ファコップ(Fakopp)の静的負荷試験(引張り試験)は、ロープで木を静かに引き、根元の傾きと幹の伸び縮みから根返りと幹折れの安全率を見積もる方法です。機器の構成、傾き0.2°で止める試験の流れ、根返りの曲線の考え方、風で測る動的な試験との違いを樹木医が解説します。
ハンガリーのファコップ社の樹木診断機器をひとつずつ取り上げる連載の第6回です。第2回で取り上げたアーボソニック3Dは、幹の断面に音を通して、中の傷みを画像にする機器です。ただ、断面の画像は「その木が強い風に耐えられるか」までは直接には答えてくれません。根の支えは断面に映らないからです。今回は、その問いに数字で答えようとする静的負荷試験(引張り試験)を、メーカーの取扱説明書と研究論文をもとに紹介します。同じ考え方の機器は、IML連載の第7回でも取り上げました。
先に答え
- ファコップの引張り試験(Pulling Test)は、調べる木の樹冠の近くに掛けたケーブルをウインチで静かに引き、引く力、根元の傾き、幹の表面の伸び縮みを同時に記録します。
- 引くのは、根元の傾きが0.2°に届くまでです。取扱説明書は、根を傷めないよう0.25°より小さく保つとしています。目では分からないほどの傾きです。
- その小さな反応を、根返りの曲線の式と、樹種ごとの「弾性の限界」に当てはめて、根返りと幹折れに必要な力を見積もります。想定する強風の力と比べた値が安全率で、1.5を超えれば安全、1未満は危険が高い、と取扱説明書は読み方を示しています。
- ファコップの曲線の式と同じ形の式(係数が少し違う版)は、280本を超える木を根返りまで引いた研究で検証されています。見積もりは平均で実際より低め(安全側)に出ましたが、当てはめがうまくいかない木もありました。
- ロープで引く「静的」な試験に対して、自然の風で揺れる木を測る「動的」な方法もあります。ファコップでは、この連載の第7回・第8回で扱うダイナツリー、ダイナルートがそれにあたります。

引張り試験の全体。調べる木の樹冠の近くにスリングでケーブルを掛け、ロードセルを通して、別の木の根元に固定したウインチで引く。根元に傾斜計、幹にエラストメーター(イラストは当社作成)
静的負荷試験(引張り試験)とは──風の代わりにケーブルで引く
ファコップの取扱説明書は、引張り試験を次のように説明しています。幹にケーブルで曲げの荷重をかけ、根元の傾きを測ると、木を根返りさせる力を見積もれます。あわせて幹にエラストメーターを付けて曲げによる変形を測ると、幹折れも見積もれます。メーカーはこの方法を、根の安全と安定を評価する方法として「最も受け入れられている」と紹介しています。これはメーカーの言い方ですが、根の支えを数字で示せる方法は多くありません。
取扱説明書の最初のページには、警告もあります。ソフトは危険を大きめに見積もるように作ってあるものの、安全率の計算には単純化が含まれ、入れるデータも乱れることがある。この機器は樹木を評価する道具の一つで、それだけを根拠にはできない、という趣旨です。この試験を紹介するうえで、私もこの前提を大切にしたいと思います。
構成と仕様
取扱説明書(2026年3月25日版)によると、一式は次の部品でできています。
| 部品 | 役割 | 主な仕様 |
|---|---|---|
| フォースメーター(ロードセル) | ケーブルにかかる力を測る | Kaliber 5t は使用荷重の上限50kN・分解能1kgf・表示器つき、LineScale 3t は上限30kN |
| 傾斜計(2台) | 根元の傾きを2方向で測る | 分解能0.001°、温度補償、ねじ留めの取付板 |
| エラストメーター(2台) | 幹の表面の伸び縮みを測る | 範囲±2mm、分解能は取扱説明書で0.1µm、製品ページで0.3µm、測る長さ約25cm |
| セントラルユニット | 各部品に電気を送り、パソコンへデータを送る | 傾斜計2台、フォースメーター(Kaliber 5t)、エラストメーターをつなぐ |
| 解析ソフト | 記録、曲線の当てはめ、風荷重と安全率の計算 | Windows 10 以上のパソコンで動く |
出典: Fakopp「Pulling Test Manual」p.2〜5・p.36〜37、製品ページ(2026年10月に確認)
見落としやすいのは、引く道具が標準の一式には含まれないことです。取扱説明書は、ウインチ、ケーブル、木に回す輪のスリング2本、はしご、パソコンを使う人が用意するものとして挙げています(製品ページでは、引く装置は別売のオプションとして載っています)。フォースメーターは5トンまで測れますが、ウインチはふつう1.6トンか3.2トンの能力なので、警告の値は一式でいちばん弱い部品に合わせる、と書かれています。

フォースメーター(ロードセル)は、ウインチとアンカー側のスリングのあいだに入れ、ケーブルの力を測る(イラストは当社作成)
試験の流れ
取扱説明書から、試験のおおまかな流れをまとめます。
- 外観を見て、試験してよいかを決める: 取扱説明書は、外観の点検を評価の最初の段階とし、幹が割れている、折れるおそれがある、引くと叉が開きそう、風や雨の天気、のときは試験を避けるよう求めています。
- ケーブルを掛ける: できるだけ樹冠の中心に近い幹か、強い主枝に、樹皮を傷めない輪のスリングで掛けます。樹冠の中心が持たないときは樹高の中ほどに掛けます。はしごか木登りで掛ける作業です。
- アンカーを決める: ケーブルの反対側はウインチを通してアンカーに固定します。多くは別の木の根元です。アンカーまでの距離は、ロープの高さの2倍以上、長いほどよいとされます。
- 計器を付ける: 根元のできるだけ低い所に傾斜計を、幹にエラストメーターを付け、セントラルユニットにつなぎます。
- 警告の値を決めて、ゼロ合わせ: 傾きの警告は0.2°。幹の変形の警告は樹種を選ぶとソフトが決めます。
- ゆっくり一定に引き、緩める: 傾き0.2°、ウインチの能力、フォースメーターの能力のいずれかに届いたら、引くのをやめて緩めます。

取扱説明書が引張り試験を避けるよう求める場合(幹の割れ、引くと開きうる叉、風や雨の天気)と、結果を誤りうる根元の大きな腐朽。外観の点検が最初の段階になる(イラストは当社作成)

