ダイナルート(DynaRoot)は、根元の傾斜計(インクリノメーター)と風速計で自然の風に揺れる樹木を数時間記録し、根返りへの安全率を統計で見積もるファコップ社の機器です。仕組みと測る条件に加え、根を切り進めるにつれて安全率が下がった事例と研究を、樹木医が解説します。
ハンガリーのFakopp(ファコップ)社の機器をひとつずつ取り上げる連載の第8回です。第6回では静的負荷試験(引張り試験)を、第7回では風で揺れる幹と根元を測るダイナツリーを紹介しました。今回のダイナルートは、根元の傾きと風だけで根返りへの安全率を出す機器です。後半では、根を切ると安全率がどれだけ下がるかを確かめます。この回は、メーカーの公開資料と論文をもとに書いています。
先に答え
- ダイナルートは、風速計、根元に付ける2方向の傾斜計、評価ソフトの3つでできています。ロープもウインチも使わず、自然の風を荷重にします。
- ある瞬間の風速と傾きには、はっきりした関係がありません。そこで3時間以上記録し、数分ごとにまとめた統計の値から「根返りが始まる風圧」を見積もり、想定する強風と比べて安全率を出します。
- 安全率は1.5を上回れば危険が低い、1.0未満は重大な危険、そのあいだは中程度とされます。強い風が来ないと測れないことと、風速計の置き方で結果が変わることが限界です。
- メーカーが公開している根切りの事例では、庭の1本の安全率が、掘って根を出しただけで1.19から0.86に、根を1本切ると0.61に、11本すべてを切ると0.14まで下がりました。
- 研究でも、幹に近い所で根を切るほど根の支えは大きく下がり、失った根の量がわずかでも支えは2割から4割あまり下がった例があります。根を切ったり溝を掘ったりした樹木は、結果の有効期間の1年を待たずに測り直しが要ることがある、と取扱説明書も書いています。

ダイナルートの考え方。自然の風で揺れる樹木の根元の傾きを傾斜計で、風の強さを近くの風速計で同時に記録する(イラストは当社作成)
ダイナルートとは──ロープの代わりに、本物の風で根を試す
ファコップ社の取扱説明書は、まず引張り試験の考え方から説明しています。幹のおよそ中ほどにケーブルを掛け、根元の傾きが0.25°に届かない程度の荷重をかけて、その反応から根返りに必要な回転力を外挿します。これを、樹冠の面積、抗力係数、その地域で起こり得る最大の風から出した回転力と比べた比が安全率です。
一方で取扱説明書は、引張り試験の短所として、静かな荷重は揺れる風をうまく表さないこと、重い機材と準備に手間がかかること、ケーブルを留める木や切り株が近くに無いこともあることを挙げています。風の荷重そのものを使えば、この手間が要りません。
難しいのは、風と樹木の反応の関係です。取扱説明書は、樹木を幹・枝・葉からなる多重の振り子にたとえ、風の荷重と直後の傾きに直接の関係は無いとしています。ただし、瞬間どうしには関係が無くても、長めの区間の平均などの統計の値どうしには関係があります。ダイナルートは、この統計の関係を使います。

瞬間の風速と傾きはばらばらに見えても、数分ごとにまとめると関係が見えてくる(模式図。値は説明のための例。当社作成)
構成と測り方
取扱説明書(2026年6月版)と製品ページによると、ダイナルートは次の3つでできています。
- 風速計: 樹木の近くで風速を1秒に1回記録します。理想は、建物などに遮られない高さ10m以上です。
- 2方向の傾斜計: 根元に付けて、直交する2方向の傾きを1秒に10回記録します。取り付け板をねじ1本で根元に留め、ボールヘッドと水準器で水平にしてから本体を載せます。
- 評価ソフト: Windowsで動くソフトで、風速と2方向の傾きを時刻で合わせ、短い区間に分けて統計の値を出し、安全率を計算します。データはメモリーカードかWi-Fiで移します。

ダイナルートの3つの構成と、データの流れ(イラストは当社作成)
| 部品 | 主な仕様 |
|---|---|
