ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説

ツリーモーション PiCUS TreeMotion 風 根元の傾き 根鉢 センサー 樹木医

ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)は、自然の風で揺れる樹木の根元の傾きを、小さなセンサーで数時間から数週間記録する機器です。風速と傾きの関係から根の支えを読む考え方、静的負荷試験(引張り試験)との違い、強風を待つという限界を、研究をもとに樹木医が解説します。

IML社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載の第8回です。第7回では、ロープで樹木を静かに引き、風の代わりの荷重への反応から根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を紹介しました。今回のツリーモーションは、同じ「根元の傾き」を、ロープではなく本物の風の中で測る機器です。この回も、メーカーの公開資料と研究論文をもとに紹介します。

先に答え

  • ツリーモーションは、樹木の根元に付けた小さな傾きのセンサーで、風に揺れる根鉢(根と土がひとかたまりになった部分)の傾きを、数時間から数週間、自動で記録する機器です。
  • 根元のセンサーに加えて、高さ2〜3mにもう1つ対照のセンサーを付けます。風による本当の反応と、それ以外の揺れを見分けるためです。
  • 記録した傾きを風速のデータと合わせ、「風が強くなると、どれだけ傾くか」を曲線にして読みます。メーカーは、時速45kmを超える突風と2時間以上の記録を、うまく測るための条件としています。
  • 200本を超える都市の樹木を3年間測った研究では、根の傷みの兆しがある樹木は、時速60kmの突風で、ほかの樹木より統計的にはっきり大きく傾きました(時速60kmで0.06°の差)。
  • 強い風が来なければ結果が出ないことが、大きな限界です。並木をまとめて測り、傾きの大きい1本を見つけて詳しく調べる、という使い方が勧められています。
ツリーモーション PiCUS TreeMotion 風 揺れ 根元の傾き 根鉢 センサー 対照のセンサー 図解
ツリーモーションの考え方。自然の風で揺れる樹木の根元の傾きを、根元と高さ2〜3mの2つのセンサーで記録する(イラストは当社作成)

 

ツリーモーションとは──自然の風で、根元の傾きを測る

IML Electronic社の製品ページと製品資料(2025年4月版)は、ツリーモーションを「実際の条件での、樹木の風への反応の測定」と説明しています。風を受けた樹冠は、根元を中心に樹木を倒そうとします。そのとき根鉢はわずかに傾き、風がやむと戻ります。この傾きを根元で測れば、根がどれだけしっかり土をつかんでいるかを推し量れる、という考え方です。

メーカーは、この方法の利点を、樹木の性質だけでなく、風の強さと向き、周りの建物や樹木による風の当たり方まで、すべてを含んだ反応をそのまま測れる点に置いています。第7回の引張り試験は、人工の「風の代わりの荷重」をかけるので、実際の風との関係は見積もりにくい、と製品ページは比べています。もちろん、これはメーカーの見方です。引張り試験の側から見ると、こちらは強い風を待たなければならないという弱みがあります。両者の違いは、後でまとめます。

ツリーモーション センサーの位置 根元 地際 高さ2〜3m 対照のセンサー 根鉢の傾き 図解
センサーの位置。根元のセンサーは地際のごく低い所に、対照のセンサーは高さ2〜3mに付ける(イラストは当社作成)

構成と仕様

製品ページ、製品資料、ソフトとアプリの製品ページによると、ツリーモーションは次のものでできています。

  • センサー PiCUS TMS 3: 傾きを測る小さなセンサーです。中に電池と記録用のメモリーがあり、1個ずつ独立して記録します。スターターセットに10個、入門用のミニキットに2個入ります。
  • 磁石のペン: センサーを起動するときに使います。センサーは水やほこりが入らないよう完全に密閉されているので、スイッチがありません。
  • 運搬ケース: 10個を無線で充電できる台が組み込まれ、20個まで収められます。
  • アプリ「IML Tree Motion」: 現地で、スマートフォンなどからセンサーの記録を始めたり止めたりします。測ったデータの読み出しや解析はできません。
  • パソコンのソフト「TMS.Software」: 記録が終わったあとに、センサーのデータを Bluetooth で取り込み、風のデータと合わせて解析する Windows 用のソフトです。
  • 風の測定装置(別売): 樹木のすぐ近くで風速と風向を測る装置です。後で詳しく書きます。
PiCUS TMS 3 ツリーモーション センサー 傾き 小型 防水 図解
センサー TMS 3。手のひらに収まる大きさで、灰色の目立たない色にしてある(イラストは当社作成)
項目 センサー TMS 3 の値(製品ページの技術データ)
大きさ・重さ 61×41×20mm、73g
傾きの精度・測る間隔 0.03°、0.05秒ごと(1秒に20回)
測り方 3方向の傾き、付ける向きは自由
使える温度 −20〜+50℃
電池・メモリー 250mAh で新品時14日超、メモリー256MB で約20日分
充電 無線で約2時間
通信 待機と記録は Bluetooth Low Energy 4.0、データの取り出しは Bluetooth Classic 2.1
ケース 48×35×15cm、センサー10個とねじ・ケーブル込みで5.5kg

