当社が樹木診断で使っているアーボソニック3Dとブルートゥースキャリパーは、ハンガリーのFakopp(ファコップ)社の機器です。森林と木材の大学がある町ショプロンを拠点に、1994年から続く会社の歩みと、幹・根・木材を調べる製品の全体像を、メーカーの公開資料をもとに樹木医がまとめました。
先日まで、ドイツのIML社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載を書かせていただきました(IML連載の第1回)。今回からは、もうひとつのメーカー、ハンガリーのファコップ社の機器を同じ形で取り上げます。当社のアーボソニック3Dは、東京を中心に、サクラ、ケヤキ、ユリノキなどの診断に使っています。その機器をつくっている会社を、まず知っておきたいと思いました。第1回は、会社の成り立ちと製品の全体像です。
先に答え
- ファコップ社は、ハンガリー西部の町ショプロンにある、樹木と木材の検査機器のメーカーです。公式サイトによると、1994年に始まった個人の事業を前身に、2005年に会社として設立されました。
- 社名はハンガリー語の「fa(木)」と「kopp(コツンとたたく音)」を合わせたものです。木をたたき、音の伝わり方で中を調べる。社名がそのまま、この会社の調べ方を表しています。
- 最初の製品は、2点のあいだを音が伝わる時間を測るマイクロセコンドタイマー(1994年)です。そこから、幹の断面を描く音響トモグラフ、電気で断面を描く機器、ロープで引いたり自然の風を受けたりしたときの、根元の傾きや幹の伸び縮みを見る機器へと広がりました。
- 公式サイトは製品を「幹を測る」「根を測る」「木材の試験」「その他」の4つに分けています。当社が持っているのは、このうちアーボソニック3Dとブルートゥースキャリパーです。
- 東京都建設局の街路樹診断等マニュアルは、使える機器の表に「多点式応力波速度測定器(アーボソニック3D)ハンガリー FAKOPP社」を載せています。
ショプロンという町──森林と木材の大学がある町
ファコップ社の公式サイトに載っている住所は、ハンガリー西部、オーストリアとの国境に近い町ショプロン(Sopron)です。問い合わせのページには、Ágfalva(アーグファルヴァ)の住所と、ページの下にショプロン市内の住所があります。当社の手元にあるアーボソニック3Dの取扱説明書(2020年版、2026年9月版)の製造元の欄は、Ágfalvaの住所です。

ファコップ社のあるショプロンは、ハンガリーの西の端、オーストリアとの国境の近くにある(Natural Earth のデータをもとに当社作成)
ショプロンには、森林と木材を学ぶ大学があります。ショプロン大学の沿革によると、大学の始まりは1735年、当時のハンガリー王国の鉱山の町Selmecbánya(現在のスロバキアのバンスカー・シュティアヴニツァ)に置かれた、鉱山の役人を育てる学校でした。のちに森林の教育が加わり、第一次世界大戦の後、町が新しい国の領土になったため、1919年に学生と教員がショプロンへ移ってきました。1957年には木材工業の技術者の教育が始まり、今も森林学部と、木材科学を含む工学部があります。
ファコップ社の歩みは、この大学と重なっています。米国農務省の林産物研究所が2004年に出した、立木の腐朽を音の伝わる時間で調べるためのガイドには、共著者の1人として、Ferenc Divós(フェレンツ・ディヴォーシュ)氏が「西ハンガリー大学 木材非破壊試験研究室 准教授」の肩書きで載っています。西ハンガリー大学は、当時のショプロンの大学の名前です。そしてファコップ社が公式サイトに載せている2019年の講演資料の表紙には、Divós氏の名前が、「Fakopp Enterprise Bt.(1994年から)」と「ショプロン大学(1989年から)」の2つの所属とともに書かれています。公式サイトの2024年1月のお知らせ(樹木診断機器の冬の講習)では、講師のDivós氏を「Fakopp Enterpriseのオーナーで、ハンガリー農業・生命科学大学の教授」と紹介しています。