| 傾斜計 | 測定範囲は取扱説明書で±5°、製品ページで±2°、分解能0.001°、1秒に10回、温度補正、GPS内蔵、全天候型(IP65)、外部の12Vの電池 |
| 風速計 | 測定範囲 時速0〜150km、精度 時速0.2km、1秒に1回、GPS内蔵、全天候 |
| 評価ソフト | Windows用、風速と傾きの自動の合わせ込み、限界の風圧・相関係数・安全率の計算、オンラインのアカウントが必要(製品ページ) |
| 測る時間 | 最低3時間(長いほどよい) |

ダイナルートの傾斜計。根元のなるべく地際に取り付け板を留め、水平を合わせてから本体を載せる(イラストは当社作成)
安全率の出し方
ソフトは、風速を風圧に換え、数分ごとにまとめた風圧と傾きの点に曲線を当てはめます。取扱説明書によると、風圧と傾きには正接(タンジェント)の形の関係があり、その曲線を伸ばして「根返りが始まる風圧」(限界の風圧)を出します。これを、その地域で想定する最大の風の風圧で割った値が安全率です。計算は引張り試験とほぼ同じで、力の代わりに風圧を、瞬間の値の代わりに統計の値を使い、安全率の読み方も引張り試験とほぼ同じだとしています。
安全率は、1.5を上回れば危険が低い、1.0未満は根返りや折れの重大な危険、1.0〜1.5は中程度、と区切られています。取扱説明書は、安全率は入力した最大の風速に左右され、それを上回る風が吹けば危険が低い木でも倒れ得る、と警告しています。この回で紹介するファコップ社の研究と事例は、基準の風を秒速33m(時速約120km)としています。

測った範囲の点に曲線を当てはめて伸ばし、根返りが始まる風圧を見積もる(模式図。値は説明のための例。当社作成)
ファコップ社の正接の式は、引張り試験のデータで検証されています。280本を超える樹木を根返りまで引いた研究(Detter氏ら、2023年)では、初めの式は根の強さを系統的に高めに見積もり、ファコップ社のDivós氏が2019年に直した式は当てはまりがよく、論文は、見積もりが平均で実際より約3分の1低め(安全側)に出たとまとめています。ただし6本では、当てはめがうまくいかないか、現実離れした値になりました。ダイナルートのソフトがどの版の式を使っているかは、公開資料には書かれていません。
測るための条件
ダイナルートは天気に左右される機器です。取扱説明書が挙げている条件をまとめます。
- 風の強さ: 「最低条件は時速35km以上の突風」とする箇所と、「突風が時速25km以上の日に使う」とする箇所があります。2023年8月版の取扱説明書は最低条件を時速25kmとしていて、2026年6月版で「風速」の節と使い手の誤りの項目だけが35kmに改められ、引張り試験との比べの表などは25kmのまま残っているためです。ソフトは、最大の突風が時速25〜35kmのとき「突風が弱い」と警告します。風が強いほど精度は上がります。
- 記録の長さ: 3時間を勧め、3時間未満は使い手の誤りとしています。
- 風速計の場所: 地上10m、交通の多い道路から30m離し、風上の高い物からはその高さの10倍以上離します。樹木から1.5km以内なら、かなりよい相関が得られるとしています。300mより遠いときは、記録を長くし、まとめる区間を10分にするよう勧めています。
- 風向: 風向の違うデータはまとめずに分けて評価します。建物などの陰になる向きの風では、安全率が高く出ます。
- 落葉期: 葉の無い木を測るときは、ソフトで「Out of leaf」を選びます。

風速計の置き方の目安。高さ10m、道路から30m、風上の高い物からその高さの10倍以上(取扱説明書から当社作成。寸法は縮尺どおりではない。イラストは当社作成)
傾斜計の付け方にも注意が要ります。取扱説明書は、傾斜計が根と一緒に動かない所に付けることを誤りとし、板根の上、根元の腐朽した所や割れのある所、入り皮のある二又や株立ちの片方(この場合は1本に複数の傾斜計が要ります)、幹の高すぎる所を挙げています。心材ができていない若い木(広葉樹で胸高直径30cm未満、針葉樹で40cm未満)も対象外です。健全な根元の、なるべく地際に付けます。