1つのセンサーで記録できる期間は、資料によって書き方が違います。製品ページの機能の一覧は約2週間、同じページの技術データの表は電池が14日超・メモリーが約20日、製品資料は約3週間としています。スターターセットのセンサーの数も、製品ページは10個、製品資料は「10個から最大20個」です。旧型のセンサー(黒、270g)は2方向の傾きを測り、水平に付ける必要がありましたが、TMS 3 は3方向を測るので向きを選びません。小さく灰色にしたのは、いたずらに遭いにくくするためだとメーカーは書いています。何日も屋外に付けたままにする機器だからこその配慮だと思います。

風の測定装置

傾きと合わせる風のデータは、ドイツ気象局のデータや、WindFinder、Meteostat などの公開データを TMS.Software に読み込めます。樹木のすぐそばの風を測りたいときは、別売の風の測定装置を使います。クラウド版は風速と風向を測り、突風の値と平均の値を記録します。風速は、お椀形の風杯が回る速さから求める方式です。気圧と気温も測り、記録は10分ごと、データは4時間ごとに携帯電話の回線で IML Cloud に送られ、そこからソフトに取り込めます。電池は太陽電池でも充電され、10mの伸縮マストは別売で、建物や既存の柱にも取り付けられます。

風の測定装置 PiCUS Wind Measurement System 風速計 風向 風杯 マスト クラウド 図解
風の測定装置(クラウド版)。樹木の近くで風速と風向を測り、データを携帯電話の回線でクラウドに送る(イラストは当社作成)

測り方の流れ

製品資料、ソフトとアプリの製品ページ、研究論文から、おおまかな流れをまとめると次のとおりです。取扱説明書は公開されていないため、細かな手順は書いていません。

  1. 強い風の予報に合わせて付ける: 製品資料は、嵐が予想される前に、何本もの樹木へ同時にセンサーを付ける使い方を紹介しています。
  2. 根元と高さ2〜3mに付ける: 研究では、根元のセンサーを地際から高くても5〜10cmの所に付けています。付け方の細かな手順は、公開資料に文章での説明が見当たりません。
  3. アプリで記録を始める: スマートフォンの位置情報をオンにしておくと、記録を始めるときに、センサーへ実際の位置と向きを伝えられます。
  4. そのまま待つ: センサーは数時間から数週間、自動で記録します。解析に使えるのは、時速45km(秒速約12.5m)を超える突風が吹き、2時間以上記録できたデータです。
  5. 回収して解析する: センサーを外し、TMS.Software にデータを取り込みます。ソフトは、元の記録を自動で保管し、データの絞り込み(フィルター)と統計の処理をしたうえで、傾きと風のデータを組み合わせて曲線を作ります。
ツリーモーション アプリ IML Tree Motion スマートフォン 記録の開始 根元のセンサー 樹木医 図解
記録はスマートフォンのアプリで始める。センサーにはスイッチが無く、データの解析はパソコンのソフトで行う(イラストは当社作成)

根元のセンサーをごく低い所に付けるのは、測りたいのが幹のしなりではなく、根鉢の回転だからです。Göcke氏らの論文(2018年)は、それまでの研究では計器を幹の高い所に付けることが多く、根鉢の回転と幹のしなりを混ぜて測っていた、と指摘しています。高さ2mほどの対照のセンサーは、主に、本当の傾きと周りの雑音を見分けるために使われました。

根鉢の回転 幹のしなり 根元の傾き センサー 違い 模式図
根元のセンサーが測るのは、根鉢ごとの回転(左)。幹のしなり(右)は根元ではほとんど現れない(角度は誇張した模式図。当社作成)

