割竹挿入法(割竹挿入縦穴式土壌改良法)は、樹冠の下に掘った縦穴に、縦に割って節を抜いた竹を立て、堆肥などを混ぜた土で埋め戻す土壌改良です。竹づくりから埋め戻しまでの7つの工程を1工程ずつ図にし、当社の現場での目安、効果の確かめ方、水圧穿孔法やエアレーション法との比較を、樹木医の立場からまとめました。
先に答え
- 割竹挿入法の工程は7つです。割竹をつくる → 穴の位置を決める → ダブルスコップで縦穴を掘る → 穴の中の根を鋏で切り戻す → 割竹を立てる → 資材を混ぜて埋め戻す → 翌年以降は場所を変えて続ける、という流れです。
- 当社の現場での目安は、マダケを穴の深さに合わせた長さに切って半割りにし、節を抜いて元の筒の形に合わせ、縄で2か所を結びます。縦穴はダブルスコップで60〜80cmほど、穴は樹冠の外周(枝先の真下)の付近に多く配り、毎年少しずつ場所を変えます。
- 竹は2〜3年で朽ちて土に戻り、その筒の中に細い根が集まっていた現場があります。1回で終わる方法ではなく、年に1回、場所を変えて続ける方法です。
- 割竹挿入法の位置づけ(国の手引きでの扱い)、向く現場と向かない現場、よくある誤解は、柱の記事「割竹挿入法とは」で書いています。この記事は、その「やり方」の部分を工程ごとに詳しくしたものです。
割竹挿入法とは──根の周りに、空気と水の通り道をつくる
すでに木が育っている場所では、根を切らずに土を大きく掘り返すことはできません。割竹挿入法は、根の間の土に細い縦穴を点々と掘り、そこに空気と水の通り道になる竹の筒と、堆肥などの資材を混ぜた土を入れる方法です。国土技術政策総合研究所(国総研)の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、ダブルスコップで掘った縦穴への堆肥入り割竹の挿入を、人の手でできる簡易な土壌改良の一つに挙げています。割竹挿入縦穴式土壌改良法は、堀大才氏(NPO法人樹木生態研究会 最高顧問)が考えた方法です。
なぜ土に空気と水の通り道が要るのかは、連載の「土が原因で樹木が弱るとき」で、踏み固めと根の関係から書いています。ここでは、やり方に絞ります。
工程に入る前に──土を調べ、時期を決める
割竹挿入法は、土が固く締まって根が伸びにくい場所に向く方法です。水が抜けない土や、酸度が偏った土では、先に排水や中和を考えます。当社では、土に手を入れる前に、土の硬さ(長谷川式土壌貫入計)と水はけ(長谷川式簡易現場透水試験器)を調べ、その結果から工法を選んでいます。調査の結果の読み方は「土壌調査の結果の読み方」、工法の選び方は「樹木の土壌改良とは」で書いています。
時期は、当社では樹木の休眠期にあたる12〜3月を基本にし、年に1回行っています。根を切る作業なので、樹木の活動が落ちている冬のうちに済ませ、春の芽吹きに間に合わせたいためで、春先の施工まではよいと考えています。国総研の手引きが示す縦穴の簡易改良の実施時期の例も12〜2月、年1回です。当社の記事には、春に施工した現場(東京都内の個人邸)もあります。
割竹挿入法の7つの工程