「木をコツンとたたく」──ファコップという名前と、1994年からの歩み
同じ講演資料には、社名の由来が書かれています。ハンガリー語の「fa」は木、「kopp」は木をたたいたときのコツンという音です。私たちが外観診断で木槌を当て、音の違いで幹の中を推し量るのと、同じ発想の名前です。

社名はハンガリー語の「fa(木)」と「kopp(コツンとたたく音)」から。木をたたき、音で中を調べる(イラストは当社作成)
公式サイトの会社概要は、ファコップ社を、森林と木材の産業のための検査機器を開発、製造、販売する会社として、2005年に設立されたと説明しています。その前の1994年から2005年までは個人の事業で、それを含めて25年を超える経験があるとしています。取扱説明書の製造元の名前は、2020年版では「Fakopp Enterprise Bt.」、2026年9月版では「Fakopp Kft.」になっています。
始まりの年の1994年9月には、ショプロンで第1回の欧州木材非破壊試験シンポジウムが開かれ、そこでマイクロセコンドタイマーが初めて展示されたと、講演資料にあります。会社概要に載っている製品の年表を、樹木診断に関わるものを中心に整理すると、次のとおりです。
| 年 | 製品・出来事 | 何を調べるか |
|---|---|---|
| 1994 | マイクロセコンドタイマー | 2点のあいだを音が伝わる時間 |
| 1996 | ネジ引き抜き力計 | 木材にねじ込んだネジを抜く力(材の密度の目安) |
| 1998 | ポータブル木材グレーダー | 製材のヤング率 |
| 2000・2002 | Fakopp 2D | 同社で最初の音響トモグラフィー。2002年に断面を細かい区画に分けて計算する方法を加えた |
| 2005 | ツリーソニック、共鳴式の丸太グレーダー | 工業用の材の硬さ、丸太を伝わる音の速さ |
| 2006 | アーボソニック3D | 幹の断面の音の速さの分布。複数の高さを重ねて立体に |
| 2007 | ウルトラソニックタイマー | 薄い単板や繊細な材の音の伝わる時間 |
| 2009 | ルートディテクター | 土の中の太い根の位置 |
| 2011・2017 | 静的負荷試験(引張り試験)の機器 | ロープで引いたときの根元の傾きと幹の伸び縮み。2017年に新しい中央装置 |
| 2016 | ダイナルート | 自然の風による根元の傾き |
| 2018 | アーボエレクトロ | 電気の流れにくさの分布から描く幹の断面 |
| 2020 | アーボソニック3DのLudwigセンサー | センサーの間に打つ補助の釘で、断面をより細かく |
出典: Fakopp「About us」(英語版・ハンガリー語版)。「何を調べるか」は各製品ページと取扱説明書をもとに当社が要約

ファコップ社の製品の年表。2点の時間を測る機器から、断面、根、樹木全体へと広がってきた(会社概要の年表から当社作成)
年表を眺めると、出発点は「音の伝わる時間」です。2点のあいだを測るタイマーが、たくさんの点を同時に測るトモグラフになり、同じ時間の測り方が土の中の根を探すルートディテクターにも使われています。製材や丸太の等級づけの機器が並ぶのは、木材の非破壊試験の研究から生まれた会社だからだと思います。講演資料は、会社の分野を、都市の樹木の診断、製材の強度の等級づけ、木造の構造物の評価、楽器に使う材の選別の4つに挙げています。
製品の全体像──幹・根・木材・そのほか
公式サイトは、製品を4つに分けて並べています。2026年10月時点の一覧を、この連載で取り上げる回と合わせて整理しました。
| 公式サイトの区分 | 製品 | 何を測る機器か | この連載の回 |
|---|---|---|---|
| 幹を測る | アーボソニック3D(ArborSonic 3D) | 幹に打ったセンサーのあいだを音が伝わる時間から描く断面 | 第2回 |
| アーボエレクトロ(ArborElectro) | 電気の流れにくさの分布から描く断面。最大32個の電極 | 第3回 | |
| ブルートゥースキャリパー | センサーどうしの距離。Bluetoothでソフトに送る | 第4回 | |
