IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説

IML-RESI Fシリーズ 穿孔抵抗測定器 充電式ドリル ワックス紙 樹木診断 図解

レジ(Resi PD)と同じIML社の穿孔抵抗測定器には、市販の充電式ドリルを動力にして測定の曲線をワックス紙に刻むIML-RESI Fシリーズと、曲線を残さず手応えで読む機械式のMD300があります。仕組みとPDシリーズとの違い、東京都のマニュアルでの扱いを、メーカーの資料をもとに樹木医がまとめました。

IML社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載の第3回です。第1回ではIML社という会社を、第2回では当社が使っているIML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)の機種とオプションをご紹介しました。今回は、同じ穿孔抵抗の測り方を、より簡素な仕組みで行う2つの製品です。当社はFシリーズとMD300を保有していないため、メーカーの製品資料と取扱説明書、東京都のマニュアルをもとに書いています。

先に答え

  • Fシリーズは、市販の充電式ドリルを動力にした機械式の穿孔抵抗測定器です。測定の曲線は、本体の上に差し込んだ耐候性のワックス紙に、その場で刻まれます。
  • 型式はF300・F400・F500(穿孔できる深さ300・400・500mm)と、針の支えを強めた補強型のS・SXです。樹木用と構造材用があります。
  • 送りの速さは2段で最大150cm/分、感度は軟らかい材と硬い材の2段です。PDシリーズは送りが5段(15〜200cm/分の範囲で設定)で、記録は電子データです。
  • Fシリーズが記録するのは回転抵抗の1本の曲線です。PDシリーズは、回転抵抗に加えて送り力の曲線も記録できます。
  • MD300は、曲線を記録しない機械式の穿孔器です。針が受ける抵抗を手で感じ取り、本体の目盛りで深さを読みます。
IML-RESI Fシリーズ 穿孔抵抗測定器 充電式ドリル ワックス紙 樹木診断 図解
IML-RESI Fシリーズ。銀色の本体の後ろに市販の充電式ドリルを付け、上面の透明なカバーの下に記録紙を差し込む(イラストは当社作成)

 

Fシリーズとは──ドリルを動力に、曲線を紙に刻む

IML社の製品資料は、Fシリーズを「基本的な用途のための機械式の穿孔装置」と位置づけています。本体は防滴のステンレス製で、後ろの端の下にボッシュ社の充電式ドリルを取り付けて動かします。ドリルの回転は本体の中の歯車に伝わり、細い針を回しながら前へ送り出します。針の太さはPDシリーズと同じく、軸が1.5mm、先端が3mmです。

IML-RESI Fシリーズ 各部 本体 透明カバー ワックス紙 記録の針 充電式ドリル 図解
Fシリーズの各部。銀色の本体の上面に記録紙と記録の針、後ろの下に充電式ドリル、後ろの面に感度のダイヤル(イラストは当社作成)

測り方はPDシリーズとよく似ています。本体を幹に当て、ドリルのスイッチを押すと針が材に入っていきます。目的の深さまで来たらスイッチを離し、ドリルの回転を逆にして針を引き抜きます。取扱説明書は、持ち方の向きで結果は変わらないとしたうえで、針を押し込む反対向きの力がかかるので、測る人の足場と姿勢を安定させるよう求めています。

レジ Fシリーズ 測定後 逆回転 針を抜く 充電式ドリル 図解
測り終えたら、ドリルの回転を逆にして針を引き抜く(イラストは当社作成)

電柱のように斜めに測りたい対象には、差し込み式の45°アダプターが用意されています。構造材用の型には、このアダプターと45°用の長い針が付きます。

レジ Fシリーズ 45°アダプター 木の電柱 木柱 斜めに測る 図解
45°アダプターを付けて、木の電柱の地際を斜めに測る(イラストは当社作成)

ワックス紙に刻む仕組み

Fシリーズの特徴は、記録の方法にあります。本体の上面には細長い溝のレールがあり、そこへ目盛りの付いたワックス紙の帯を差し込みます。上から透明のカバーを閉じると、針が材に入っていくのに合わせて、記録の針がワックス紙の上を進み、針が受けた抵抗の強さを線として刻んでいきます。健全な材では線が高く、腐朽や空洞では線が下がります。

レジ Fシリーズ ワックス紙 記録紙 差し込む 透明カバー 手元 図解
透明のカバーを開け、ワックス紙の帯を差込口からレールへ差し込む(イラストは当社作成)
レジ Fシリーズ ワックス紙 記録 曲線 腐朽 空洞 穿孔抵抗 仕組み 図解
針が腐朽を通る区間では抵抗が下がり、ワックス紙の線も下がる(仕組みを示す模式図。イラストは当社作成)

電源や画面を使わないため、測った直後に、その場で紙の曲線を見られます。製品資料は、記録紙が耐候性であることと、現場で結果をそのまま記録として残せることを利点に挙げています。紙は1枚ずつ取り外して保管します。

東京都の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」も、穿孔抵抗の波形は「機器の胴体部に取り付けられている用紙、もしくはデジタル表示画面上」に記録されると書いています。前者がF型、後者がPD型にあたります。