7つの工程を、先に一覧にします。「当社の目安」は、当社の現場で続けてきたやり方で、国総研の手引きの例とは数値が異なります。
| 工程 | すること | 当社の現場での目安 | 国総研の手引きの例(表5-11 縦孔の簡易改良) |
|---|---|---|---|
| 1 割竹をつくる | 竹を縦に割り、節を抜き、筒の形に合わせて縄で結ぶ | マダケ/長さは穴の深さに合わせる/半割りを合わせて筒/縄は2か所 | 長さ1m程度の竹を半割りし、節を除いて組み合わせ、中に炭やもみ殻を詰める |
| 2 穴の位置を決める | 太い根を避け、根が多い所に配る/前回の位置を避ける | 樹冠の外周(枝先の真下)の付近に多く/毎年少しずつ場所を変える | (施肥・部分的な土壌改良は、樹冠の外周部の地面に輪状・放射状・穴で施す〈表5-11・5-18〉) |
| 3 縦穴を掘る | ダブルスコップで細い縦穴を掘る/水はけと土の様子を見る | 深さ60〜80cmほど/水が溜まらないか、土の層・硬さ・根の深さを見る | 直径20cm程度・深さ1m程度/掘れない場合は1m以内でできる限り深く/水が溜まらないか透水性を確認 |
| 4 根を切り戻す | 掘ったときに切れた根を鋏で切り戻す | ちぎれた根の先を剪定鋏で切り直す/太い根を切ったときだけ切り口に殺菌剤 | (部分的な土壌改良で切断した根の傷口には殺菌剤等を塗布〈表5-18〉) |
| 5 割竹を立てる | 筒を穴の底まで立てる | 上端は地面から少し出しておく | 縦穴の中心に挿す/夏の乾燥時期にはここから灌水 |
| 6 埋め戻す | 資材を掘った土と混ぜて戻す | 完熟堆肥・パーライト・炭・緩効性化成肥料を掘った土と混ぜる/土の状態でパーライトの種類を変える | 周りを完熟堆肥で埋め戻す |
| 7 その後 | 経過を見て、翌年は場所を変える | 竹は2〜3年で朽ちる/夏の乾燥時はお客様に灌水をお願いする | 12〜2月、年1回 |
出典: 国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料第565号)p.215 表5-11、p.227 表5-18。当社の目安は当社の現場の記録と、2026年10月の樹木医 中村雅俊への聞き取り
工程1 割竹をつくる──マダケを縦に割り、節を抜いて結び直す
竹は、縦に割って中の節(仕切り)を抜くと、上から下まで通った筒になります。この筒が、土の中で空気と水の通り道になります。当社では主にマダケ(真竹)を使い、長さは掘る穴の深さに合わせて切ります。縦に半割りにし、節の仕切りを棒で突いて抜き、2枚を元の筒の形に合わせて、シュロ縄で上と下の2か所を結びます。これで割竹の完成です。国総研の手引きの例では、長さ1m程度の竹を半割りにして節を除いて組み合わせ、内部に通気性のよい炭やもみ殻を詰めるとしています。当社では、資材は竹の中ではなく、竹の周りの土に混ぜて入れています(工程6)。
竹を縦に割るときは、小口に鉈(なた)を当てて木づちで打ち、割れ目を下へ進めます。竹は縦に割れやすい繊維なので、まっすぐ割れます。