傾斜計は、根と一緒に動く健全な根元の地際に付ける。板根の上や腐朽・割れのある所、幹の高い所は誤り(取扱説明書から当社作成。イラストは当社作成)
結果の読み方の注意もあります。根鉢のずれ、樹木から放射状に走る土の割れ、根鉢を囲む割れ、風上側の土の盛り上がりや風下側のくぼみ、最近傾いた木、土の水分の急な変化などの兆しがあるときは、出た安全率は当てはまらず、別の方法で確かめるよう求めています。こうした兆しは、外観診断で根元と周りの地面を見て拾うものです。
傾斜計の位置と、風速計の高さを変えた事例
メーカーが公開している事例では、1本の根元の周りに傾斜計を5台付けて同時に測りました。5台の安全率は0.76〜0.84でほぼそろい、メーカーは、根元が健全なら傾斜計1台で足りるとしています。
同じ事例で、風速計を高さ4m・5mに下げると、安全率は5mで0.57〜0.60、4mで0.35〜0.38と、大きく下がりました。ただ、資料の表を見ると、高さごとに記録した時間帯と最大の突風(10mで時速50km、5mで31km、4mで25km)が違い、5mと4mの記録は、取扱説明書(2026年6月版)が最低条件とする時速35kmを下回っています。高さだけの影響とは言い切れませんが、風速計の置き方で安全率が倍ほども変わり得ることを示す結果です。
引張り試験との違い
取扱説明書は、ダイナルート(とダイナツリー)と引張り試験の違いを次のように整理しています。
| 項目 | 静的負荷試験(引張り試験) | ダイナルート・ダイナツリー |
|---|---|---|
| 機材 | ケーブル・スリング・ウインチ・ロードセル・はしご・傾斜計(約50kg) | 風速計・傾斜計・(ダイナツリーは)エラストメーター(約20kg) |
| 荷重 | 静かな人工の荷重 | 実際の風 |
| 時間 | 1本あたり1〜3時間 | 数本をまとめて3時間以上 |
| 安全率の計算に要るもの | 樹冠の面積、抗力係数、限界の風速 | 限界の風速だけ |
| 天気 | 風が時速25km未満 | 風が時速25km超 |
1台の風速計で、半径1.5km以内の何本もの樹木を同時に測れ、取り付けた後は見張る必要がありません。一方で、急ぎのときに風が来ないこと、時間がかかることを、取扱説明書自身が短所としています。
ファコップ社と地元ショプロン大学の研究者は、ウィーンのひどく腐朽したセイヨウトネリコ5本を、それぞれ引張り試験とダイナルートで測りました(ダイナルートは5本とも同じ日。Fathi氏ら、2019年)。安全率はおおむね合いましたが、引張り試験の方がやや高く、ダイナルートの方が控えめ(低め)に出ました。著者らは、引く向きと風向のずれ、周りの木の陰、ダイナルートが信頼区間の下限で計算していることを理由に挙げています。そのうえで、実際に倒していないので、どちらが正確かは判断が難しいとしつつ、腐朽のひどい木なのでダイナルートの低めの値の方が実態に近いだろう、と述べています。なお、この研究と次の研究には、ファコップ社の代表が著者に入っています。
同じ大学の植物園で4本を季節と天気を変えて測った研究(Fathi氏ら、2020年)では、広葉樹の2本は、葉の落ちた秋の乾いた日に、春より4割あまり(セイヨウトチノキ47%、ケヤキ45%)高く出ています。セイヨウトチノキは、秋の雨の日には乾いた日の半分ほどに下がりました。4本だけの結果ですが、同じ木でも、いつ測るかで安全率が変わり得ることを示しています。
別の機器で根元の傾きと風を合わせて読んだ研究では、主にドイツ(ロストック)の204本を3年間測り、根元の周りの土に割れのある樹木が、時速60kmの突風でほかの木より統計ではっきり(有意に)大きく傾きました(Göcke氏ら、2018年)。この研究にも、使ったセンサーのメーカー(argus electronic 社)の社員と元社員が著者に入っています。
根を切ると、安全率はどう下がるか
