロープワークと高所作業車を併用してクスノキを剪定しました(「上野寛永寺・輪王寺 樹木医によるクスノキ剪定」)。港区赤坂の豊川稲荷東京別院でも、高所作業車とクライマーの両方で境内のケヤキなどを剪定しています(「港区赤坂 豊川稲荷・東京別院様 ケヤキなどの高木剪定」)。

イチョウ ツリークライミング 御神木剪定 銀杏岡八幡神社

イチョウという木──「生きている化石」と呼ばれる都の木

イチョウは、イチョウ科イチョウ属の落葉高木です。国総研の「巨樹・老樹の保全対策事例集」は、大きなものでは樹高30〜45m程度になり、萌芽力があり剪定にも強いと説明しています。

御神木イチョウの剪定

御神木イチョウの剪定

項目 資料にあること
分類 イチョウ科イチョウ属の落葉高木、雌雄異株
性質 陽樹で成長が早い、土壌を選ばずよく生育する、萌芽力があり剪定にも強い、大気汚染にも耐える
根 垂直方向は深根型、根系の支持力は大、根回しによる発根性は不良
来歴 約2億年前のジュラ紀の地層から化石が見つかり「生きている化石」とされる

(出典: 国土技術政策総合研究所「巨樹・老樹の保全対策事例集」(国総研資料 第566号、2010年)のイチョウの項)

東京都は昭和41年(1966年)、都民の投票でイチョウを都の木に決め、「古代植物の生き残りといわれ」「公害や火にも強いため、街路樹としても使われています」と紹介しています。

当社では、区の保存樹木のイチョウにもロープで登り、地上から見えない高い所の枝や幹を確かめる高所の外観診断を行っています(「区保存樹木イチョウ 樹木医・高所外観診断 東京都」)。

イチョウの剪定の時期と強さ──東京都の計画書と国の手引きから

東京都建設局の「街路樹維持管理計画書」(令和3年12月)は、イチョウの剪定時期を冬期の12月〜2月頃としています。落葉樹の骨格をつくる基本剪定は、剪定のダメージを最小限にとどめるため、樹木の休眠期(晩秋〜早春)に行うとあります。国総研の「景観重要樹木の保全対策の手引き」も、基本剪定は休眠期の12〜2月頃としています。

計画書のイチョウの頁には、今回の方針と重なる記述があります。下方の枝は少なくなりがちなので意識的に残し、良好な下枝があれば樹冠を構成する枝として育てること、小さくするときは頂部優勢を意識して上の方の枝を薄くし、下の枝を切り過ぎないことです。街路樹のための資料で、神社の木にそのまま当てはめるものではありませんが、イチョウの剪定の考え方として参考になります。

イチョウ 枝 切断 作業スタッフ 御神木剪定 浅草橋

項目 計画書のイチョウの頁にあること 頁
剪定の時期 冬期 12月〜2月頃 p.26
枝先 枝先にコブをつくらないよう、長く伸びた枝を短い枝に切り返して樹形を作る p.26
下方の枝 少なくなりがちなので意識的に残し、良好な下枝は樹冠を構成する枝として育てる p.26
小さくするとき 頂部優勢を意識して上方の枝の密度を薄くし、下方の枝の切り過ぎに注意する p.27

(出典: 東京都建設局 公園緑地部「街路樹維持管理計画書」(令和3年12月)p.1・p.26・p.27、国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料 第565号、2010年)p.202)

国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、イチョウの図で、剪定の間隔を空けて一度に切る量を増やすほど、ひこばえの大量発生、さらに枯れ枝や腐朽の発生につながることを示しています(p.1-47)。計画書の剪定の型は「東京都の街路樹維持管理計画書とは──剪定の基本と、樹種別の4つのタイプ(維持・縮小・拡大・再生)を樹木医が解説」で説明しています。

イチョウ 樹形 自然樹形 剪定こぶ 刈込 比較 図解

同じイチョウの四つの形。左から、伸び伸び育った自然樹形、それを相似形に小さくした形、切り詰めを重ねた人工的な形(枝先にこぶができる)、刈り込んだ人工的な形(当社のイラスト)

剪定のときに樹木医が見ていること

国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、剪定作業の際には、地上の点検では確認できない樹体の異状などの確認を樹上からも行うとしています。同じ頁は、定期的な強剪定が樹勢の衰退や腐朽菌の侵入、根系の衰退の要因になることも挙げています(p.1-79)。

イチョウ 樹上から 境内 御神木剪定 銀杏岡八幡神社 台東区

切る位置について、東京都の計画書は、枝の付け根の膨らみ(ブランチカラー)を残してその直前で切ることを基本に挙げています(p.4)。

境内の木では足元も見ます。参拝の方が歩く所で土が踏み固められる踏圧については、この神社の診断の記録「銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断」で説明しています。御神木の状態を詳しく確かめたいときは、剪定とは別に樹木診断を行います。