工程1 割竹をつくる(イラスト)。マダケを縦に半割りにし、節の仕切りを抜いて元の筒の形に合わせ、縄で上下2か所を結ぶ

竹を縦に割って割竹をつくる(当社撮影)
工程2 穴の位置を決める──樹冠の外周の下に多く、前回と場所を変える
穴は、どこに掘ってもよいわけではありません。当社の現場での目安として、穴は樹冠の外周(枝先の真下)の付近に多く配ります。国総研の手引きも、施肥や部分的な土壌改良は、樹冠の外周部の地面に輪状の溝・放射状の溝・穴を掘って施すとしています。幹のすぐそばは太い根が集まっていて、掘ると根を傷めやすいので避けます。
もう一つ大事なのは、前回の位置を避けることです。当社では毎年少しずつ場所を変えて施工しているので、前の年の竹の上端が地面に残っていれば、その間に新しい穴を取ります。1本あたりの穴の数は、木の大きさと掘れる場所で決めます。学校の植升のクスノキでは、1桝あたり16か所を掘った記録があります(クスノキの樹勢回復作業)。

工程2 穴の位置を決める(イラスト)。樹冠の外周の真下(点線の輪)の付近に今年の穴を配り、前回の竹の上端が残る所は避ける

施工のあと。竹の上端が地面に点々と残り、翌年はこの間に新しい穴を取る(当社撮影)
工程3 ダブルスコップで縦穴を掘る──60〜80cm、掘りながら土を見る
縦穴は、ダブルスコップ(2本の柄の先に細長い刃が向かい合って付いた穴掘り道具)で掘ります。細い穴を深く掘れるので、根を広く切らずに済みます。当社の現場では60〜80cmほどの深さまで掘っています。国総研の手引きの例は直径20cm程度・深さ1m程度で、深さ1mまで掘れない場合は1m以内でできる限り深くするとしています。学校のクスノキでは、根を傷めないように慎重に80cmまで掘りました。
掘るときは、土を見ます。掘った穴に水が溜まらないか(水はけ)、土の層がどう重なっているか、どのくらいの深さまで硬いか、根がどの深さに集まっているか。当社では、この様子を見て工程6の資材の配合を決めています。穴に水が溜まるようなら、割竹を挿すより先に排水を考える現場です。

工程3 ダブルスコップで縦穴を掘る(イラスト)。当社の現場では60〜80cmほど。太い根は避け、掘った穴の水はけと土の層を見る

ダブルスコップで縦穴を掘る(当社撮影)
工程4 穴の中の根を鋏で切り戻す
細い縦穴でも、根は切れます。掘ったときに引きちぎれた根は、先がささくれたままになるので、当社では、穴の壁から出た根の先を剪定鋏で切り直しています(オオシマザクラの記事にも「掘削した際の根は鋏で綺麗に切り戻します」と書きました)。国総研の手引きは、部分的な土壌改良で根系を過度に傷つけないようにするとともに、掘削時に切断してしまった根系の傷口には殺菌剤等を塗布する、としています。当社では、細い根は切り戻すだけにし、太い根を切らざるを得なかったときだけ、切り口に殺菌剤を塗っています。太い根に当たったときは、できるだけ切らずに、穴の位置をずらします。

工程4 穴の中の根を鋏で切り戻す(イラスト)。ちぎれた根の先を、壁の近くで切り直す。太い根は切らない

縦穴の中に張り出した細い根と、切り戻しに使う剪定鋏(当社撮影)
工程5 割竹を縦穴に立てる──上端は地面から少し出す
穴の底まで届く長さの割竹を、穴の中心に立てます。当社では、竹の上端を地面から少し出しておきます。翌年に前回の位置が分かること、筒の口から空気が入ることが理由です。国総研の手引きは、夏の乾燥時期にはこの穴から灌水するとしていて、口が出ていればそこから水も入れられます。

工程5 割竹を縦穴に立てる(イラスト)。筒は穴の底まで届く長さにし、上端は地面から少し出す

縦穴に立てた割竹の周りに、パーライトなどを混ぜた土を手で戻す(当社撮影)
工程6 資材を混ぜて埋め戻す──完熟堆肥・パーライト・炭・緩効性肥料
竹の周りは、掘った土をそのまま戻すのではなく、資材を混ぜて戻します。当社の基本は、完熟堆肥・パーライト・炭・緩効性化成肥料の4種を、掘り上げた土と混ぜることです。国総研の手引きの例は、周りを完熟堆肥で埋め戻すとし、部分的な土壌改良では、堆肥などの有機質資材やパーライトなどの無機質資材に肥料を混合した改良土壌を埋め戻すとしています。
パーライトは、工程3で見た土の状態で種類を変えます。東京都建設局の「街路樹診断等マニュアル」の土壌改良材の表では、黒曜石パーライトは過湿に、真珠岩パーライトは過乾に「特に有効」の印が付いています。当社の目安として、固く締まって水はけの悪い土では黒曜石パーライトを、乾きやすい土(屋上の人工地盤や植升など)では真珠岩パーライトを多めにしています。炭は、同じ表で過乾・過湿のどちらにも「有効」です。資材の配合を現場ごとに変えている理由は、ここにあります。
堆肥は「完熟」のものを使います。国総研の「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」は、土壌改良材で未熟な堆肥を使った場合には樹木が生育不良となることがあると注意しています。長野県の資料によると、炭素の割合が高い有機物を入れると、微生物が分解するときに土の窒素を消費して植物の窒素が不足する「窒素飢餓」が起きるおそれがあり、分解が急に進むとアンモニアなどのガスが出ることもあるとされています。当社の現場でも、完熟をうたう市販の堆肥に品質のばらつきがあることは経験していて、水はけの悪い場所に未熟な堆肥を混ぜない、というのが当社の考えです。肥料は、国総研の手引きが多量に一度に施すと生育に悪影響を及ぼす場合があるとしているとおり、木の大きさに応じた量にします。