| マイクロセコンドタイマー(Microsecond Timer) | 2点のあいだを音が伝わる時間 | 第5回 | |
| 引張り試験(Pulling Test) | ロープで引いたときの力、根元の傾き、幹の伸び縮み | 第6回 | |
| ダイナツリー(DynaTree) | 自然の風を受けたときの根元の傾きと幹の伸び縮み | 第7回 | |
| 根を測る | ダイナルート(DynaRoot) | 自然の風を受けたときの根元の傾き | 第8回 |
| ルートディテクター(Root Detector) | 土の中の太い根の位置(音は土より根を速く伝わる) | 第9回 | |
| 木材の試験 | ポータブル木材グレーダー、共鳴グレーダー、ネジ引き抜き力計 | 製材の強さの等級、材の密度の目安 | 第10回 |
| その他 | 超音波風速計、ボール風速計、空気圧ポール、コンクリートソニック | 風速、風速計を高く上げる柱、コンクリートの断面 | 第7回(風速計)・第10回 |
出典: Fakopp 公式サイトの製品一覧と各製品ページ。引張り試験とダイナツリーは「幹を測る」「根を測る」の両方に載っている。ツリーソニックタイマーとウルトラソニックタイマーは製品一覧には無く、取扱説明書がダウンロードページにある(第5回で扱う)

ファコップ社の製品の4つの区分。太い枠は当社が持っている機器(公式サイトの区分から当社作成)
IML連載の第1回では、機器を測る範囲で「点、線、面、樹木全体、土の中」と並べてみました。同じ見方でファコップ社の製品を並べると、マイクロセコンドタイマーは2点のあいだ、アーボソニック3Dとアーボエレクトロは幹の断面という面、引張り試験とダイナツリー、ダイナルートは根から梢までを含めた樹木全体の動き、ルートディテクターは土の中の根の位置を対象にしています。メーカーが示している整理ではなく、私の見方です。

機器ごとに調べる範囲が違う。2点のあいだ、断面、樹木全体、土の中の根(当社の整理)
ロープで引くか、自然の風を待つか
ファコップ社の製品の中で、目を引くのが、自然の風を使う試験です。IML連載の第7回で紹介した静的負荷試験(引張り試験)は、ロープとウインチで木を静かに引き、根元の傾きや幹の伸び縮みから、根返りや幹折れへの安全率を見積もる方法でした。ファコップ社も引張り試験の機器をつくっていますが、2016年のダイナルートからは、ロープの代わりに自然の風を荷重にして、根元のごくわずかな傾きを何時間も記録する方法を製品にしています。製品ページによると、ダイナルートは時速25km以上の突風がある日に、3時間以上記録します。
2019年の講演資料には、2つの方法を比べた表が載っています。メーカーの説明を、そのまま整理すると次のとおりです。
| 比べる点 | 引張り試験(ロープで引く) | 動的な試験(自然の風) |
|---|---|---|
| 引くための支点(アンカー) | 要る | 要らない |
| 主な道具 | ロープ、引く装置、力の計 | 風速計 |
| 荷重 | 静かにかける力 | 実際の風 |
| かかる時間 | 1本に1〜3時間 | 10本で3時間 |
| 樹冠の面積などの入力 | 要る | 要らない |
| 向いている天気 | 風速25km/h未満 | 風速25km/h超 |
| 結果 | 安全率 | 安全率 |
出典: Divós, F.「Tree Diagnostics」講演資料(2019年)p.62。メーカーの比べ方で、当社が確かめた結果ではない。それぞれの確かさは第6〜8回で研究とあわせて見ていく

左はロープで静かに引く引張り試験(ロープは樹冠の中に掛け、ウインチと力の計をつないだ支点の木は、ロープの高さの2倍以上離す)、右は自然の風を荷重にして根元の傾きを記録する試験(イラストは当社作成)
研究と教育──大学の研究とつながる会社の活動
講演資料は、会社の活動として、音と電気を使った非破壊試験、センサーの開発、機器と計算方法の開発、そして講習を挙げています。公式サイトから分かる研究と教育の活動を、表にまとめました。