型式と深さ──F300・F400・F500と補強型

硬い材を頻繁に測る用途向けF300SX・F400SX・F500SX280・380・480mm交換式のテレスコープで針の案内を改良した型

型式 穿孔できる深さ 特徴
F300・F400・F500 300・400・500mm 標準の型
F300S・F400S・F500S 280・380・480mm 針の支えを特に頑丈にした補強型。

いずれも樹木用と構造材用の2系統があります。なお、2021年の製品資料は穿孔できる深さを「150〜500mm」と書いており、現在の型式の一覧(300mmから)とは下限が異なります。この違いの理由は、メーカーの資料からは確認できていません。

東京都のマニュアルは、使用できる主な樹木診断機器の表(53ページ)で、レジF型の測定可能な幹の直径を「直径100cm(最大)IML-RESI F500の場合」とし、対角の2方向から測る前提としています。深さ50cmの針を幹の両側から入れて、直径100cmまでを読むという考え方です。同じ表で、レジPD型は直径200cm(PD1000の場合)です。

レジ F500 深さ50cm 両側から 直径100cm 東京都 マニュアル 図解
深さ50cmのF500を幹の両側から入れ、直径100cmまでを読む(東京都のマニュアル53ページの表の考え方。当社作成の図)

速さと感度の「2段」

製品資料の仕様は、送りの速さを「2段、最大150cm/分」、感度を「硬い材と軟らかい材に合わせた2段」としています。取扱説明書を読むと、送りの2段はドリル側の変速の切り替えで、1速(毎分400回転)は分解能の高い樹木用、2速(毎分1,200回転)は電柱用と説明されています。

感度は、本体の後ろにあるダイヤルで1(軟らかい材)と2(硬い材)を選びます。取扱説明書には樹種ごとの目安の表がありますが、材の性質には幅があるため、最終的にはその都度決めるよう書かれています。

レジ Fシリーズ 変速 1速 2速 感度 ダイヤル 軟材 硬材 図解
左: ドリルの変速(1速は樹木、2速は電柱)。右: 本体の後ろの感度のダイヤル(1は軟らかい材、2は硬い材)(イラストは当社作成)

PDシリーズでは、送りの速さを5段から選び、各段の値を15〜200cm/分の範囲で設定し直せます(第2回)。速さを材に合わせて選べる幅は、PDシリーズのほうが広く取られています。

PDシリーズとの違い

オプションで送り力も送りの速さ2段、最大150cm/分5段、15〜200cm/分で設定穿孔できる深さ280〜500mm200〜1,000mm1回の充電での測定回数の目安約50回(18V 4.0Ahの電池)約200回(18V 5.0Ahの電池)

Fシリーズ PDシリーズ(PowerDrill)
動力 市販の充電式ドリル(ボッシュ社) 本体に組み込んだモーター
記録 ワックス紙に刻む 電子データ(本体の画面、パソコン)
記録する曲線 回転抵抗の1本 回転抵抗。

東京都のマニュアルは、国内で普及している型は主にF型とPD型の2つとしたうえで、F型は回転抵抗を、PD型は回転抵抗に加えて前進抵抗(送り力)を測るので、より詳細に材の腐朽や空洞の状態を把握できると書いています(52ページ)。送り力は、針の軸が木くずに締め付けられる摩擦の影響を受けにくく、初期の腐朽を読み取る手がかりになります(第2回)。

レジ Fシリーズ PDシリーズ 比較 ワックス紙 電子データ パソコン 図解
左: Fシリーズはワックス紙に記録。右: PDシリーズは電子データで記録し、パソコンで波形を見る(イラストは当社作成)

点検の考え方は共通です。Fシリーズの取扱説明書は、保証の条件として、約1,000回の測定後か1年後の早いほうで最初の点検に出すことを求め、その後も1,000回ごとか年1回の点検を推奨しています。針は10回の測定ごとに摩耗を確かめます。

MD300──記録を残さず、手で感じる穿孔器

IML-RESI MD300 機械式 穿孔器 充電式ドリル 腐朽 空洞 樹木診断 図解
IML-RESI MD300。銀色の筒の後ろに市販の充電式ドリルをつなぎ、手応えと目盛りで読む(イラストは当社作成)

MD300は、曲線を電子的にも機械的にも記録しない、機械式の穿孔器です。取扱説明書によると、回る針が前へ進むときの軸方向の抵抗を、測る人が手で感じ取ります。深さは本体の1対1の目盛りで読みます。腐朽に当たると、針が急に速く入る感触があり、針葉樹では1本ずつの年輪まで感じ取れると書かれています。

穿孔できる深さは300mm、針の長さは387mmです。動力はFシリーズと同じく市販の充電式ドリルで、ドリルは付属品ではなく別に用意します。メーカーは用途を、空洞・腐朽・亀裂の検出と、残っている健全な材の厚さの把握としており、ドイツ語の製品案内では「樹木の手早い予備調査のための手頃な測定器」と紹介しています。