アンカーまでの距離をロープの高さの2倍にすると、ロープの角度は約27°、力の水平の成分は約89%。距離を延ばすほど水平の成分は大きくなる(当社作成)
ケーブルは斜めに張られるので、ソフトは測った力から水平の成分を計算して評価に使います。アンカーを遠くに取るほどケーブルが寝て、同じ力でも木を横に押す成分が大きくなります。
試験の前に決めること──引く向き、ロープの高さ、アンカー
手順の細かな操作は講習と取扱説明書に譲り、ここでは結果の読み方にかかわる考え方だけをまとめます。
引く向き: 取扱説明書は、木にとっていちばん弱そうに見える向きから引くよう求めています。幹が2本に分かれた木では、引いて叉を開かないよう、叉に直角の向きに引くとしています。根の支えは向きによって違うことがあります。英国で木を直交する2つの向きで引いた研究では、10本の平均で、主な風の向き(北)に引いたときの根返りの力の見積もりが23%大きく出ました(Andreozzi et al. 2025)。Buza & Divós 2016 も、木の全体を評価するには直交する2方向で引くのが望ましいものの、場所によってはできないと書いています。どの向きで引いた結果なのかは、安全率と一緒に記録しておきたい条件です。
ロープの高さ: 取扱説明書は、できるだけ樹冠の中心に近い幹か強い主枝に掛け、そこが持たないときは樹高の中ほどに掛けるとしています。ロープの高さは計算の中に入ります。根が耐えるモーメントは、式で伸ばした水平の力にロープの高さを掛けて求め、風のモーメントは、風の力に樹冠の中心の高さを掛けて求めるからです。エラストメーターを付けてよい高さの上限(ロープの高さの半分)も、ロープの高さで決まります。

引いた力はロープの高さ h を掛けて根元のモーメントに、風の力は樹冠の中心の高さ hcr を掛けて根元のモーメントに直し、その比が安全率になる。エラストメーターはロープの高さの半分までに付ける(当社作成。木の絵は当社作成のイラスト)
ケーブルとアンカー: 取扱説明書は、荷重に見合う能力のケーブルを使い、木に回すのは樹皮を傷めない輪のスリングにするよう書いています。アンカーは地面に確実に固定された物であればよく、多くは別の木の根元で、その木の樹皮もスリングで守ります。アンカーが調べる木より高い所にあるときは、その高さの差もソフトに入れます。警告の値は、たとえば1.6トンのウインチなら1,500kgのように、一式でいちばん弱い部品の能力より下に決めます。アンカーにする木も、引く力を受け止める側の木です。その木が力に耐えられる状態かどうかも外観で確かめておくのがよい、と私は考えます。
傾斜計とエラストメーターの付け方
傾斜計の取付板は、ねじで根元のできるだけ地面に近い所に留め、腐朽した所は避けます。高い所に付けると、根元の傾きに幹そのものの曲がりが混じるためです(Buza & Divós 2016)。取扱説明書は、根元の状態が悪いときは2台を90°ずらして付け、根元が楕円なら長い径と短い径の向きに置くよう求めています。2台の安全率が50%を超えて違ったら、その測定は信用しない、とも書かれています。

傾斜計は根元のできるだけ低い所に、2台を90°ずらして付ける。腐朽した所は避ける(イラストは当社作成)
エラストメーターは、引く向きの線上、つまりケーブルの側か、その反対側に付けます。曲げられた幹は、ケーブルに近い側が縮み、反対側が伸びます。2台とも同じ側に付けても、1台ずつ分けて付けてもかまいません。高さは、見た目で弱そうな所を選び、多くてもロープの高さの半分までです。

エラストメーターは引く向きの線上に付ける。ケーブル側は縮み、反対側は伸びる。高さはロープの高さの半分まで(イラストは当社作成)
安全の決まり
大きな力をかける試験なので、取扱説明書は10か条の安全の決まりを挙げています。最大で3.2トンほどの荷重がかかり、ケーブルが切れると重いけがにつながるおそれがあるためです。主なものを抜き出します。
- 講習を受けた人だけが行い、試験の責任は班長が負う
- ウインチ、ケーブル、スリングに傷や金属のかえりが無いかを事前に確かめる
- 作業の範囲を閉じ、ケーブルの下をくぐったり、またいだりさせない
- ウインチを操作する人のほかは、ケーブルから2m以上離れる。1kN を超えたら、ウインチの係は長いレバーを使い、ケーブルからできるだけ離れる
- 傾きが0.2°に届くか、幹の変形の警告が鳴ったら止める
- 雨の日と、凍える気温の日は試験をしない
突風が25km/hを超えるときも試験はしません。風に揺られると測った点が曲線に乗らず、結果を信用できなくなるからです。

作業の範囲をコーンで閉じ、ケーブルの両側(破線の帯)には人を入れない。ウインチの係のほかはケーブルから2m以上離れ、ウインチの係も長いレバーでケーブルから離れて立つ(イラストは当社作成)
引くあいだに起きていること
試験の前に、各計器をゼロに合わせます。そのうえでウインチでゆっくり一定に引き、引く力、根元の傾き、幹の伸び縮みを同時に記録します。傾きが警告の0.2°に届くか、ウインチやフォースメーターの能力に近づいたら緩め、緩め終わってから記録を止めます。取扱説明書は、こうした警告の値を守れば、多くの場合は木に元に戻らない傷みを残すおそれはないとしつつ、すでに大きく傷んでいる木では特に注意するよう書いています。

引くあいだの力と根元の傾き。力をゆっくり一定に上げ、傾きが0.2°に届いたら緩める。緩めると傾きはほぼ元に戻る(模式図。当社作成)
この小さな傾きが元に戻ることは、研究でも確かめられています。Detter & Rust 2013 は、0.25°までの傾きは完全に元に戻り、緩めた直後に100分の数度ほどの傾きが残っても数分で戻ると報告しています。0.5°を超えなければ元に戻るとする研究は複数あります(Detter et al. 2023 が紹介)。一方で、傾き方がはっきり変わり始めるのは0.8〜1°ほどからで、根返りの力が最大になるのは多くが約2〜5°とされます(Detter & Rust 2013)。0.2°で止めるという取扱説明書の目安は、その手前に余裕を取った値だと私は読んでいます。
考え方──小さな反応から、壊れる力を見積もる
根返り──根返りの曲線に当てはめる
ファコップのソフトは、測った力と傾きのデータに「一般化された根返りの式」を当てはめ、木を根返りさせる水平の力を見積もります。ここで大切なのは、この力は試験で実際にかけた力ではなく、式から伸ばして求めた値だという点です。その力にロープの高さを掛けたものが、根が耐えられる最大のモーメントになります。