取扱説明書は、ダイナルートの結果の有効期間を1年としたうえで、根の切断や溝掘りがあったときは1年以内でも測り直しが要ることがあるとしています。歩道の改修や埋設管の工事、外構の工事で、街路樹や庭木の根が切られることは珍しくありません。根を切ると、根の支えはどれだけ減るのか。メーカーの事例と研究で見ていきます。
メーカーの事例──根を切り進めながら6回測った庭の1本
ファコップ社が公開している事例は、郊外の庭にあった1本の樹木です(樹種は資料に書かれていません)。状態から伐採が決まっていたため、伐採を「主な根を失うにつれて安定がどう下がるか」を調べる6段階の試験にしました。測ったのはダイナルートではなく、ファコップの引張り試験(Pulling Test)で、安全率は秒速33m(時速約120km)の風に対して計算しています。
| 段階 | 安全率 | 手を付けない状態との比 |
|---|---|---|
| 手を付けない状態 | 1.19 | 100% |
| 根元を掘って根を出した | 0.86 | 72% |
| 根を1本切った | 0.61 | 51% |
| 根を4本切った | 0.33 | 28% |
| 根を7本切った | 0.27 | 23% |
| 根を11本(すべて)切った | 0.14 | 12% |
(安全率は事例の資料の値。比は当社が計算)

事例の段階。根元を掘って太い根を出し、幹の近くで根を切り進めた(イラストは当社作成)

切った根の数と安全率。掘っただけで約3割、1本切ると約半分に下がった(ファコップ社の公開事例の数値から当社作成)
目を引くのは、根を切る前、掘って根を出しただけで安全率が約3割下がったことです。根を切らなくても、根元の周りの土を取り除くだけで支えが落ちたことになります。1本目を切ると、手を付けない状態の約半分になり、1.0を大きく下回りました。ただしこれは1本だけの事例で、査読を経た論文ではありません。もともと伐採が決まっていた木で、手を付けない状態でも1.19と中程度の区分でした。切った根の太さや位置、引く向きとの関係も資料には書かれていません。
研究で確かめられていること
根の切断と根の支えについては、米国などで研究が重ねられています。表の米国の3本は、いずれも幹が1°傾くまでロープで引き、そのときの力などを根を切る前と後で比べています。
| 研究 | 樹木 | 根の切り方 | 根の支えの低下 |
|---|---|---|---|
| Smiley 2008 | 若いウィローオーク(胸高直径の平均12.8cm) | 根張りの根を1本ずつ | 1本目で平均12%、周の約半分で約30% |
| Smiley 2008 | 同上 | 幹の近くを直線の溝で | 幹径の3倍より外は有意な低下なし、2倍で15%、1倍で約23%、幹の際で35% |
| Smiley ほか 2014 | 39年生のアカカエデ10本(胸高直径の平均30cm) | 根張りの根を1本ずつ | 1本目で平均13%、根の数の3分の1で約35%、半分で平均47% |
| Miesbauer ほか 2025 | アカカエデ30本(胸高直径9.9〜17.0cm) | 幹径の1・3・5倍の距離に溝 | 1倍で45.2%、3倍で35.2%、5倍で22.3%(失った根の量は13.3%・4.1%・2.5%) |
| Fini ほか 2020 | セイヨウトチノキ・セイヨウシナノキ | 根元の片側か両側に溝(根系の最大70%を失う) | 44か月後も根返りへの抵抗が20〜66%低い(要旨で確認) |

根を切ったときの根の支えの低下(各論文の数値から当社作成)
研究からは、3つのことが読み取れます。1つ目は、幹に近い所で切るほど支えが大きく下がることです。2025年の研究では、幹径の5倍の距離の溝でも支えは2割ほど下がり、幹径の1倍では4割を超えました。2つ目は、失った根の量と支えの低下が釣り合わないことです。同じ研究で、幹径の5倍の溝で失った根は全体の2.5%、1倍でも13.3%にすぎません。3つ目は、根を失った樹木が枯れなくても、支えは長く戻らないことです。イタリアの研究では、根系の最大7割を失っても生存への影響は小さかった一方で、幹の太りは16〜28%、枝の伸びは30〜41%落ち、44か月後も根返りへの抵抗は20〜66%低いままでした。