風の傾き曲線──風が強くなると、どれだけ傾くか

解析の中心は、横軸に風速、縦軸に根元の傾きをとった曲線です。研究者はこれを「風の傾き曲線」(wind tipping curve)と呼んでいます。Göcke氏らは、樹木から3〜11km離れた気象観測所の最大瞬間風速を使い、1時間ごとに「その時間の最大の風速」と「その時間の最大の傾き」を1組にして点を打ち、曲線を当てはめました。樹木に当たる突風と、離れた観測所に届く突風は同じではありませんが、1時間ほどの幅でまとめれば、似た突風が両方に当たっているとみなせる、という考え方です。

風の傾き曲線 wind tipping curve 最大瞬間風速 根元の傾き 外挿 ツリーモーション 模式図
風の傾き曲線。1時間ごとの最大の風速と最大の傾きを点にし、曲線を当てはめる。測った範囲の外は外挿になる(値は説明のための例。当社作成)

風が弱いうちは、傾きはごく小さく、雑音に埋もれます。この研究では、時速30km未満の風のデータは使っていません。風が強くなると傾きは急に大きくなり、曲線は右上がりに反り上がります。この反り上がりの強さと、ある風速での傾きの大きさが、根の支えを読む手がかりになります。

メーカーの製品資料は、測った風速より時速10〜20km強い風での傾きも、曲線を伸ばして予測できるとしています。一方、Göcke氏らの検証では、多くの場合で時速10kmほど先までは伸ばせるとしつつ、時速50kmの風から時速60kmでの傾きを予測すると平均で8%、時速70kmでの傾きを予測すると15%、実際より小さく見積もりました。伸ばすほど、甘く出るということです。

並木をまとめて比べる

製品資料が勧める使い方のひとつが、並木などの樹木群をまとめて比べる方法です。隣り合う樹木は似た風を受けているはずなので、1本だけ傾きが大きければ、支えが弱いのかもしれません。製品資料はカエデ5本の例を載せ、1本だけ傾きが大きい木は、ピカスなどほかの方法で詳しく調べるべきだとしています。ツリーモーションだけで結論を出すのではなく、詳しく調べる1本を選び出すための使い方です。

並木 比較 風の傾き曲線 5本 傾きの大きい樹木 ツリーモーション 模式図
並木の比較。隣り合う樹木は似た風を受けるので、1本だけ大きく傾けば、その樹木を詳しく調べる(値は説明のための例。当社作成)

静的負荷試験(引張り試験)との違い

どちらも根元の傾きから根の支えを読みますが、荷重のかけ方が違います。公開資料と研究から、違いをまとめました。

項目 ツリーモーション 静的負荷試験(引張り試験)
荷重 自然の風 ロープとウインチで引く人工の荷重
測るもの 根元の傾き(対照のセンサーも傾き) 引く力、幹の繊維の伸び縮み、根元の傾き
結果が出る時期 強い風が吹いたあと 試験をしたその日
本数 並木などを同時にまとめて測れる 1本ずつ、向きを変えて引く
読めること 根の支え(根返り)、幹折れの安全は対象にしていない 根返りと幹折れの両方の安全率
周りの影響 建物や樹木による風の当たり方も含めて測る 風の強さは計算で見積もる

2つは対立するものではありません。第7回で紹介したとおり、引張り試験は「傾き0.25°を生んだ力」と「根返りの力」がよく比例するという関係(Detter & Rust 2013)を使います。Göcke氏らはこの関係を借りて、風の傾き曲線から、根元が0.25°傾く風速を見積もり、根返りが起きる風速を推し量る方法を示しました。

Rust氏、Göcke氏、Detter氏(2019年)は、同じ樹木で風の傾き曲線と引張り試験を組み合わせ、実際の風の荷重を求めました。それを、引張り試験の解析ソフト arbostat が計算で見積もる風の荷重と比べると、ドイツ北西部の4本で、違いは4〜31%にとどまりました。著者らは、突風による揺れの荷重は、風荷重の計算の結果と比べられる大きさで、引張り試験でも再現できる、と結論しています。引張り試験で前提にしている「強風の力の見積もり」を、本物の風で確かめる道具にもなるということです。

研究から見る、確かさと限界

200本超を3年間測った研究(2018年)