取扱説明書の根返りの式から描いた曲線。横軸は根返りの力に対する割合、縦軸は根元の傾き。試験は0.2°ほどで止め、曲線の残りは式で伸ばす(取扱説明書の式から当社が計算して描いた図)
取扱説明書の式から計算すると、傾き0.2°のときにかかっている力は、根返りの力の約4割です。ここまでの小さな傾きの反応から、残りの6割を曲線の形で見積もることになります。
この形の式は、ハンガリーの研究者 Buza 氏と Divós 氏の論文(Buza & Divós 2016)で示され、のちに Divós 氏が係数を直しました。同じ形の曲線を、ドイツの Wessolly 氏と Erb 氏の本(1998年)のものとして引く研究もあります(Andreozzi et al. 2025)。
この式は、ドイツとラトビアの研究者らが検証しています。ドイツ、オーストリア、米国、ラトビアで280本を超える木を、まず0.25°まで壊さずに引き、続けて根返りまで引いた研究です(Detter et al. 2023)。重さの分からない樹冠や風の影響を除くため、木は樹冠を切り落としてから引かれました。機器は別のメーカーのもので、測ったデータに、取扱説明書の式と同じ形の Divós 氏の式を当てはめて確かめています。2016年の論文の式は根返りの力を系統的に大きく見積もったため、Divós 氏が2019年に直した式を使ったところ、当てはまりはよく、論文は、評価の方法がいずれも平均で約3分の1低めに出たとまとめています。小さな木では最大で半分ほど低めに出ました。外れ方は安全側です。ただし、280本余りのうち6本は当てはめが失敗するか、現実にありえない大きな値が出ました。論文は、実務でも2%を超える試験で別の方法に替える必要が出る計算だとしています。
なお、式には少しずつ違う版があります。取扱説明書の式と、論文に載った直した式、Wessolly 氏らの曲線として引かれた式では、2乗の項と最後の項の係数が違います。当社でそれぞれ計算してみると、傾き0.2°のときにかかっている力は、根返りの力の35〜38%で、「約4割」という読み方はどの版でもおおむね変わりませんでした。
この論文は、0.25°まで引けない場合も試しています。止めた傾きが小さいほど見積もりは低く出ました。安全側ですが、必要のない伐採につながるおそれもある、と論文は書いています。著者の1人は、樹木診断の機器とソフトを扱う別の会社の経営者で、論文にもそのことが明記されています。
根返りの評価には、もう一つ前提があります。取扱説明書は、傾斜計を付けた根元が根と一緒に動くときだけ、根の安全について役に立つ結果になるとしています。根元に大きな腐朽があると、根と根元のつながりが弱まり、安全率を誤ることがあります。
同じ論文は、根返りの起こり方についても記録しています。根返りのごく初めに、引く側の根元のすぐそばにはっきりした線ができ、土はあまり沈まずに、蝶番(ヒンジ)のように折れ曲がりました。これは調べたすべての樹種と土で見られたそうです。著者らは、風上側の根だけでなく、風下側の根元近くの根の健全さにも目を向けるよう提案しています。外観診断で根元の周りを見るときにも、覚えておきたい観察です。
幹折れ──伸び縮みを弾性の限界まで伸ばす
幹の変形は、ある点までは力に比例して直線で増え、力を抜けば元に戻ります。この範囲なら幹は傷みません。その境目の変形の割合を、取扱説明書は「弾性の限界」と呼び、樹種ごとの定数として付録の表に載せています。ふつう、試験で生じる変形はこの限界よりずっと小さいので、ソフトは測った点に直線を当てはめ、弾性の限界まで伸ばして、幹が耐える力を見積もります。

試験で測るのは直線の初めの部分だけ。その直線を樹種ごとの弾性の限界まで伸ばして、幹が耐える力を見積もる(模式図。当社作成)
付録の表は、ドイツの Wessolly 氏と Erb 氏の本(1998年)の「シュトゥットガルトの材の強さの表」です。日本の都市でも見る樹種の値を抜き出すと、次のとおりです。抗力係数は、風を受けたときの受け方の係数で、風荷重の計算に使います。
| 樹種 | 弾性の限界(%) | 抗力係数 |
|---|---|---|
| プラタナス(Platanus × hybrid) | 0.43 | 0.25 |
| ヨーロッパナラ(Quercus robur) | 0.41 | 0.25 |
| ユリノキ(Liriodendron tulipifera) | 0.34 | 0.25 |
| エンジュ(Sophora japonica) | 0.31 | 0.15 |
| ニセアカシア(Robinia pseudoacacia) | 0.28 | 0.15 |
| セイヨウトチノキ(Aesculus hippocastanum) | 0.26 | 0.35 |
| ヒマラヤスギ(Cedrus deodara) | 0.20 | 0.20 |
出典: Fakopp「Pulling Test Manual」付録B(p.38。原典は Wessolly & Erb 1998)。ソフトには%の値を10倍した‰で入れる(p.19)
表には、ケヤキやサクラ、クスノキのような日本の街の主な樹種は載っていません。欧州の樹種と材の値をもとにした表だという点は、日本で結果を読むときに覚えておきたいところです。
風荷重と安全率
強風の力は、木の写真に樹冠と幹の輪郭を描いて風を受ける面積を求め、空気の密度、風速の2乗、抗力係数、樹冠の中心の高さを掛け合わせて見積もります。ソフトには、欧州の風荷重の規格(EN1991)にもとづく計算の画面があり、基本の風速と地表面の区分(海辺から高い建物の多い都市まで5段階)を入れます。安全率は、根返りなら根が耐えるモーメント、幹折れなら幹が耐えるモーメントを、風のモーメントで割った値です。
| 安全率 | 取扱説明書の読み方 |
|---|---|
| 1.5を超える | 安全と考えられる |
| 1〜1.5 | 中程度の危険 |
| 1未満 | 危険が高い |
出典: Fakopp「Pulling Test Manual」p.10・p.13・p.22〜23。同じ木で複数の安全率が出たときは、最も小さい値を使う
取扱説明書は、読み方の注意も添えています。安全率は入れた風速に対する値で、その風速で安全とされた木も、より強い風では安全でないことがあります。また、引張り試験は周りの環境を考えないので、風の通り道に立つ木は安全率が高くても危ないことがある、とも書かれています。
1.5という余裕が、構造物の設計に比べて小さめで足りるとされる理由について、Detter & Rust 2013 は、木が毎年太って耐える力の余裕を保ったり増やしたりできるからだと説明しています。そのうえで、計算した安全率は、外観や生き物としての状態の評価と結びつけて読むものだとしています。
EN1991 の計算の画面では、風を受ける面を高さごとに分けて風のモーメントを足し合わせます。樹種の材の密度、写真から求める傾き、胸高直径も入れ、木の体積と自重によるモーメントも見積もります(取扱説明書 p.27・p.31)。