| 活動 | 内容 |
|---|---|
| 研究への協力 | 米国農務省 林産物研究所のガイド(2004年)に、Divós氏が共著者として参加。ガイドはマイクロセコンドタイマーとFakopp 2Dを紹介している |
| 事例の公開 | 公式サイトに事例7件(自然の風での根の試験の風向き、Ludwigセンサー、根を切りながらの引張り試験、傾き計5台の試験、電気で描く断面の季節と1日の変化、英国での講演など) |
| 講習 | 専門の担当者による、対面とオンラインのセミナー |
| 欧州の教育事業 | Erasmus+の「Tree Assessor」(2019年9月〜2021年12月)。ポーランドの研修機関が代表で、ポーランドの樹木の研究所(Instytut Drzewa 社)、ラトビアの樹木管理の協会(Latvian Arboriculture Society)、ファコップ社が参加。中欧・東欧の樹木診断の講習の基準と教材(機器による診断を含む5点)をつくった |
| 修理と支援 | 保証の期間を過ぎた製品の修理。講演資料では、オンラインの講習と遠隔での操作の支援も挙げている |
出典: Fakopp 公式サイト(Case Studies、Trainings and lectures、Tree Assessor、Repair and Maintenance)、講演資料(2019年)p.5・p.64、Wang ほか(2004)
講演資料の初めの方に、会社の使命と目標が書かれています。使命は、樹木の管理に携わる人を、樹木診断の機器で支えること。目標は、安全を保ちながら、都市の樹木をできるだけ長く残すことです。機器のメーカーが、目標を「伐るか伐らないか」ではなく「安全を保ちながら長く残す」と書いていることに、私は共感しました。
日本での扱い
ファコップ社の機器、とくにアーボソニック3Dは、日本の公共の樹木診断でも名前が挙がっています。確かめられたものを整理しました。
| 資料 | 書かれていること |
|---|---|
| 東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 | 使える機器の表(p.53)に「多点式応力波速度測定器(アーボソニック3D)ハンガリー FAKOPP社」。参考資料に測定方法と注意、専用の診断カルテ(単断面・多断面)がある |
| 樹木医学会 第24回大会の発表(高村ほか 2020) | 一般社団法人街路樹診断協会(現・一般社団法人街路樹・都市樹木診断協会)に所属する著者らが、報告の中で貫入抵抗測定器(IML-RESI)とアーボソニック3Dの2機種を推奨 |
| 日本の研究(山下ほか 2025) | サクラの円板をアーボソニック3D(センサー12個)で測り、目視と触感で判定した腐朽の面積と比べた |
| メーカーの販売店一覧 | 日本は FTS., Ltd.(東京都中央区) |
東京都のマニュアルでの呼び名「多点式応力波速度測定器」は、たくさんのセンサーで、たたいた衝撃(応力波)が伝わる速さを測る機器、という意味です。ピカスと同じく、音の伝わる速さから幹の中を推し量る仲間にあたります。

健全な断面(左)では音はまっすぐ届き、空洞のある断面(右)では回り込むので遅れて届く(イラストは当社作成)
当社の考え方──アーボソニック3Dとブルートゥースキャリパーの使い方
当社が持っているファコップ社の機器は、アーボソニック3Dとブルートゥースキャリパーの2つです。どちらも、日本の販売店の FTS., Ltd. から購入しました。アーボソニック3Dの導入は2025年です。アーボソニック3Dは、幹の周りに打ったセンサーを1個ずつたたき、音がほかのセンサーへ届く時間から、断面の音の速さの分布を描きます。ブルートゥースキャリパーは、センサーどうしの距離を測ってソフトに送る大きな挟み尺です。メーカーは幹の形が円や楕円でないときに使うものと説明していますが、当社では、アーボソニック3Dで測る木では毎回使っています。使い方はアーボソニック3Dの使い方にまとめておりますので、詳しくは第2回と第4回でお伝えします。