工程6 資材を混ぜて埋め戻す(イラスト)。掘った土に完熟堆肥・パーライト・炭・緩効性化成肥料を混ぜ、竹の周りに戻す

埋め戻しに使う資材。パーライト・完熟堆肥・炭(当社撮影)
工程7 その後──2〜3年で竹が朽ち、筒に細い根が集まる
施工はここまでですが、割竹挿入法は、その後に続きがあります。当社の現場では、挿した竹は2〜3年で朽ちて土に戻ります。屋上テラスの人工地盤のサクラでは、2年前に挿した割竹の上部が朽ちて筒状になり、筒の中にサクラの細かい根が集まっていました(桜 樹木医による土壌改良)。台東区のマンションのサクラでも、数年前の竹が朽ちて筒状になり、内部に細根が集まっていました。竹が土に戻るので、人工物が土の中に残りません。
だから、翌年は場所を変えて、また掘ります。夏の乾燥する時期には、お客様に灌水をお願いしています。学校のクスノキでは、それまで雨水任せだったので、ホースを常設していただき、夏場を中心に水やりをお願いしました。施工の後に何を見るかは「樹木の土壌改良とは」の「施工の後の見守り」に書きました。

工程7 その後の姿(イラスト)。左は施工の直後、右は2〜3年後。朽ちた筒に細い根が集まり、今年は場所を変えて新しい竹を挿す

2年前に挿した割竹。上部が朽ちて筒状になり、中に細かい根が集まっていた(当社撮影)
割竹挿入法の効果──何が起きるのか、どう確かめるか
効果のもとは、2つです。一つは、縦穴と竹の筒が、固く締まった土に空気と水の通り道をつくること。国総研の手引きは、堅く締まった土では根が伸びにくく、通気性や透水性が悪いため生理的な障害を受けやすいとしています。もう一つは、竹の周りに戻す堆肥や肥料が、根のある深さに直接届くことです。筒の中に細根が集まっていた観察は、根がその通り道へ伸びてきたことを示しています。
確かめ方
- 土の硬さと水はけを、施工の前後で測る。当社では長谷川式土壌貫入計と簡易現場透水試験器で調べています。国総研の手引きは、山中式土壌硬度計で15mm程度を超えると根の発育に影響が出始め、25mm以上ではほぼ完全に阻害されるとしています。
- 翌年以降に掘ったとき、前の竹の筒の中を見る。朽ちた筒に細根が集まっているかどうかが、いちばん分かりやすい手がかりです。
- 枝先と葉を見る。東京都のマニュアルは、枝の伸び、梢や枝先の枯れ、葉の大きさと色で樹勢を評価し、周りの同じ樹種と比べるとしています。
当社の記録にある変化
神社の御神木クスノキでは、剪定と割竹挿入法を続け、3年目・5年目の記録に「樹勢を含めて徐々に成果が出てきている」と書きました(御神木クスノキの剪定と土壌改良)。屋上テラスのサクラでは、お客様から花つきが良くなったというお言葉をいただきました。東京都内の個人邸では、ごま色斑点病で弱っていたカナメモチが元気な葉を茂らせるようになりました。ただし、どれも剪定・施肥・落ち葉の清掃・薬剤散布などを組み合わせた管理全体の結果で、割竹挿入法だけの効果ではありません。
限界
- 割竹挿入法で土がどれだけ良くなるかを数値で示した資料は、当社が確かめた国総研の手引きと東京都のマニュアルには見つかっていません。上の観察は個々の現場の記録です。
- 当社の現場での考えとして、木が大きいほど、割竹挿入法だけでは効きにくく、2〜3年ごとに続けることが要ります。1本の木に対して穴は点なので、土を全部入れ替えるような方法ではありません。