風荷重は風速の2乗で増えるので、計算する風速を変えると安全率も変わる。風速30m/sで安全率1.5の木は、33m/sで約1.24、約36.7m/sで1になる(計算の例。当社作成)
日本で使うときは、どの風速で計算するかを使う人が決めることになります。取扱説明書の基本の風速は欧州の各国が定める値なので、日本の地域ごとの基準の風速(建築基準法にもとづく告示の値)などを参考に、決めた理由を記録に残すのがよいと私は考えます。
参考までに、Detter & Rust 2013 は、引張り試験の評価では高さ10mで最大の突風が時速120kmにわずかに届かない程度の嵐を想定することが多いと書いています。後で紹介するメーカーの事例の33m/s(時速約119km)も同じ水準で、気象庁の風力階級でいちばん上の12(32.7m/s以上)にあたる強さです。
測定値の読み方
ソフトは、測った点に根返りの曲線(傾きのデータ)と直線(伸び縮みのデータ)を自動で当てはめ、統計の値と安全率を出します。取扱説明書は、当てはめにはデータのフィルターが要るとしていて、画面の例には、力の始まりをゼロにそろえる、力と傾きが増え続ける点だけを使う、といった選択肢が並んでいます。測定のファイルは Excel でも開けます。

点が曲線によく乗っていれば安全率を読む。風に揺られて点がばらつき、曲線に乗らないときは結果を信用せず、風の弱い日にやり直す(模式図。当社作成)
読むときに確かめたいのは、次の4つです。
- 点が曲線や直線に乗っているか: 取扱説明書によれば、点はふつう曲線や直線によく乗ります。乗らないときは結果と安全率を信用せず、風の弱い日にやり直すよう求めています。強い風が原因になりやすいそうです
- 2台の傾斜計がそろっているか: 2台の安全率が50%を超えて違うときは、その測定を信用しないとされています
- どの安全率を見ているか: 安全率は、根返りに1つ、エラストメーターごとに1つずつ出ます。エラストメーターの安全率は、それを付けた部分の幹の安全を示します。複数あるときは、いちばん小さい値を使います
- どんな条件で測ったか: 引いた向き、計算に入れた風速、樹種の値、試験の日の天気と土の状態です。後で述べるように、凍った土や季節で結果が変わることが研究で分かっています
解析の流れと、計算の例
ここまでの流れを1枚にまとめると、次の図のようになります。外観の点検で試験してよい木かを決め、計器を付けて引き、根返りと幹折れのそれぞれで耐えるモーメントを求め、風のモーメントで割って安全率を出します。最後の判断は、ほかの診断と合わせて樹木医が行います。

測ってから安全率を出すまでの流れ。根返りは曲線、幹折れは直線を当てはめて耐えるモーメントを求め、風のモーメントで割る。最後は外観診断などと合わせて判断する(当社作成)
取扱説明書には、解析の画面の例が載っています。その数値を式でたどってみます。ロープの高さは3.6m、アンカーまでの距離は25mで、ロープの角度は約8.2°です。式で伸ばした根返りの力は約85.6kNと表示され、これに角度の分の水平の成分(cos 8.2°)とロープの高さを掛けると約305kNmになり、画面の根が耐えるモーメントと一致します。風のほうは、樹冠の面積100m²、風速36m/s、抗力係数0.25、樹冠の中心の高さ11.4mで、空気の密度を1.2kg/m³として計算すると約222kNmになり、これも画面の値と一致しました。安全率は305÷222で約1.38、読み方の区分では「中程度の危険」にあたります。

取扱説明書の画面の例の数値を、取扱説明書の式でたどった計算。安全率は約1.38で「中程度の危険」の区分にあたる(当社作成。当社の診断結果ではない)
空気の密度は取扱説明書に書かれていないので、1.2kg/m³は当社が置いた値です。ここで見ておきたいのは、安全率がいくつもの入力の掛け算と割り算でできていることです。風速は2乗で効き、樹冠の面積や抗力係数、樹冠の中心の高さも、そのまま比例して効きます。測った力や傾きと同じくらい、何を入れたかを記録に残す意味がある、と私は考えます。
メーカーの事例──根を切ると、安全率はどう下がるか
ファコップは、この機器で行った事例を公開しています。郊外の庭にあり、撤去が決まっていた木を使い、主な根を失うと安定がどう下がるかを6回の試験で確かめたものです。安全率は風速33m/s(約120km/h)で計算されています。

根元を掘り、根を切り進めるにつれて下がった安全率(Fakopp が公開している事例の数値から当社が描いた図)
手を付けていない状態の安全率は1.19でした。根元の土を掘っただけで0.86に下がり、根を1本切ると0.61、11本すべてを切ると0.14まで下がりました。根を1本も切らないうちに、掘っただけで安全率が下がった点が目を引きます。工事で根元を掘る計画のある木を考えるとき、私はこの数字を思い出したいと思います。ただし、これは1本の木の事例で、樹種や土の条件も詳しくは書かれていません。
静的な試験と、動的な試験
ロープで引く試験は、静かな荷重をかける「静的」な試験です。実際の風は突風を繰り返す「動的」な荷重なので、ここに限界があることは、Buza 氏と Divós 氏の論文(Buza & Divós 2016)も指摘しています。ファコップには、自然の風の中で根元の傾きと風速を何時間も記録し、統計の値から安全率を出す機器もあります。ダイナルートとダイナツリーです。取扱説明書の比べの表をまとめると、次のとおりです。
| 項目 | 静的(引張り試験) | 動的(ダイナツリー) |
|---|---|---|
| 荷重 | ケーブルで引く静かな力 | 自然の風 |
| 主な機材 | ケーブル、スリング、ウインチ、ロードセル、はしご、傾斜計(約50kg) | 風速計、傾斜計、エラストメーター(約20kg) |
| 時間 | 1本に1〜3時間 | 3時間以上で、数本を同時に |
| 安全率の計算に要るもの | 樹冠の面積、抗力係数、計算する風速 | 計算する風速だけ |
| 天気 | 風速25km/h未満 | 風速25km/hを超える風が要る |
出典: Fakopp「Manual for the DynaRoot and DynaTree evaluation system」(2026年6月11日版)p.11 の表1をもとに当社がまとめた