幹に打ったセンサーを2個ずつアンプボックスにつなぎ、バッテリーボックスからパソコンへ送る(イラストは当社作成)

ブルートゥースキャリパー。丸い表示部から2本の黒い腕が開き、腕の先のピンのあいだの距離を測る(イラストは当社作成)
どの機器も、使う順番は変わりません。木槌でたたき、根元を確かめる外観診断を先に行い、内部の異常が疑われた樹木にだけ機器を当てます。必要があれば、断面の画像で当たりをつけた所を、レジ(Resi PD)で確かめます。同じ1本のサクラをピカス、アーボソニック3D、レジで測り、その日のうちに伐って断面と照らし合わせた樹木診断機器比較研修会は、結果を読む目を鍛える機会でした。

当社の診断の流れの中の、ファコップ社の機器の位置(当社作成の図)
機器が出すのは、画像と数字です。それを樹木の状態に置き換えて読むのは、樹木医の仕事です。数値が出たからといって、すぐに伐採の話にはいたしません。安全の確保と、樹木を残す努力の両方から考えます。ファコップ社が掲げる「安全を保ちながら長く残す」という目標は、当社がこの機器を使う理由とも重なっています。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。ご依頼は、マンション管理組合様、学校施設、寺社の御神木など様々です。幹の内部が気になる樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
この連載で取り上げる製品
次回からは、製品をひとつずつ取り上げます。メーカーの取扱説明書と公開資料、論文で仕組みと使いどころを確かめ、当社が持っている機器については現場での使い方もあわせてお伝えします。
- 第2回 アーボソニック3D──音で幹の断面を描く
- 第3回 アーボエレクトロ──電気で幹の断面を描く
- 第4回 ブルートゥースキャリパー──幹の形を測る
- 第5回 マイクロセコンドタイマー、ツリーソニックタイマー、ウルトラソニックタイマー──2点のあいだを音が伝わる時間
- 第6回 ファコップの引張り試験(Pulling Test)──ロープで静かに引いて、根返りと幹折れへの強さを見積もる(動的な試験との違い、日本での導入と報告も)
- 第7回 ダイナツリー──自然の風で、幹と根を見る(風速計もこの回で)
- 第8回 ダイナルート──自然の風で、根の支えを見る
- 第9回 ルートディテクター──音で、土の中の太い根を探す
- 第10回 木材グレーダーなどの周辺製品と、連載のまとめ
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(ファコップ社と樹木診断機器について)
Q1. ファコップ社とはどんな会社ですか?
A. ハンガリー西部の町ショプロンにある、樹木と木材の検査機器のメーカーです。公式サイトによると、1994年に始まった個人の事業を前身に、2005年に会社として設立されました。アーボソニック3Dなどの樹木診断機器のほか、製材の等級づけなど木材の試験の機器もつくっています。
Q2. 「ファコップ」という名前には、どんな意味がありますか?
A. ハンガリー語の「fa(木)」と「kopp(コツンとたたく音)」を合わせた名前です。木をたたき、音の伝わり方で中を調べるという、この会社の機器の調べ方をそのまま表しています。
Q3. ファコップ社の最初の製品は何ですか?
A. 2点のあいだを音が伝わる時間を測るマイクロセコンドタイマーです。会社の講演資料によると、1994年9月にショプロンで開かれた欧州木材非破壊試験シンポジウムで初めて展示されました。
Q4. ファコップ社の樹木診断機器には、どんな種類がありますか?
A. 音で断面を描くアーボソニック3D、電気で断面を描くアーボエレクトロ、センサーの距離を測るブルートゥースキャリパー、2点の時間を測るマイクロセコンドタイマー、ロープで引く静的負荷試験(引張り試験)の機器、自然の風で揺れを見るダイナツリーとダイナルート、根の位置を探すルートディテクターなどがあります。
Q5. アーボソニック3Dは、日本の街路樹診断でも使われていますか?