Göcke氏らは、主にドイツのロストックとその周辺で、モミ属、カエデ属、カバノキ属、カラマツ属、トウヒ属、マツ属、ポプラ属、トガサワラ属、コナラ属、シナノキ属の、樹高10〜36mの204本を、3年間に57回の強風で測りました。1回の強風で測ったのは1〜20本、強風の最大瞬間風速は時速40〜102kmです。1時間ごとの最大の風速と最大の傾きの当てはまりは、多くの場合、決定係数0.75前後で、風が強いほど良くなりました。同じ樹木を、風向きの違う強風や、葉のある時と無い時に測っても、結果はおおむね似ていました。

根元の周りの土に割れ目があり、強風の中で開いたり閉じたりするのが見えた樹木は、ほかの樹木より明らかに大きく傾き、時速60kmでの差は0.06°でした。そのうちポプラを含む2本は、2017年10月の嵐で倒れています。著者らは、時速50kmで0.25°以上傾く樹木は、強い風では0.6°以上傾き、その後に根の傷みの兆しが出る、という目安を示しています。それまでの研究(James氏ら、2013年)では「時速60kmを超える風で0.6°、70kmを超える風で1°」のような決まった値で読んでいたが、それより低い値になった、とも書いています。ただし、これは都市の独立した樹木のデータにもとづく値です。

建物の影響も見えました。南北に並ぶシナノキの並木では、西からの強風のとき、建物のすき間に立つ樹木は、建物の陰になる樹木より大きく傾きました。風の当たり方が樹木ごとに違うので、少なくとも2回、違う向きの強風で測るのがよい、と著者らは勧めています。

ブナ並木の例(2019年)

Rust氏らは、ドイツのゲッティンゲン近くのヨーロッパブナの並木の例を示しています。7本の根鉢はほとんど動きませんでしたが、2本は風に強く反応しました。1本は Meripilus giganteus という菌に感染しており、もう1本は、その嵐のあいだに根元が裂けました。

樹木の揺れは単純ではない(2006年、要旨を確認)

オーストラリアの James氏、Haritos氏、Ades氏は、ヤシ、ホソイトスギ、ナンヨウスギの仲間、2種のユーカリで、風による揺れと荷重を12か月測りました。要旨によると、樹木の揺れは振り子のような単純な揺れではなく、枝どうしの動きが絡み合って複雑になります。枝の重さが揺れを抑える働き(マスダンピング)をして、幹の危ない揺れを小さくしているといいます。ツリーモーションが揺れの細かな形を追うのではなく、根元の傾きの最大値を風速と比べるのは、この複雑さを、根の支えという一点に絞って読むためだと私は考えています。

限界──強風を待つこと、風のデータが合うこと

研究者たちが共通して挙げる限界は、強い風が要ることです。Göcke氏らは、決まった期間のうちに強風が来るとは限らないこと、気象観測所の風がその場所を代表していなければならないこと、地形が複雑な場所では観測所の風を使えないおそれがあることを挙げ、この方法は、すぐに結論を出すより、中長期の見守りに向いているとしています。腐朽菌 Kretzschmaria deusta による腐朽がある1本では、強風のたびに根の支えが下がっていくのが記録されました。Rust氏らも、診断をする人に与えられた期間に強い風が吹かないことがある、と書いています。

ツリーモーション 強風を待つ 時速45km 突風 2時間 記録期間 限界 模式図
2週間記録しても、使えるのは時速45kmを超える突風が吹いた時間だけ。強い風が来なければ結果は出ない(値は説明のための例。当社作成)

使いどころ

メーカーの資料と研究から、使いどころをまとめると次のとおりです。

  • 並木や樹木群の比較: 強風の予報に合わせて何本もまとめて付け、傾きの大きい樹木を選び出す
  • ほかの機器診断の補い: 製品資料は、音波や電気抵抗の断面の画像で幹の下の方に欠陥が見つかった樹木に、根の支えの情報を足す使い方を挙げています
  • 経過の見守り: 繰り返し測って、根の支えの変化を追う
  • 工事中の見守り: 根の近くの工事による影響を測り、根の支えへの影響を見る
工事 根の近く 掘削 樹木 見守り ツリーモーション センサー 根元 図解
根の近くで工事をするあいだ、根元のセンサーで根の支えの変化を見守る使い方もある(イラストは当社作成)