静的な試験はケーブルで静かに引き、風の無い日に測る。動的な試験は自然の風で揺れる木を、風速計と一緒に何時間も記録する(イラストは当社作成)
メーカーは、動的な方法の方が実際の危険の評価に向き、手間も少ないと書いています。一方で、強い風が吹かないと測れず、急いで結果がほしいときには向きません。風の無い日に測れること、研究の積み重ねが多いことは、静的な引張り試験の側の利点です。静的な荷重の限界については、反対の見方もあります。280本超の研究の著者らは、木を倒す突風は実際には準静的(ゆっくりかかる荷重に近い)とする研究を引き、疲労のような動的な影響はまれな土の条件に限られるとして、静的な試験でも根の欠陥は見分けられると書いています(Detter et al. 2023)。どちらの見方にも根拠があり、私は、2つの方法を「どちらが正しいか」ではなく、測れる条件と得られる結果の違いとして読むのがよいと考えています。動的な方法は、この連載の第7回(ダイナツリー)と第8回(ダイナルート)で詳しく取り上げます。
研究から見る、確かさと限界
静的負荷試験(引張り試験)全体について、IML連載の第7回で紹介した研究のうち、ファコップの機器にもかかわるものを挙げます。
- 根返りの力が最大になる傾きは、試験の範囲よりずっと大きい: 英国で15本を根返りまで引いた研究では、根返りの力が最大になったのは傾き1.59〜2.93°でした。著者らは、これを調査したときの土の条件での結果と断っています(Andreozzi et al. 2025)。この研究の力の計はファコップの一式と同じ Kaliber 5t、傾き計はダイナツリーの2軸の傾斜計です。280本超の研究では、根返りの力に届いたときの傾きは平均で2.5°を超え、小さな木ほど大きな傾きで倒れました(Detter et al. 2023)。どちらも、試験で止める0.2°のおよそ8倍以上です。
- 0.25°の力と根返りの力は強く結びつく: 根に傷みのある約20本で、0.25°まで傾けるのに要ったモーメントと、根返りの最大のモーメントのあいだに強い相関(決定係数0.92)がありました。ただし、伸ばすときの倍率は樹種で違い、セイヨウカジカエデでは約4.5倍でした(Detter & Rust 2013)。
- 凍った土は結果を高く出す: フユボダイジュ9本を1年に5回測った研究で、強い霜で土が深く凍った日の測定は、根返りへの安全率を平均で2倍(極端な場合はほぼ2.4倍)、幹折れへの安全率も約30%高く出しました(Detter & Rust 2013)。ファコップの取扱説明書が、凍える気温の日の試験を禁じていることとも重なります。
- 季節と土の水分: 同じ研究で、季節による違いは根返りで最大30%、平均では5〜10%でした。街路の7本では、土の水分が40〜50%増えても、根返りへの安全率の低下は最大15%でした(Detter & Rust 2013)。英国の研究は、土の性質が少なくとも樹種と同じくらい結果を左右するとしています(Andreozzi et al. 2025)。
- 断面の画像とは補い合う: 幹の伸び縮みから見積もる幹の強さの低下と、音波で描く断面の画像から見積もる強さの低下を59本で比べると、互いの代わりにはならないが、補い合えるとする研究があります(Rust & Detter 2024)。著者らは、断面の画像で引く向きを決め、引張り試験で断面からの見積もりを確かめる、という組み合わせ方を挙げています。
日本での導入と報告
日本でも、木を引いて根の支えを調べる試みは積み重なっています。ただし、壊さずに少しだけ引くファコップのような静的負荷試験(引張り試験)と、木が倒れるまで引く「引き倒し試験」は、目的も得られる値も違います。公開されている資料を、その2つを分けて紹介します。
倒れるまで引く「引き倒し試験」
- 林業や防災の分野: 日本の林学では、1960年代から立木を引き倒す試験が報告されています(玉手ほか 1965、日本林学会誌)。
- 街路樹: 北海道大学の研究グループは、2006年に札幌駅前通りの整備で撤去されるニセアカシアの街路樹3本を引き倒し、根返りに耐える力を調べました(小泉ほか 2007)。同じグループは、北海道大学の構内のニセアカシア37本を引いて(32本が根返り)、ベッコウタケによる腐朽のある木の根返りへの耐力が、健全な木から求めた式による推定値の69%だったと報告しています(大塚ほか 2022)。
- 移植した高木と支柱: 千葉県の農場のクスノキ・ヤマザクラ・シラカシ32本を倒すまで引いた研究では、移植して支柱を付けた木の倒れにくさが、移植していない木の最大で5分の1ほどまで下がりました(橘・直木・今井 2018)。支柱の形式による違いを7本で比べた報告もあります(橘・直木・今井 2020)。
- 国内のデータのまとめ: 国内の引き倒し試験16件をまとめると、根返りに耐えるモーメントは胸高直径のおよそ1.4〜3.2乗に比例し、札幌の街路樹のデータは低い側にありました(小泉 2022、日本緑化工学会誌)。
- 国の手引き: 国土交通省 国土技術政策総合研究所の「街路樹の倒伏対策の手引き」第2版(2019年)は、引き倒し試験で測られたケヤキの根返り抵抗モーメントの平均値(150kNm)を使い、樹高15mのケヤキが風速40m/sを超えると倒れるおそれがあると試算しました。そのうえで、街路樹は植栽の基盤が特殊なので、自然の状態の木の結果を当てはめるには慎重な検討が要り、街路樹での引き倒し試験の結果を積み重ねて精度を上げる必要がある、としています。
壊さずに引く試験と、新しい取り組み
- 都道のエンジュでの報告: 東京都道のエンジュ4本(伐採予定の3本と健全な1本)を、IML 社のツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)で引いた報告では(伐採予定の3本は根の支える力が最大になるまで引き、健全な1本は傾き0.25°で止めた)、欧州で作られた解析ソフトで評価すると、健全な木まで安全率1未満になりました。著者らは、解析ソフトの考え方と計算を確かめる研究が先に要ると結論しています(石井・吉岡 2023)。同じ著者らの2025年の論文は、日本でも引張り試験の専用の機材が海外から入り始めていると書いています。
- 高速道路の現場での試み: 国土交通省の資料によると、高速道路の会社のグループ会社が、木の地上約2mを約20〜300kgの力で引き、幹の動きを撮影して耐えられる風速を見積もる技術を、2024年11月から高知自動車道の南国サービスエリアで試験的に使っています。2025年2月には、関東地方整備局の現場の要望とこの技術の組み合わせが成立したと発表されました。2026年10月には近畿地方整備局も、国営明石海峡公園事務所の「樹木の健全性を簡便に把握可能な技術」という要望と、同じ会社の、木を引いて耐風速を見積もる技術の組み合わせが成立し、今後、現場で試すと発表しました。根元の傾きと幹の伸び縮みを測るファコップの方法とは、測るものと計算の考え方が違います。
- 学会のワークショップ: 2026年5月16日の樹木医学会の第16回ワークショップ「風による倒木と樹木の引張り試験」では、ファコップの機器を含む3つの機器の解説と実地研修が行われました。学会のこれまでのワークショップの一覧を見ると、引張り試験を題目にしたのはこの回だけです。