記録が残らないため、報告書に波形を添えることはできません。調べた深さと手応えを、その場で書き留めておく使い方になります。

記録の方式の違いが、報告書にどう効くか

ここからは、PDシリーズを使っている立場からの私の見方です。

樹木診断の報告書では、どこからどこまでを腐朽と読んだのかを、波形とともに示します。東京都のマニュアルは、機器診断カルテに、腐朽空洞率の算出に必要な測定値を記した波形グラフのデータを貼り付けることとし、腐朽空洞率が50%以上で、健全な材と腐朽の境が不明瞭な場合には、判読の基準や根拠を記すよう求めています(58ページ)。

私の見方では、ワックス紙の記録は、現場でその場で読めることと、電気に頼らない確かさに強みがあります。一方で、報告書に載せるには紙を読み取って画像にする手間がかかり、同じ樹木を何年か後に測り直して比べるときも、紙を探し出して並べることになります。PDシリーズの電子データは、測定した方向や日付とともに保存され、パソコンの上で何本もの波形を並べたり、断面の画像に重ねたりできます。当社がPDシリーズを選んでいる理由のひとつは、この「後から読み返せること」にあります。

機器の違いよりも大きいのは、どこに、どの向きで針を入れるかです。それを決めるのは、木槌で叩き、根元を確かめる外観診断で立てた見立てです。どの型であっても、穴を開ける診断ですから、必要な樹木に、必要な本数だけ行うことは変わりません。

株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。幹や根元の内部が気になる樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください。

次回は、音で幹の断面を描くPiCUS Sonic Tomograph(ピカス)を取り上げます。

 

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

 

よくあるご質問(IML-RESI FシリーズとMD300について)

Q1. Fシリーズとはどんな機器ですか?

A. IML社の機械式の穿孔抵抗測定器です。市販の充電式ドリルを動力にして細い針を材に入れ、針が受けた回転抵抗の強さを、本体の上に差し込んだワックス紙に曲線として刻みます。型式はF300・F400・F500と、補強型のS・SXがあります。

Q2. PDシリーズとの違いは何ですか?

A. 記録の方法と、記録できる曲線の数が違います。Fシリーズはワックス紙に回転抵抗の1本を刻み、PDシリーズは電子データで記録し、オプションで送り力の曲線も記録できます。送りの速さも、Fシリーズは2段、PDシリーズは5段から選べます。

Q3. ワックス紙の曲線は、どう読むのですか?

A. 横方向が針の深さ、縦方向が抵抗の大きさです。線が高いところは抵抗が大きく健全な材、線が下がったり現れなかったりするところは、腐朽や空洞が疑われます。読み取りには専門的な判読が必要で、メーカーも講習の受講を勧めています。

Q4. MD300は何に使う機器ですか?

A. 曲線を記録しない機械式の穿孔器で、空洞・腐朽・亀裂の有無や、健全な材の厚さを手早く確かめる予備調査に使われます。針が受ける抵抗を手で感じ取り、本体の目盛りで深さを読みます。穿孔できる深さは300mmです。

Q5. 東京都の街路樹診断でFシリーズは使えますか?

A. 東京都の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」は、使用可能な主な樹木診断機器の表にレジF型を挙げ、測定可能な幹の直径を最大100cm(F500の場合)としています。機器の選定に迷う場合は、東京都建設局の担当や専門家と調整するよう求めています。

Q6. 当社はFシリーズを使っていますか?

A. 使っていません。当社が使っている穿孔抵抗測定器は、PDシリーズのPD500です。この記事のFシリーズとMD300の内容は、メーカーの製品資料と取扱説明書をもとにしています。

 

出典・参考情報

メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)

・IML「IML-RESI F-Series」製品資料(PDF・英語、2021年) 機械式の位置づけ、充電式ドリル、ワックス紙、深さ、送りの速さ2段・最大150cm/分、感度2段、45°アダプター
・IML「IML-RESI F-Series Instructions for Use and Guarantee Conditions」(PDF・英語、2018年10月版) 判読の必要性と保証・点検(4〜5ページ)、測定の手順(7ページ)、変速と感度(8〜9ページ)、ワックス紙の入れ方(10ページ)、針の点検(11ページ)
・IML「IML-RESI F-Series」製品ページ(英語) 型式と深さ、S・SX型、樹木用と構造材用、よくある質問(1回の充電での測定回数)
・IML「Instructions for Use: IML-RESI MD300」(PDF・英語、2018年8月版) 測り方、深さ、針の長さ、用途(4〜6ページ)
・IML「IML-RESI MD300」製品ページ(英語) 曲線を記録しないこと
・IML「Produktprogramm」(PDF・ドイツ語、2014年) MD300の位置づけ
・IML-RESI PD-Series Manual and Warranty Terms & Conditions(IML社、2023年1月版) PDシリーズの送りの速さ(4.8、4.17.4)

制度

・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 貫入抵抗測定器(商品名:レジ)の特性と測定方法、F型とPD型(51〜52ページ)、使用可能な主な樹木診断機器とその特性(表Ⅲ-3・1、53ページ)、機器診断カルテの所見と測定結果の記入(58ページ)

 

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※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。

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