- 土はまた固まります。国総研の手引きは、植栽地の多くは次第に固結し、特にマサ土や粘土は耕耘しても再び固結するとしています。踏まれる場所では、踏圧を防ぐ対策(樹木保護盤・柵・地被植物)もあわせて考えます。
- 孔をあけて資材を入れても樹勢が戻らない例もあります。国総研の事例集には、ウォータージェットで孔を掘って堆肥と炭を入れたビャクシンで、土壌改良の効果が認められないと評価された事例が載っています。
他の土壌改良との比較──割竹・水圧穿孔・エアレーション・エアスコップ・耕耘
すでに木が育っている場所で、根の周りの土を直す方法を並べます。当社が使い分けている3つの工法のほか、圧縮エア式スコップ(エアスコップ)と表層耕耘も加えました。
| 方法 | 土に孔をあける力 | 入れるもの | 向く場所 | 根への影響 | 続け方・注意 |
|---|---|---|---|---|---|
| 割竹挿入法 | 人の力(ダブルスコップで縦穴) | 割竹と、堆肥・パーライト・炭・肥料を混ぜた土 | スコップで掘れる場所/狭い植栽地でも点で施工できる | 穴の分だけ細根を切る(鋏で切り戻す) | 竹は2〜3年で朽ちる/年1回、場所を変えて続ける/人工物が残らない |
| 水圧穿孔法 | 水圧(背負式動噴とポアノズル) | 液体肥料を混ぜた水/あけた穴に細い篠竹を挿すこともある | 根が張ってスコップが入らない場所/掘るスペースがない場所 | ノズルを差し込むだけで、掘るより傷めにくい(当社の現場での説明) | 単体では土壌改良の効果が出にくい/水が抜けない土では水がたまる |
| エアレーション法(圧縮空気の圧入) | 圧縮空気 | 孔に肥料・土壌改良資材を入れることもできる | 狭い植栽帯、低木が込み入った場所 | 細根は切れるが、掘削より傷めにくい | 広い面積は不得意/機材が要る |
| 圧縮エア式スコップ(エアスコップ) | 圧縮空気で土を吹き飛ばす | ほぐした土に堆肥などを混ぜて戻す | 根の周りの土を広くほぐしたい所/根の分布を調べる所 | 根をほとんど傷めずに土をほぐせる | コンプレッサーが要る/土が飛ぶので周りの養生が要る |
| 表層耕耘 | 人力・耕耘機 | 施肥と同時に行うと効果がある | 表層20cm程度の土が固い所 | 根を過度に傷つけないよう配慮が要る | 12〜2月、年1回/土が乾いた状態で |
出典: 当社の記事(6920・15626・16069・8732)とサービスページ「土壌調査」、国総研「景観重要樹木の保全対策の手引き」p.215 表5-11(表層耕耘)・p.227 表5-18(エアーレーション)、当社の社内資料(エアスコップ・水圧穿孔法の長所と短所。当社の現場での考え)
当社の現場での考えをまとめると、割竹挿入法の良さは、通気と排水を直せること、竹が土に返って人工物が残らないこと、竹の周りに堆肥や肥料を混ぜ込むことで局所的な土壌改良になること、狭い植栽地でも点で作業できることです。弱さは、木が大きいほど単体では効きにくく、2〜3年ごとに続ける必要があることです。水圧穿孔法は、スコップが入らない場所で薄い液肥を根の深さへ届けられる一方、単体では土壌改良の効果が出にくいので、当社では割竹挿入法と同じ日に場所を分けて組み合わせています。エアスコップは根をほとんど傷めずに土をほぐせる反面、コンプレッサーなどの機材と周りの養生が要ります。