当社の考え方

当社は、幹の内部をピカスとトロニック、レジ(Resi PD)で診て、根元や根張り、根元の周りの土の割れや盛り上がりを外観診断で診ています。根の支えは、断面の画像からは直接には分かりません。Göcke氏らの研究で、土の割れ目が強風の中で開いたり閉じたりした樹木が大きく傾き、実際に倒れたことは、外観診断で根元の周りの土を見ることの意味を、数字で裏づけているようにも読めます。

ツリーモーションは、自然の風という、ごまかしのきかない荷重で樹木を測る方法です。そのかわり、風を選べず、結果が出るまで待つことになります。私の見方では、1本の樹木の判断を急ぐ場面より、並木のように同じ条件の樹木がまとまってある場所で、詳しく調べる樹木を選ぶ場面や、工事の前後を見守る場面で力を発揮する方法です。当社では、どの方法の数字も、それだけで判断せず、外観診断と、ほかの機器の結果と合わせて読むことを大切にしたいと考えています。

株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。倒木が心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。

次回は、根の周りの土の水分を、地中に置いたセンサーで測り続ける機器、PiCUS Tension(テンション)を取り上げます。

 

株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊

 

よくあるご質問(ツリーモーション PiCUS TreeMotion について)

Q1. ツリーモーションでは何を測りますか?

A. 風で揺れる樹木の根元の傾きを、小さなセンサーで数時間から数週間記録します。その傾きを風速のデータと合わせて、「風が強くなると、どれだけ傾くか」を曲線にし、根の支えを読みます。

Q2. 静的負荷試験(引張り試験)とは何が違いますか?

A. 引張り試験はロープで引く人工の荷重で、その日のうちに根返りと幹折れの安全率を出します。ツリーモーションは自然の風を荷重にするので、周りの建物や樹木の影響も含めて測れますが、強い風が来るまで結果は出ず、読むのは根の支えで、幹折れの安全は対象にしていません。

Q3. どれくらいの風が吹けば結果が出ますか?

A. メーカーは、時速45km(秒速約12.5m)を超える突風と、2時間以上の記録を条件としています。200本超を測った研究では、根の支えの良し悪しは時速50〜60kmの突風で見分けられたとしています。

Q4. センサーは樹木のどこに付けますか?

A. 根元のごく低い所(研究では地際から5〜10cm以内)に1つ、高さ2〜3mにもう1つ付けます。根元のセンサーで根鉢の傾きを測り、上のセンサーで、風による本当の反応とそれ以外の揺れを見分けます。

Q5. 風速計は必ず要りますか?

A. 必ずではありません。気象局や公開の風のデータを解析ソフトに読み込めます。研究では、3〜11km離れた気象観測所の風でも、多くの樹木で傾きとよく対応しました。ただし、地形が複雑な場所や建物の多い場所では、近くで測った風のほうが確かです。

Q6. ピカスなどの機器診断の代わりになりますか?

A. 代わりにはなりません。ツリーモーションが読むのは根の支えで、幹の中の腐朽の広がりは分かりません。メーカーも、傾きの大きい樹木をピカスなどで詳しく調べる使い方や、断面の画像で欠陥が見つかった樹木に情報を足す使い方を勧めています。

Q7. 工事の影響も分かりますか?

A. メーカーは、根の近くの工事による影響を測り、根の支えへの影響を見る使い方を挙げています。工事の前後や工事中に、同じ樹木を繰り返し測って比べる使い方です。

 

出典・参考情報

メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)

・IML Electronic「PiCUS TreeMotion」製品ページ(英語) 測定の原理、構成、技術データ(TMS 3 と旧型)、ソフト
・IML Electronic「PiCUS TreeMotion」製品資料(PDF・英語、2025年4月版) センサーの位置と測定の条件(p.2)、機能と仕様(p.3)、樹木群の比較(p.4)、結果の使い方(p.5)
・IML Electronic「TMS.Software」ソフトの製品ページ(英語)
・IML Electronic「IML Tree Motion」アプリの製品ページ(英語)
・IML Electronic「PiCUS Wind Measurement System」製品ページ(英語)