日本で公開されている、木を引いて根の支えを調べた研究・行政資料・学会の年表。倒れるまで引く試験(引き倒し試験)と、壊さずに引く試験を分けて示す(各出典をもとに当社作成)
一方で、東京都の「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)が挙げる機器診断は、幹の腐朽や空洞を調べる機器が中心で、引張り試験は載っていません。国総研の手引きも、2012年の第1版には引き倒し試験の記述がなく、第2版で試算に使われるようになりました。行政の標準仕様やマニュアルに、壊さずに引く試験を診断の方法として定めた例は、今回調べた範囲では見つかっていません。国土交通省道路局の「街路樹点検の実施促進のためのガイドライン」(2026年3月)は、開発中のものを含む新しい技術の例の一つに「樹木を引張して安定性を把握する技術」を挙げ、特に保全したい木の対策を考えるときの判断材料などの使い方とともに、引くための作業スペースが要ること、道路管理者だけでは測定結果の判断が難しいことを添えています。日本の樹種と街路の条件でのデータが増えていくことを期待しています。
日本の風速の基準は、建築基準法施行令にもとづく平成12年建設省告示第1454号が、市町村ごとに30〜46m/sの範囲で定めています。樹木の風害の評価に、この基準風速を参考にできるとする報告もあります(鈴木 2020、樹木医学研究)。ただし、建築の基準風速は平均の風速で、突風の瞬間の風速はそれより大きくなる点に注意が要ります。
当社の考え方
当社は、ファコップのアーボソニック3Dで幹の断面を、外観診断で根元や根張りを診ています。断面の画像は「幹の中がどれだけ残っているか」に答えますが、「根がどれだけ支えているか」には答えられません。静的負荷試験(引張り試験)は、その問いに数字で迫る、ほかにあまり例のない方法です。
一方で、取扱説明書が自ら書いているとおり、計算には単純化があり、結果は入れた風速や樹種の値、根元の状態、天気に左右されます。曲線の式の当てはめがうまくいかない木があることも、研究で分かっています。当社では、引張り試験の結果を見る場面があれば、安全率の数字だけで残すか伐るかを決めず、外観診断や断面の画像、その木の立つ場所と合わせて読むことを大切にしたいと考えています。メーカーの事例で、根元を掘っただけで安全率が下がったように、根の周りの工事の計画も、木の安全を左右する条件の一つです。
樹木医の目で見ると、この試験が力を発揮しそうなのは、根元や根張りに傷みの兆候があるのに外観だけでは根の支えを決めきれない大きな木や、根の周りの工事の前後で支えの変化を確かめたい木だと私は考えます。逆に、幹が割れている木や、引くと叉が開きそうな木は、取扱説明書のとおり試験の対象から外れます。根元に大きな腐朽がある木では、傾斜計の値が根の支えを表さないことがあるので、断面の画像などほかの診断と合わせて読む必要があると考えます。研究で示されたとおり、断面の画像で引く向きを決め、引張り試験で断面からの見積もりを確かめる、という組み合わせ方は、当社がアーボソニック3Dで診ている木にも当てはまる考え方です。
株式会社トシ・ランドスケープのツリーリスクアセスメント(樹木診断)部門では、樹木医が外観診断から機器診断、報告書の作成、その後の管理計画までを一貫して担当しています。倒木や根の傷みが心配な樹木がありましたら、樹木診断のサービスページをご覧のうえ、お問い合わせフォームからのご相談をお待ちしています。
次回は、自然の風の中で根元の傾きと幹の伸び縮みを記録する、ダイナツリー(DynaTree)を取り上げます。風を測る風速計と、その置き方もこの回で扱います。
株式会社トシ・ランドスケープ
樹木医 中村雅俊
よくあるご質問(ファコップの引張り試験 Pulling Test について)
Q1. 静的負荷試験(引張り試験)では何を測りますか?
A. ケーブルにかかる力、根元の傾き、幹の表面の伸び縮みの3つを同時に測ります。その反応から根返りと幹折れに必要な力を見積もり、想定する強風の力と比べて安全率を出します。
Q2. 木を倒してしまいませんか?
A. 引くのは根元の傾きが0.2°に届くまでで、取扱説明書は根を傷めないよう0.25°より小さく保つとしています。ただし大きな力をかけるので、幹が割れている、叉が開きそうといった木は試験を避け、作業の範囲に人を入れないことが求められています。
Q3. 試験で引いた力が、そのまま木の強さになるのですか?
A. いいえ。根返りの力は、小さな傾きのデータに根返りの曲線の式を当てはめて伸ばした見積もりです。幹折れの力も、伸び縮みの直線を樹種ごとの弾性の限界まで伸ばして求めます。
Q4. 安全率はいくつあればよいのですか?
A. 取扱説明書は、1.5を超えれば安全、1〜1.5は中程度の危険、1未満は危険が高いとしています。ただし安全率は計算に入れた風速に対する値で、より強い風では下がります。最後は外観や樹勢の診断と合わせて樹木医が判断します。
Q5. 試験に向かない天気はありますか?
A. 取扱説明書は、雨の日、凍える気温の日、突風が25km/hを超える日は試験をしないとしています。強い霜で土が深く凍った日の測定は、根返りへの安全率を平均で2倍、幹折れへの安全率も約30%高く出したという研究があります。
Q6. 「静的」と「動的」の試験は何が違うのですか?
A. 静的な試験はケーブルで静かに引き、風の無い日に1本ずつ測ります。動的な試験は自然の風で揺れる木の傾きを風速と一緒に何時間も記録し、統計の値から安全率を出します。動的な方法は強い風が吹かないと測れません。
Q7. 日本の木にもそのまま使えますか?
A. 解析に使う樹種の値と風荷重の規格は欧州のもので、ケヤキやサクラなど日本の主な樹種の値は表にありません。計算する風速も使う人が決める必要があります。日本の街路樹で別のメーカーの機器を使った報告では、欧州で作られた解析ソフトが健全な木まで安全率1未満と評価しており、国の手引きも街路樹での試験結果の積み重ねが必要だとしています。日本での使い方には、まだ検討の余地が残っています。
出典・参考情報
メーカーの資料(いずれも2026年10月に確認)
・Fakopp「Pulling Test」製品ページ(英語) 構成、仕様、使い方の概要