御神木 外観診断 樹木医 双眼鏡 参道 境内

御神木の外観診断のイメージ。柵の外の参道から双眼鏡で枝の付け根を見上げ、参道の土の踏み固めも確かめる(当社のイラスト)

まとめ

銀杏岡八幡神社は、岡に挿した銀杏の枝が茂ったという康平5年(1062)の創祀の言い伝えを持つ、浅草橋の鎮守です。今回は、高さを抑えつつ中段から下枝を伸びやかにする方針を事前の打ち合わせでまとめ、高所作業車の入らない境内で、ロープワークで樹上に入って剪定しました。

御神木イチョウ剪定完了後

御神木イチョウ剪定完了後

神社関係者の皆様、参拝にいらっしゃる皆様にとって素晴らしい空間となるように
今後もきめ細やかな対応に心がけてまいります。

ご依頼を頂きありがとうございました。

よくある質問(Q&A)

Q1. 銀杏岡八幡神社の御神木の剪定は、どのように行ったのですか?

A. ロープワーク(ツリークライミングの技術)で樹木に登り、樹上から剪定しました。境内や近隣の建物が近く、高所作業車などの車両を据えるスペースがないためです。建物や通路はコンパネや毛布で養生し、参拝の方が多いので安全管理を徹底して作業しました。

Q2. 銀杏岡八幡神社の社名の由来は何ですか?

A. 創祀の言い伝えにある銀杏です。東京都神社庁と神社の公式サイトによれば、康平5年(1062)、源義家公が川上から流れてきた銀杏の枝を丘の上に挿して祈り、奥州を平定して戻ると銀杏が大きく茂っていたので八幡宮を勧請したと伝えられています。公式サイトはこれを社名の起こりとしています。

Q3. 銀杏岡八幡神社のイチョウの見頃はいつですか?

A. 神社の公式サイトのよくある質問では、例年12月10日前後が見頃と案内されています。境内はJR総武線・都営浅草線の浅草橋駅から徒歩2分で、商店街の中にありながら、大きなイチョウなどの樹木に囲まれています。

Q4. イチョウの剪定の時期はいつですか?

A. 東京都建設局の街路樹維持管理計画書は、イチョウの剪定時期を冬期の12月〜2月頃としています。落葉樹の骨格をつくる剪定は、剪定のダメージを最小限にとどめるため、樹木の休眠期(晩秋〜早春)に行うのが基本です。国総研の景観重要樹木の保全対策の手引きも、基本剪定は休眠期の12〜2月頃としています。

Q5. イチョウの下枝は切ってしまってよいのですか?

A. 良好な下枝は、切らずに残すのが基本です。東京都の計画書は、イチョウの下方の枝は少なくなりがちなので意識的に残し、良好な下枝があれば樹冠を構成する枝として育てるとしています。今回も、高さはこれ以上大きくしないようにしつつ、中段から下枝にかけては伸びやかな枝ぶりとなるよう手入れする方針でまとまりました。

Q6. 神社の御神木を剪定するとき、何に気をつけますか?

A. 剪定の前に、どのような景観にしていくかを神社の方と打ち合わせ、方針を決めておくことです。方向性が決まると、適切な手法での管理ができるようになります。作業中は建物や通路の養生と参拝の方の安全に気を配ります。国総研の景観重要樹木の保全対策の手引きも、目標像の確認と周辺を利用する人の安全の確保を挙げています。

株式会社トシ・ランドスケープ

 

銀杏岡八幡神社様(Facebookリンク)は、
昨年2021年に境内整備事業も進み、照明も素敵なものになってらっしゃいます。
是非近くにいらっしゃった際にはお立ち寄りください。

 

高木の剪定や伐採作業の施工実績 一例

■聖公会神学院様 世田谷区用賀
■オオシマザクラ 剪定・土壌改良 大田区中央
■保存樹木クスノキ 剪定作業 板橋区
■東京アメリカンクラブ様 エントランス高木剪定 港区麻布台
■銀杏岡八幡神社様 樹木伐採 東京都台東区
■大田区マンション 特殊伐採
■渋谷区恵比寿の個人邸 高木のサクラをロープワークで剪定──屋根に張り出した枝の吊り下ろしと、樹上と地上をつなぐ Bluetooth
■世田谷区北烏山 マンション・集合住宅 高木樹木伐採

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※ 「ツリークライミング」は、株式会社ツリークライミングワールドの登録商標です。当社の記事では、ロープとハーネスで樹木に登って作業する技術を指す言葉として使っています。

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