研究

・Göcke, L., Rust, S. & Ruhl, F. (2018) Assessing the anchorage and critical wind speed of urban trees using root-plate inclination in high winds. Arboriculture & Urban Forestry 44(1): 1–11
・Rust, S., Göcke, L. & Detter, A. (2019) Wind tipping curves – assessing the anchorage and wind load of urban trees by motion monitoring. 21st International Nondestructive Testing and Evaluation of Wood Symposium(PDF・原稿版)
・James, K.R., Haritos, N. & Ades, P.K. (2006) Mechanical stability of trees under dynamic loads. American Journal of Botany 93(10): 1522–1530(要旨を確認)
・James, K.R., Hallam, C. & Spencer, C. (2013) Measuring tilt of tree structural root zones under static and wind loading. Agricultural and Forest Meteorology 168: 160–167(当社は本文未読。Göcke et al. 2018 の紹介による)
・Detter, A. & Rust, S. (2013) Aktuelle Untersuchungsergebnisse zu Zugversuchen. Jahrbuch der Baumpflege 2013: 87–100

 

樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事

機器の解説・導入・研修

・ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説
・キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説
・トロニック(PiCUS TreeTronic 3)の構成と測り方──電気抵抗で断面を描き、音波の画像と重ねて読む方法を樹木医が解説
・ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)の構成と測り方──測定点の数、キャリパーの扱いを樹木医が解説
・IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説
・IML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)の機種とオプション──レジ(Resi PD)7機種の違いと選び方を、樹木医が解説
・IML社とは──レジ(Resi PD)とピカスをつくるドイツの樹木診断機器メーカーを、樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・アーボソニック3Dの使い方を、道具から断面画像の色の見方まで──取扱説明書と現場の写真で樹木医が解説
・アーボソニック3Dとは何か 音で幹の断面を樹木診断する診断機器を、樹木医が一般の方向けに解説します
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした
・音で、樹木の中を視る 非破壊樹木診断機器「ドクターウッズ」
・樹木診断 無料モニター募集
・PiCUS(ピカス)導入のお知らせ 樹木診断(機器診断) 非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へ
・樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)について
・樹木模擬診断研修会を終えて 人の眼 × 機械の眼が拓く、新しい都市樹木管理のかたち
・東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説
・樹木医がイギリスの樹木診断に学ぶ ― 都市の樹木を守るための対話と発見

機器診断の記録

・山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断 ピカス・ツリートロニック・レジとドローンで診た結果と、残すための3つの対策
・埼玉県内の伝統校 樹木医によるクスノキ2本の機器診断 ピカスで幹の内部を診る
・樹木医が街路樹エンジュの樹木診断と伐採後の腐朽具合の答え合わせ
・山形県での出張樹木診断 樹木医によるピカス、レジでの診断検証
・診断した木を、その日のうちに伐る──ピカス・アーボソニック3D・レジを同一木のサクラで比べた「樹木診断機器比較研修会」千葉県習志野市
・都有施設80万本の樹木一斉点検 約14,000本(速報)の「異状あり」を、樹木医はどう読むか
・港区三田 薬王寺様の境内 樹木診断 地上と樹上、樹木医がふたつの視点で木の内側を読む
・砧公園で4回目の倒木 樹木医として思うこと
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・樹木医による都内の学校施設でのサクラの樹木診断 豊島区
・学校施設 ケヤキなど樹木医診断 東京都
・公園樹木診断 樹木医による機器診断・根株診断(レジ) 東京都
・マンション内のイチョウ(銀杏) 樹木医診断(機器診断) 東京都大田区
・公園のサクラ(桜)を樹木医が樹木診断(機器診断)しました
・樹木医 保存樹木サクラ等 樹木診断 東京都杉並区
・学校施設内 桜(サクラ)樹木医診断 東京都
・銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断
・樹木医 サクラ樹木診断(機器診断・レジ)
・樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました

サービス

・樹木診断(ツリーリスクアセスメント部門)
・GREEN MANAGEMENT

 

※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は RINNTECH 社(ドイツ)の登録商標で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。

※ この記事の製品名(PiCUS TreeMotion、PiCUS TMS 3、PiCUS Wind Measurement System、IML Tree Motion、TMS.Software)は IML Electronic 社(ドイツ)の、arbostat は ArboSafe 社(ドイツ)の製品名です。