先に紹介した280本超の根返りの研究も、根返りの初めに風下側の幹のすぐ際の地面がちょうつがいのように折れ曲がったと報告し、ほかの研究を引いて、根の支えは主に幹に近い根から生まれるとしています。
当社の考え方
当社のツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門は、外観診断で根元と周りの地面を見たうえで、アーボソニック3Dで幹の断面を診ています。根元の腐朽はレジ(Resi PD)の根株診断でも確かめます。ただ、断面の画像やレジの曲線は「幹や根元の材がどれだけ残っているか」を示すもので、根が土をつかむ力までは直接には測れません。ダイナルートは、その「根の支え」を、自然の風という本物の荷重で確かめようとする機器です。
同時に、研究と事例からは、ダイナルートの安全率も、風の強さ、風速計の置き方、季節や雨で大きく動くことがわかります。メーカーは安全率の計算に99.5%の信頼性があると記していますが、その根拠の詳しい中身は取扱説明書には書かれていません。数字だけで木を残すか伐るかを決めず、外観診断や断面の画像と合わせて読むことを大切にしたいと考えています。
根切りの事例と研究が示すのは、根の近くで工事をする前に、どこで、どの根を切るのかを決めておく意味です。幹に近い太い根ほど支えに効き、失った根の量がわずかでも支えは大きく下がり、その低下は地上の姿からは分かりにくいものです。当社も、根の近くの工事にあたって樹木診断を頼まれたことがあります。根の近くで工事が予定されている樹木は、工事の前に根元と根張りを診て、切らない範囲を決め、工事の後にもう一度診る、という流れで考えたいと思います。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。根の近くで工事が予定されている樹木や、倒木が心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回は、根元をたたいた音で土の中の太い根のありかを探す、ルートディテクター(Root Detector)を取り上げます。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(ダイナルート DynaRoot について)
Q1. ダイナルートでは何を測りますか?
A. 根元に付けた傾斜計で直交する2方向の傾きを、近くの風速計で風速を、同時に3時間以上記録します。ソフトが数分ごとの統計の値から根返りが始まる風圧を見積もり、想定する強風と比べて安全率を出します。
Q2. 静的負荷試験(引張り試験)とは何が違いますか?
A. 引張り試験はロープとウインチで人工の荷重をかけ、ダイナルートは自然の風を荷重にします。ダイナルートは重い機材が要らず、1台の風速計で何本も同時に測れますが、強い風が来ないと測れず、時間もかかります。
Q3. どのくらいの風が要りますか?
A. 取扱説明書には、時速35km以上の突風を最低条件とする箇所と、時速25km以上の突風の日に使うとする箇所があります。2023年8月版では最低条件が時速25kmで、2026年6月版で一部の箇所だけが35kmに改められたためです。ソフトは最大の突風が時速25〜35kmのとき警告を出します。風が強いほど精度は上がります。
Q4. 安全率はどう読みますか?
A. 1.5を上回れば危険が低い、1.0未満は重大な危険、そのあいだは中程度とされています。安全率は入力した最大の風速に対する値で、それを上回る風では危険が低い木でも倒れ得ます。最後は外観診断などと合わせて樹木医が判断します。
Q5. 根を切ると、安全率はどのくらい下がりますか?