A. 東京都建設局の「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」は、使える機器の表に「多点式応力波速度測定器(アーボソニック3D)」を載せ、専用の診断カルテも用意しています。当社も、東京を中心に樹木診断で使っています。
Q6. ロープで引く試験と、自然の風を使う試験は何が違いますか?
A. ロープで引く引張り試験は、引くための支点と引く装置が要り、風の弱い日に行います。自然の風を使うダイナルートなどは、支点が要らない代わりに、時速25km以上の突風がある日に何時間も記録します。どちらも結果は安全率で示します。詳しくは第6〜8回で取り上げます。
Q7. 機器の結果だけで、伐採するかどうかが決まりますか?
A. 決まりません。東京都のマニュアルも、機器診断の結果だけで総合判定を出さず、外観診断とあわせて判定するとしています。当社も、樹勢、根元の状態、立地、これまでの管理を重ねて判断します。
出典・参考情報
メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)
・Fakopp「About us」(英語)、「Rólunk」(ハンガリー語) 会社の設立、製品の年表
・Fakopp 公式サイト 製品一覧(英語) と各製品ページ(ArborSonic 3D、ArborElectro、Bluetooth Caliper、Microsecond Timer、Pulling Test、DynaTree、DynaRoot、Root Detector ほか)
・Fakopp「Contact」(英語) 所在地、各国の販売店
・Fakopp「Case Studies」(英語)
・Fakopp「Winter course on instrumental tree assessment」(英語、2024年1月4日) Divós 氏の紹介
・Divós, F.「Tree Diagnostics: Instrument supported tree stability evaluation」講演資料(PDF・英語、2019年) 所属(p.1)、社名の由来(p.2)、1994年のシンポジウム(p.3)、活動・分野・使命・目標(p.5〜8)、静的と動的の比べ(p.62)、支援(p.64)
・Fakopp「Trainings and lectures」(英語)、「Tree Assessor」Erasmus+ 事業(英語)、「Repair and Maintenance」(英語)
・Fakopp Enterprise, ArborSonic 3D User’s Manual v6.5 (2020)、Fakopp Kft.「ArborSonic 3D Manual」(PDF・英語、2026年9月7日版) 製造元の欄
大学・研究
・University of Sopron「History of the University」(英語)
・Wang, X., Divos, F., Pilon, C., Brashaw, B.K., Ross, R.J. & Pellerin, R.F. (2004) Assessment of decay in standing timber using stress wave timing nondestructive evaluation tools—A guide for use and interpretation. USDA Forest Service, FPL-GTR-147(PDF・英語) 著者の所属、Fakopp の機器の紹介(p.6〜7)
・山下香菜ほか (2025) 白色腐朽による‘染井吉野’樹幹材の音速と圧縮強度の低下率. 樹木医学研究 29(2): 100–111
・高村聡ほか (2020) 都市樹木診断の成り立ちと近年の動向(4)──精密診断機器類の概要と特性,方法──. 樹木医学研究 24(2): 132–133(樹木医学会 第24回大会の口頭発表)
制度
・東京都建設局「令和3年度 街路樹診断等マニュアル」 使用可能な主な樹木診断機器(p.53)、総合判定(p.65)。第VII章 参考資料(リンク先の本編とは別の冊子)の測定方法(p.108)、様式5・6 腐朽診断カルテ(アーボソニック単断面・多断面、p.139・141)
地図
・Natural Earth「Admin 0 – Countries」1:50m(パブリックドメイン) ショプロンの位置の地図の国境線
樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事
機器の解説・導入・研修
・IML社の樹木診断機器の点検・校正とセミナー──連載のまとめとして、外観診断から総合判定までの流れで機器の使いどころを樹木医が解説
・IML社の樹木診断機器のソフトウェアとクラウド──IML Tree InspectionとPD-Tools Proで、測ったデータを診断の材料にする方法を樹木医が解説
・フラクトメーター(IML Fractometer)の仕組みと考え方──成長錐で抜いた木材の芯を折り、腐朽による強さの低下と壊れ方を読む方法を樹木医が解説
・マイクロハンマー(IML Micro Hammer)の仕組みと使いどころ──幹の2点間を音が伝わる時間で内部を推し量る予備調査の機器を樹木医が解説
・テンション(PiCUS Tension)の仕組みと使いどころ──土の水の取りにくさをpFで記録し、植栽直後の潅水を判断する方法を樹木医が解説
・ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説
・ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説
・キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説
・トロニック(PiCUS TreeTronic 3)の構成と測り方──電気抵抗で断面を描き、音波の画像と重ねて読む方法を樹木医が解説
・ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)の構成と測り方──測定点の数、キャリパーの扱いを樹木医が解説
・IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説
・IML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)の機種とオプション──レジ(Resi PD)7機種の違いと選び方を、樹木医が解説
・IML社とは──レジ(Resi PD)とピカスをつくるドイツの樹木診断機器メーカーを、樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・アーボソニック3Dの使い方を、道具から断面画像の色の見方まで──取扱説明書と現場の写真で樹木医が解説
・アーボソニック3Dとは何か 音で幹の断面を樹木診断する診断機器を、樹木医が一般の方向けに解説します
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした
・音で、樹木の中を視る 非破壊樹木診断機器「ドクターウッズ」
・樹木診断 無料モニター募集
・PiCUS(ピカス)導入のお知らせ 樹木診断(機器診断) 非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へ
・樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)について
・樹木模擬診断研修会を終えて 人の眼 × 機械の眼が拓く、新しい都市樹木管理のかたち
・東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説
・樹木医がイギリスの樹木診断に学ぶ ― 都市の樹木を守るための対話と発見
機器診断の記録
・山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断 ピカス・ツリートロニック・レジとドローンで診た結果と、残すための3つの対策
・埼玉県内の伝統校 樹木医によるクスノキ2本の機器診断 ピカスで幹の内部を診る
・樹木医が街路樹エンジュの樹木診断と伐採後の腐朽具合の答え合わせ
・山形県での出張樹木診断 樹木医によるピカス、レジでの診断検証
・診断した木を、その日のうちに伐る──ピカス・アーボソニック3D・レジを同一木のサクラで比べた「樹木診断機器比較研修会」千葉県習志野市
・都有施設80万本の樹木一斉点検 約14,000本(速報)の「異状あり」を、樹木医はどう読むか
・港区三田 薬王寺様の境内 樹木診断 地上と樹上、樹木医がふたつの視点で木の内側を読む
・砧公園で4回目の倒木 樹木医として思うこと
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・樹木医による都内の学校施設でのサクラの樹木診断 豊島区
・学校施設 ケヤキなど樹木医診断 東京都
・公園樹木診断 樹木医による機器診断・根株診断(レジ) 東京都
・マンション内のイチョウ(銀杏) 樹木医診断(機器診断) 東京都大田区
・公園のサクラ(桜)を樹木医が樹木診断(機器診断)しました
・樹木医 保存樹木サクラ等 樹木診断 東京都杉並区
・学校施設内 桜(サクラ)樹木医診断 東京都
・銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断
・樹木医 サクラ樹木診断(機器診断・レジ)
・樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました
サービス
・樹木診断(ツリーリスクアセスメント部門)
・GREEN MANAGEMENT
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は Frank Rinn 氏(ドイツ)の登録商標(製品は RINNTECH 社)で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
※ この記事の製品名(ArborSonic 3D、ArborElectro、Fakopp Bluetooth Caliper、Microsecond Timer、TreeSonic、UltraSonic Timer、DynaTree、DynaRoot、Root Detector、UltraSonic Anemometer、Ball Anemometer、ConcreteSonic ほか)は Fakopp 社(ハンガリー)の製品名、PiCUS と IML-RESI は IML 社・IML Electronic 社(ドイツ)の製品名です。製品名は各社の商標または登録商標です。Bluetooth は Bluetooth SIG, Inc. の登録商標です。






