1本の木の根元での使い分け(上から見た模式図。当社作成。15626 で使用した図)

年ごとに場所を変えて続ける(上から見た模式図。当社作成。15626 で使用した図)
国総研の「景観重要樹木の保全対策の手引き」は、樹木を守る作業を手のかかり方で3つに分けていて、縦穴への割竹の挿入や表層耕耘は、樹木の所有者や住民でも行える「日常管理」、エアレーションや排水工は主に造園業者が行う「生育・景観改善」、根を露出させる広い範囲・深い層までの大規模な土壌改良は樹木医などの専門家が行う「治療・回復」にあたります。割竹挿入法は、この中でいちばん手軽な側にある方法です。土の異常が広い範囲や深い層に及んでいれば、点の手当てを続けても追いつかないので、調査の結果を見て規模を決めます。
割竹挿入法を行った当社の事例
当社の記事に書いた事例を、1行ずつまとめます。
| 現場 | 行ったこと |
|---|---|
| 東京都内の個人邸 | 春の施工/ダブルスコップで60〜80cm/完熟堆肥・黒曜石パーライト・緩効性化成肥料を配合/毎年少しずつ場所を変える |
| 練馬区の個人邸 | 3年前から場所を変えながら継続/完熟堆肥・炭・パーライト(黒曜石・真珠岩)・化成肥料を配合/掘りにくい所は水圧穿孔法 |
| 神社の御神木クスノキ | 参拝の方の踏圧で固まった土に、剪定とあわせて施工/2022年・2024年も位置を変えて継続/3年目・5年目に徐々に成果 |
| 屋上テラスのサクラ(剪定の記事) | 人工地盤で4年連続/2年前の割竹の筒に細根が集まっていた/根が張った所は水圧穿孔法 |
| オオシマザクラ(大田区) | 場所を変えながら施工/掘削した根は鋏で切り戻す/緩効性肥料とあわせて5年計画 |
| 学校の植升のクスノキ(大田区蒲田) | 踏圧はないが細根が浅い所に集中/80cmの縦穴を1桝16か所/真珠岩パーライト・完熟たい肥・炭・緩効性肥料/夏の水やりをお願い |
| 寿昌院の「臥竜の松」(江戸川区) | 割竹挿入法と水圧穿孔法を毎年ローテーション |
| 庭園のシンボルツリーのサクラ(世田谷区) | 年間管理の中で、花つきを保つために割竹挿入法と施肥 |
樹木の足元の土が気になったら
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医と植栽基盤診断士が土の硬さ・水はけ・土の層を調べ、その結果から割竹挿入法・水圧穿孔法・エアレーション法などの方法と範囲をご提案し、施工の後の経過まで見ています。神社・寺院・学校などの樹木では、土壌調査と樹勢回復の無料モニターも募集しています。「割竹挿入法をやってみたいが、自分の木に合うか分からない」というご相談も、お問い合わせフォームからお待ちしています。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくある質問(割竹挿入法のやり方)
Q1. 割竹挿入法の工程は、どんな順番ですか?
A. 割竹をつくる、穴の位置を決める、ダブルスコップで縦穴を掘る、穴の中の根を鋏で切り戻す、割竹を立てる、資材を混ぜて埋め戻す、の6つで施工は終わり、翌年以降は場所を変えて続けます。当社の現場では、縦穴は60〜80cmほど、時期は休眠期の12〜3月を基本に年1回です。
Q2. 割竹は、どんな竹をどう加工しますか?
A. 当社では主にマダケを使い、穴の深さに合わせた長さに切って縦に半割りにし、節の仕切りを抜いて元の筒の形に合わせ、シュロ縄で上下2か所を結びます。国総研の手引きの例は、長さ1m程度の竹を半割りにして節を除いて組み合わせ、中に炭やもみ殻を詰める形です。