・Fakopp Kft.「Pulling Test Manual」2026年3月25日版(PDF・英語。製品ページからダウンロード) 構成(p.2〜6)、試験の流れ(p.7)、根返りの評価(p.8〜11)、幹折れの評価(p.11〜13)、付け方(p.13〜17)、入力と警告(p.19〜21)、結果の読み方(p.22〜23)、安全(p.23〜25)、EN1991 の計算(p.26〜35)、仕様(p.36〜37)、付録B(p.38)
・Fakopp Kft.「Manual for the DynaRoot and DynaTree evaluation system」2026年6月11日版(PDF・英語) 引張り試験の説明(p.2)、静的と動的の比べ(p.11 表1)
・Fakopp「How safety factor drops if the roots are cut?」(Tibor Horvath 氏による事例。PDF・英語。製品ページからダウンロード)
研究・行政の資料
・Buza, Á.K. & Divós, F. (2016) Root stability evaluation with non-destructive techniques. Acta Silvatica et Lignaria Hungarica 12(2): 125–134
・Detter, A., Rust, S. & Krišāns, O. (2023) Experimental test of non-destructive methods to assess the anchorage of trees. Forests 14(3): 533
・Detter, A. & Rust, S. (2013) Aktuelle Untersuchungsergebnisse zu Zugversuchen. Jahrbuch der Baumpflege 2013: 87–100
・Andreozzi, M. et al. (2025) On the uprooting stability of trees: combined loading effect on tree stability assessment. Forests 16(12): 1780
・Rust, S. & Detter, A. (2024) Do sonic tomography and static load tests yield comparable values of load-bearing capacity? Forests 15(5): 768
・Wessolly, L. & Erb, M. (1998) Handbuch der Baumstatik und Baumkontrolle. Patzer Verlag(付録Bの表の原典。当社は未読)
・気象庁「風力階級表」(PDF)
日本の研究・行政の資料
・石井匡志・吉岡賢人 (2023) 街路樹の引き倒し試験による倒木可能性の評価基準の検討. ランドスケープ技術報告集 2: 34–38
・石井匡志・吉岡賢人・松本安旦 (2025) カシノナガキクイムシ被害木および着果時イチョウの生材曲げ強度の野外測定法の検討. ランドスケープ技術報告集 4: 58–61
・小泉章夫ほか (2007) ニセアカシア街路樹の耐風性. 北海道大学演習林研究報告 64(2): 105–112
・大塚広介ほか (2022) ニセアカシアへのベッコウタケ腐朽の経年変化とその根返り耐力への影響. 北海道大学演習林研究報告 72: 1–12
・橘大介・直木哲・今井一隆 (2018) 移植高木の引き倒し試験による耐風性の評価. 日本建築学会技術報告集 24(58): 1325–1330
・橘大介・直木哲・今井一隆 (2020) 樹木用支柱が高木の耐風性に及ぼす影響. 日本建築学会大会学術講演梗概集 2020(環境工学I): 2325–2326
・小泉章夫 (2022) 緑化樹の耐風性評価. 日本緑化工学会誌 47(3): 378–383
・玉手三棄寿ほか (1965) 立木引き倒し試験. 日本林学会誌 47(5): 210–213
・鈴木覚 (2020) 風害リスクをどう診断するか. 樹木医学研究 24(1): 34–37
・国土交通省 国土技術政策総合研究所「街路樹の倒伏対策の手引き」第2版(国総研資料第1059号、2019年2月) Ⅱ/1-16
・東京都建設局「街路樹診断等マニュアル」(令和3年度)
・国土交通省 令和7年度 民間提案型官民連携モデリング事業 シーズ提案書(PDF)
・国土交通省 関東地方整備局 記者発表(2025年2月25日)「令和6年度 現場ニーズと技術シーズのマッチング」(PDF)
・国土交通省 近畿地方整備局 記者発表(2026年10月6日)「建設現場の課題解決に向けた新技術のマッチングが6件成立」(PDF)
・国土交通省道路局「街路樹点検の実施促進のためのガイドライン」(2026年3月、PDF) p.18
・樹木医学会 第16回ワークショップ「風による倒木と樹木の引張り試験」(2026年5月16日)
・平成12年建設省告示第1454号(建築基準法施行令第87条の基準風速)
樹木診断機器(ピカス・レジ・アーボソニック3D)の記事
機器の解説・導入・研修
・マイクロセコンドタイマー(Microsecond Timer)の仕組みと使いどころ──幹の2点間を音が伝わる時間を測るファコップ社の機器と、ツリーソニックタイマー・ウルトラソニックタイマーを樹木医が解説
・ブルートゥースキャリパー(Fakopp Bluetooth Caliper)の役割と測り方──センサーどうしの距離で幹の形を登録する道具を、校正から太い幹の測り方まで樹木医が解説
・アーボエレクトロ(ArborElectro)の仕組みと測り方──電気の通りやすさで幹の断面を描き、腐朽の初期を探るインピーダンストモグラフを樹木医が解説
・アーボソニック3D(ArborSonic 3D)の仕組みと得られる結果──センサーの数、測れる太さ、断面画像と安全率の読み方を樹木医が解説
・ファコップ社とは──アーボソニック3Dをつくるハンガリー・ショプロンの樹木診断機器メーカーと、製品の全体像を樹木医が解説
・IML社の樹木診断機器の点検・校正とセミナー──連載のまとめとして、外観診断から総合判定までの流れで機器の使いどころを樹木医が解説
・IML社の樹木診断機器のソフトウェアとクラウド──IML Tree InspectionとPD-Tools Proで、測ったデータを診断の材料にする方法を樹木医が解説