人気の記事
最新の記事
おすすめ記事
  1. 背負式の噴霧器で、マンションの駐車場沿いのレッドロビンの生垣に薬剤を散布する作業員

    レッドロビン(ベニカナメモチ)の「ごま色斑点病」対策 東京都杉並区

  2. サクラ 倒木 根鉢 幹の切断面 砧公園

    東京都世田谷区砧公園のサクラ倒木(根返りを伴う倒伏)について 樹木医の考察

  3. デモンストレーション 参加者 ピカス トロニック 機材

    【求人募集】事務スタッフを1名募集します

  4. 剪定鋏 松の枝 松葉 短葉仕立て

    松の伝統技術「短葉仕立て」とは|剪定・芽切り・病害虫管理まで徹底解説

  5. ヒマラヤスギ 根返り 根鉢 駐車場 砧公園

    砧公園で2日連続の倒木事故——ヒマラヤスギはなぜ倒れたのか 樹木医の考察 東京都世田谷区

  6. ヒマラヤスギ 倒木 根鉢 カラーコーン 砧公園

    国土交通省の全国倒木調査を樹木医が読み解く

  7. 千代田区 桜 ソメイヨシノ 倒木

    千鳥ヶ淵の桜が倒木。砧公園でも再び倒木。樹木医が考える、東京の老齢サクラに起きていること

  8. サクラ 幹の根元 樹幹注入 注入器 ウッドスター

    桜の木の毛虫(サクラケムシ)対策──正体はモンクロシャチホコ、毒の有無と発生時期・駆除の方法を樹木医が解説

  9. 樹木医 ドドンパ エアレーション 土壌改良 桜 サクラ 樹勢回復 樹木治療

    サクラ並木 樹木医 土壌改良・エアレーション 東京都

  10. ベッコウタケ 倒木 樹木医 樹木診断 根 腐朽 腐れ サクラ

    ベッコウタケとは──サクラの根を腐らせるキノコと倒木、見つけたときの診断を樹木医が解説(東京都杉並区の倒木の事例)

  1. テンション PiCUS Tension 土壌水分張力 pF 根鉢 センサー 潅水 樹木医

    テンション(PiCUS Tension)の仕組みと使いどころ──土の水の取りにくさをpFで記録し、植栽直後の潅水を判断する方法を樹木医が解説

  2. ツリーモーション PiCUS TreeMotion 風 根元の傾き 根鉢 センサー 樹木医

    ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説

  3. 保護具 ヘルメット 保護眼鏡 フェイスシールド イヤーマフ 防護ズボン 手袋 ブーツ アーボリスト 樹上作業

    頭と体を守る ― ヘルメット・保護眼鏡・耳と手足の保護具|アーボリストの基礎 第3回

  4. 巨木 苔 幹 樹木の時間 草木成仏 樹木医 随想

    「山川草木悉皆成仏」は誰の言葉か 樹木の時間 第4回

  5. 剪定の時期 落葉樹 ケヤキ 春 夏 秋 冬 四季 木の一年 図解

    剪定の時期はいつ──落葉樹・常緑樹・針葉樹と花木、植木職人が木の一年で決める手入れの季節|樹木医が図解(Timing: When Japanese Gardeners Prune Deciduous, Evergreen and Conifer Trees)

  6. 樹形の骨格 ケヤキ 夏 冬 葉の下の枝ぶり 落葉樹 図解

    樹形の骨格とは──主幹・主枝・副主枝・側枝の見方と、切る前に木を読む庭師の目|樹木医が図解(Reading the Framework: Trunk, Scaffold and Lateral Branches)

  7. 樹上作業 地上作業員 グランドワーカー 立入禁止 ツリークライミング 2人の樹上作業

    樹上作業の一日 ― 登ってから降りるまでと、地上で支える役割|アーボリストの基礎 第2回

  8. 長谷川式大型検土杖 土層調査 植栽基盤 樹木医

    長谷川式大型検土杖で土の層を見る──深さ1mまでの採り方と、土色・土性・混じりものの見方を樹木医が解説|土壌調査と土壌改良 第5回

  9. 植木鋏 剪定鋏 比較 違い 形 庭師 道具 図解

    植木鋏と剪定鋏の使い分け──2つの鋏の形と役割、切り口を守る刃の向き|樹木医が図解(Ueki-basami and Sentei-basami: Two Japanese Shears and Their Roles)

  10. 施工前 施工後 比較 植栽帯 植栽リニューアル 墨田区

    マンションの植栽リニューアルの進め方──現状の確認・植栽デザイン・工事・植えた後の管理を、4つの事例で樹木医が解説

  1. 登録されている記事はございません。

関連記事