Q3. 穴は、木のどこに掘りますか?
A. 当社の目安は、樹冠の外周(枝先の真下)の付近に多く配ることです。国総研の手引きも、施肥や部分的な土壌改良は樹冠の外周部の地面に施すとしています。幹のすぐそばは太い根を傷めやすいので避け、前回の竹の位置とも重ねません。
Q4. 埋め戻すときに何を混ぜますか?
A. 当社の基本は、完熟堆肥・パーライト・炭・緩効性化成肥料の4種を掘った土と混ぜることです。水はけの悪い土では黒曜石パーライト、乾きやすい土では真珠岩パーライトを多めにします。未熟な堆肥は、窒素飢餓やガスの原因になるので使いません。
Q5. 割竹挿入法の効果は、いつ、どう分かりますか?
A. 翌年以降に掘ったとき、前の竹の筒の中に細い根が集まっているかどうかが、いちばん分かりやすい手がかりです。土の硬さと水はけを施工の前後で測ることと、枝先と葉の様子を周りの同じ樹種と比べることもあわせて行います。数値で効果を示した公的な資料は見つかっていません。
Q6. 水圧穿孔法やエアレーションと、どう違いますか?
A. 割竹挿入法は人の力で縦穴を掘り、竹と資材を入れる方法です。水圧穿孔法は水圧で土をほぐして液肥を入れる方法で、スコップが入らない場所に使います。エアレーション法は圧縮空気で孔をあける方法で、狭い植栽帯に向きます。当社では、同じ木で場所を分けて組み合わせることがよくあります。
Q7. 一度やれば終わりですか?
A. 終わりではありません。竹は2〜3年で朽ちて土に戻り、土はまた固まります。当社では年に1回、場所を変えて続け、夏の乾燥する時期にはお客様に灌水をお願いしています。踏まれる場所では、踏圧を防ぐ対策もあわせて考えます。
出典・参考情報
この記事の説明にあたり、次の資料を確認しました(2026年10月21日)。
- 国土技術政策総合研究所「景観重要樹木の保全対策の手引き」(国総研資料第565号、2010年1月) p.128(表3-19 土壌硬度)、p.169〜171(表4-8・4-9 作業の3区分)、p.215(表5-11 施肥・表層耕うん・縦孔の簡易改良)、p.227(表5-18 部分的な土壌改良・エアーレーション)
- 国土技術政策総合研究所「巨樹・老樹の保全対策事例集」(国総研資料第566号、2010年1月) p.104(白濱神社のビャクシン樹林)
- 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き 第2版」(国総研資料第1059号、2019年2月) p.1-58(固結の再発)、p.1-67(未熟な堆肥の注意)
- 東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度) p.18(樹勢の評価)、p.69(表Ⅳ-1・2 土壌改良)、p.81(表Ⅳ-1・5 土壌改良材の種類)、p.82(踏圧防止)
- 長野県「Ⅲ 有機物の肥効特性」(長野県のサイトに掲載の資料) 2 有機物の肥効(2)窒素飢餓、(3)ガス障害、(5)堆肥の熟度と利用方法
- 堀大才「土壌改良の考え方と基本」(NPO法人樹木生態研究会、2025年10月1日掲載)
当社の施工に関する記述は、当社の記事に書いてある内容と、2026年10月の樹木医 中村雅俊への聞き取り(当社の現場での目安)に限っています。各資料の例は、当社の割竹挿入法と寸法・資材が異なります。なお、当社代表の中村雅俊は樹木生態研究会の会員です。
