・フラクトメーター(IML Fractometer)の仕組みと考え方──成長錐で抜いた木材の芯を折り、腐朽による強さの低下と壊れ方を読む方法を樹木医が解説
・マイクロハンマー(IML Micro Hammer)の仕組みと使いどころ──幹の2点間を音が伝わる時間で内部を推し量る予備調査の機器を樹木医が解説
・テンション(PiCUS Tension)の仕組みと使いどころ──土の水の取りにくさをpFで記録し、植栽直後の潅水を判断する方法を樹木医が解説
・ツリーモーション(PiCUS TreeMotion)の仕組みと使いどころ──自然の風で根元の傾きを測り、根の支えを読む方法を樹木医が解説
・ツリーキネティック(PiCUS TreeQinetic)の仕組みと考え方──ロープで木を引き、根返りと幹折れの安全率を見積もる静的負荷試験(引張り試験)を樹木医が解説
・キャリパー(PiCUS Calliper 3)の役割と測り方──幹の形を三角測量で測り、断面画像の精度を上げる方法を樹木医が解説
・トロニック(PiCUS TreeTronic 3)の構成と測り方──電気抵抗で断面を描き、音波の画像と重ねて読む方法を樹木医が解説
・ピカス(PiCUS Sonic Tomograph 3)の構成と測り方──測定点の数、キャリパーの扱いを樹木医が解説
・IML-RESI FシリーズとMD300──ワックス紙に曲線を刻むレジと、手で感じる機械式の穿孔器を樹木医が解説
・IML-RESI PowerDrill(PDシリーズ)の機種とオプション──レジ(Resi PD)7機種の違いと選び方を、樹木医が解説
・IML社とは──レジ(Resi PD)とピカスをつくるドイツの樹木診断機器メーカーを、樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の根株診断カルテの読み方 俯角40度・補正直径・未測定部分を、実際のカルテで樹木医が解説
・レジ(Resi PD)の診断カルテの読み方 実際のカルテで、9つの欄を樹木医が1つずつ解説
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(後編) 機器診断のt/R率と腐朽空洞率、総合判定、処置、フォローアップ診断
・樹木医は街路樹診断で何を見ているか(前編) 東京都の街路樹診断等マニュアルの流れで、樹木点検と外観診断の18項目を解説
・アーボソニック3Dの使い方を、道具から断面画像の色の見方まで──取扱説明書と現場の写真で樹木医が解説
・アーボソニック3Dとは何か 音で幹の断面を樹木診断する診断機器を、樹木医が一般の方向けに解説します
・レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か。樹木医がレジ(Resi PD)で幹の中を「針」で診る機器診断を、一般の方向けに解説します
・ピカス(PiCUS)とは何か。音波と電気抵抗で幹の断面を診る樹木診断機器を、樹木医が解説します
・樹木診断機器Resi PD500の「Overload feed motor」エラー 原因は針でも設定でもなく、テレスコープ内のサポーターの曲がりでした
・音で、樹木の中を視る 非破壊樹木診断機器「ドクターウッズ」
・樹木診断 無料モニター募集
・PiCUS(ピカス)導入のお知らせ 樹木診断(機器診断) 非破壊診断×微破壊診断で、樹木診断を世界水準へ
・樹木診断機器 IML社製 レジ(Resi PD)について
・樹木模擬診断研修会を終えて 人の眼 × 機械の眼が拓く、新しい都市樹木管理のかたち
・東京都「街路樹診断等マニュアル」の要点と、国土交通省の点検・診断の指針(案)──大型化・老木化する街路樹・公園樹木の管理を樹木医が解説
・樹木医がイギリスの樹木診断に学ぶ ― 都市の樹木を守るための対話と発見
機器診断の記録
・山梨県都留市・西涼寺様 樹木医による霊木ケヤキの樹木診断 ピカス・ツリートロニック・レジとドローンで診た結果と、残すための3つの対策
・埼玉県内の伝統校 樹木医によるクスノキ2本の機器診断 ピカスで幹の内部を診る
・樹木医が街路樹エンジュの樹木診断と伐採後の腐朽具合の答え合わせ
・山形県での出張樹木診断 樹木医によるピカス、レジでの診断検証
・診断した木を、その日のうちに伐る──ピカス・アーボソニック3D・レジを同一木のサクラで比べた「樹木診断機器比較研修会」千葉県習志野市
・都有施設80万本の樹木一斉点検 約14,000本(速報)の「異状あり」を、樹木医はどう読むか
・港区三田 薬王寺様の境内 樹木診断 地上と樹上、樹木医がふたつの視点で木の内側を読む
・砧公園で4回目の倒木 樹木医として思うこと
・【ツリーケア最前線】樹木医が語るレジ(Resi PD)診断とロープワークの統合 相模原市での樹木診断レポート
・樹木医による都内の学校施設でのサクラの樹木診断 豊島区
・学校施設 ケヤキなど樹木医診断 東京都
・公園樹木診断 樹木医による機器診断・根株診断(レジ) 東京都
・マンション内のイチョウ(銀杏) 樹木医診断(機器診断) 東京都大田区
・公園のサクラ(桜)を樹木医が樹木診断(機器診断)しました
・樹木医 保存樹木サクラ等 樹木診断 東京都杉並区
・学校施設内 桜(サクラ)樹木医診断 東京都
・銀杏岡八幡神社 台東区浅草橋 樹木医診断
・樹木医 サクラ樹木診断(機器診断・レジ)
・樹木医がマンション植栽の危険木調査を行いました
サービス
・樹木診断(ツリーリスクアセスメント部門)
・GREEN MANAGEMENT
※ 「レジストグラフ」は、穿孔抵抗測定器を指す通称として、日本の樹木診断の現場で広く使われています。ただし、RESISTOGRAPH® は Frank Rinn 氏(ドイツ)の登録商標(製品は RINNTECH 社)で、当社が使用している「レジ(Resi PD)」は IML 社(ドイツ)の製品です。両者は製造しているメーカーが異なります。呼び名の違いは「レジストグラフ・貫入抵抗測定器とは何か」で説明しています。
※ この記事の製品名(Pulling Test、DynaTree、DynaRoot、アーボソニック3D、PiCUS TreeQinetic)は、各社の商標または登録商標です。Pulling Test・DynaTree・DynaRoot・アーボソニック3D は Fakopp 社(ハンガリー)、PiCUS TreeQinetic は IML Electronic 社(ドイツ)の製品名です。






