A. メーカーが公開している1本の事例では、掘って根を出しただけで1.19から0.86に、根を1本切ると0.61に、11本すべてを切ると0.14まで下がりました。研究でも、幹に近い所で根を切るほど支えは大きく下がり、根張りの根を半分ほど切ると3〜5割下がった例があります。
Q6. 一度測った結果は、いつまで使えますか?
A. 取扱説明書は有効期間を1年としています。根の切断や溝掘り、根への菌の強い感染、周りの建物や樹木の変化、時速100kmを超える突風などがあったときは、1年以内でも測り直しが要ることがあるとしています。
Q7. どんな木でも測れますか?
A. 心材ができていない若い木(広葉樹で胸高直径30cm未満、針葉樹で40cm未満)は対象外とされています。根鉢のずれや地面の割れなど、根の破壊の兆しがすでにある木は、出た安全率が当てはまらないとされ、別の方法で確かめます。
出典・参考情報
メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)
・Fakopp「DynaRoot Root Testing System」製品ページ(英語) 構成、仕様、必要な風
・Fakopp「Manual for the DynaRoot and DynaTree evaluation system」(PDF・英語、2026年6月11日版) 引張り試験の考え方(p.2)、統計の考え方(p.3〜4)、安全率の考え方(p.5)、有効期間と測り直し(p.6)、使い手の誤り(p.6〜8)、風速計の距離・場所・風速(p.9)、統計の区間・風向(p.10)、引張り試験との比較(p.11)、仕様(p.12)、取り付け(p.14)、安全率の段階(p.24)
・Fakopp「How safety factor drops if the roots are cut? A brief case study by Tibor Horvath with Fakopp Pulling Test」(PDF・英語。本文に年の記載は無く、PDF の作成は2020年)
・Fakopp「Inclinometer position and anemometer height test」(PDF・英語。本文に年の記載は無く、PDF の作成は2021年)
研究
・Buza, Á.K. & Divós, F. (2016) Root stability evaluation with non-destructive techniques. Acta Silvatica et Lignaria Hungarica 12(2): 125–134
・Detter, A., Rust, S. & Krišāns, O. (2023) Experimental test of non-destructive methods to assess the anchorage of trees. Forests 14(3): 533
・Fathi, S., Divos, F. & Bejo, L. (2019) Comparison between two methods of non-destructive evaluation of standing trees. NDT in Canada 2019
・Fathi, S., Bejo, L. & Divos, F. (2020) Investigating the effect of weather and seasonal factors on root stability using dynamic measurements. Open Journal of Forestry 10: 124–134
・Göcke, L., Rust, S. & Ruhl, F. (2018) Assessing the anchorage and critical wind speed of urban trees using root-plate inclination in high winds. Arboriculture & Urban Forestry 44(1): 1–11
・Smiley, E.T. (2008) Root pruning and stability of young willow oak. Arboriculture & Urban Forestry 34(2): 123–128
・Smiley, E.T., Holmes, L. & Fraedrich, B.R. (2014) Pruning of buttress roots and stability changes of red maple (Acer rubrum). Arboriculture & Urban Forestry 40(4): 230–236
・Miesbauer, J.W., Koeser, A.K. & Kane, B. (2025) Impact of trenching on root loss and tree stability. Arboriculture & Urban Forestry 51(1): 94–102
・Fini, A., Frangi, P., Mori, J., Sani, L., Vigevani, I. & Ferrini, F. (2020) Evaluating the effects of trenching on growth, physiology and uprooting resistance of two urban tree species over 51-months. Urban Forestry & Urban Greening 53: 126734(要旨を確認)
樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事
機器の解説・導入・研修
・ダイナツリー(DynaTree)の仕組みと考え方──自然の風で根元の傾きと幹の伸び縮みを測り、根返りと幹折れの安全率を見積もる方法を樹木医が解説
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・アーボエレクトロ(ArborElectro)の仕組みと測り方──電気の通りやすさで幹の断面を描き、腐朽の初期を探るインピーダンストモグラフを樹木医が解説
・アーボソニック3D(ArborSonic 3D)の仕組みと得られる結果──センサーの数、測れる太さ、断面画像と安全率の読み方を樹木医が解説
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・IML社の樹木診断機器の点検・校正とセミナー──連載のまとめとして、外観診断から総合判定までの流れで機器の使いどころを樹木医が解説
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・フラクトメーター(IML Fractometer)の仕組みと考え方──成長錐で抜いた木材の芯を折り、腐朽による強さの低下と壊れ方を読む方法を樹木医が解説
・マイクロハンマー(IML Micro Hammer)の仕組みと使いどころ──幹の2点間を音が伝わる時間で内部を推し量る予備調査の機器を樹木医が解説
・テンション(PiCUS Tension)の仕組みと使いどころ──土の水の取りにくさをpFで記録し、植栽直後の潅水を判断する方法を樹木医が解説
・ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説
・ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説
・キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説
・トロニック(PiCUS TreeTronic 3)の構成と測り方──電気抵抗で断面を描き、音波の画像と重ねて読む方法を樹木医が解説
・ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)の構成と測り方──測定点の数、キャリパーの扱いを樹木医が解説
・IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説
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・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
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・アーボソニック3Dの使い方を、道具から断面画像の色の見方まで──取扱説明書と現場の写真で樹木医が解説
・アーボソニック3Dとは何か 音で幹の断面を樹木診断する診断機器を、樹木医が一般の方向けに解説します
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした
・音で、樹木の中を視る 非破壊樹木診断機器「ドクターウッズ」
・樹木診断 無料モニター募集
・PiCUS(ピカス)導入のお知らせ 樹木診断(機器診断) 非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へ
・レジ(Resi PD)の波形の読み方──回転抵抗と貫入抵抗の2本の線、樹種による違い、根株の読み方を樹木医が解説
・樹木模擬診断研修会を終えて 人の眼 × 機械の眼が拓く、新しい都市樹木管理のかたち
・東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説
・樹木医がイギリスの樹木診断に学ぶ ― 都市の樹木を守るための対話と発見
機器診断の記録
・山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断 ピカス・ツリートロニック・レジとドローンで診た結果と、残すための3つの対策
・埼玉県内の伝統校 樹木医によるクスノキ2本の機器診断 ピカスで幹の内部を診る
・樹木医が街路樹エンジュの樹木診断と伐採後の腐朽具合の答え合わせ
・山形県での出張樹木診断 樹木医によるピカス、レジでの診断検証
・診断した木を、その日のうちに伐る──ピカス・アーボソニック3D・レジを同一木のサクラで比べた「樹木診断機器比較研修会」千葉県習志野市
・都有施設80万本の樹木一斉点検 約14,000本(速報)の「異状あり」を、樹木医はどう読むか
・港区三田 薬王寺様の境内 樹木診断 地上と樹上、樹木医がふたつの視点で木の内側を読む
・砧公園で4回目の倒木 樹木医として思うこと
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・樹木医による都内の学校施設でのサクラの樹木診断 豊島区
・学校施設 ケヤキなど樹木医診断 東京都
・公園樹木診断 樹木医による機器診断・根株診断(レジ) 東京都
・マンション内のイチョウ(銀杏) 樹木医診断(機器診断) 東京都大田区
・公園のサクラ(桜)を樹木医が樹木診断(機器診断)しました
・樹木医 保護樹木サクラ等 樹木診断 東京都杉並区
・学校施設内 桜(サクラ)樹木医診断 東京都
・銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断
・樹木医 サクラ樹木診断(機器診断・レジ)
・樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました
サービス
・樹木診断(ツリーリスクアセスメント部門)
・GREEN MANAGEMENT
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は Frank Rinn 氏(ドイツ)の登録商標(製品は RINNTECH 社)で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
※ この記事の製品名(DynaRoot、DynaTree、Fakopp Pulling Test、ArborSonic 3D、PiCUS TreeQinetic)は、各社の商標または登録商標です。






















